第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞した映画「淵に立つ」の会見が9月28日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で行われ、出演の筒井真理子、古舘寛治、メガホンをとった深田晃司監督が出席した。

 映画は、「歓待」「ほとりの朔子」などで世界的注目を集める深田監督がメガホンをとったオリジナル作品。郊外で小さな工場を営む夫婦(筒井&古舘)と一人娘の家庭に、夫と古い間柄の前科者(浅野忠信)がやって来たことで、家族の絆とは何かを問いかけていく痛切なホームドラマだ。

 得体の知れない男に翻ろうされる夫婦を演じた筒井と古舘。外国人記者から「演じるうえでチャレンジングだった点は?」と問われると、筒井は「台本を頂いたときに、自分の役はメンタルがとても変化するので、内面を変えただけでは表現しきれないと思った。監督と話し合い、肉体を変えることも提案した」と振り返る。これを受けた深田監督は、「筒井さんは前半と後半で雰囲気を変えるために、撮影の3週間で13キロ体重を増減してくれました」と明かし、「本当に感謝しています」と目を細めた。

 さらに筒井は、劇中の夫婦の微妙な距離感について「古舘さんとはともに劇団育ちという話しやすさもあり、撮影が始まる前にワークショップをしましたが、言いたいことを言い合える関係性ができました」とニッコリ。続けて「はたからは夫婦喧嘩に見えるような距離感が自然とできたので、そのままにして撮影に臨みました」と話した。これには古舘も、「間合いや距離感があの役そのままなので、ないものを作り上げる必要もなかった」と同調し、「キャスティングを決めた、深田監督の魔法のような才覚の賜物でしょう」と最敬礼だった。

 また深田監督は、ストーリーの着想を聞かれ「描きたかったことのひとつは、私たちの日常を唐突に、理由もなく破壊する暴力です」と説明。「事故や自然災害など、因果関係や罪と罰があるわけでもなく、唐突に日常を破壊してしまう。暴力そのものを一切描くことなく、暴力性を映したいと思っていました」といい、「今年、たまたまですが直接的な暴力描写をする日本映画がとても多いので、違う視点から暴力を描けたと思っています」と手応えを話していた。

 「淵に立つ」は、10月8日から全国で順次公開される。