記憶喪失になった暗殺者の孤独な戦いを描く、マット・デイモン主演の人気シリーズ最新作「ジェイソン・ボーン」(公開中)を手がけたポール・グリーングラス監督が、映画.comのインタビューに応じた。

 デイモン主演としては約9年ぶりの新作となる本作は、グリーングラス監督による第2作「ボーン・スプレマシー」、第3作「ボーン・アルティメイタム」に続くストーリーが展開。主人公ジェイソン・ボーン自身も知らなかった過去が明かされると共に、ボーンが再びCIAの絡んだ陰謀に巻き込まれていくさまが描かれる。ニッキー役のジュリア・スタイルズが続投するほか、アリシア・ビカンダー、トミー・リー・ジョーンズ、バンサン・カッセルら豪華キャストが新たに加わる。

 この9年、グリーングラス監督とデイモンのもとには数多くの新作を望む声が寄せられたという。グリーングラス監督は「マットと会った際に『続編を作ろう』と言われたんだ。『作らなくちゃいけない理由はなんだい?』と聞くと『みんなが続編を待ち望んでいるからだ』と彼は答えた。みんなが見たがっているから続編を作るということは、シンプルに素晴らしいことだなと思って、そこから動き始めたんだ」と本作がファン発信であることを明言する。

 一体なぜ、本シリーズはそれほどまでに世界中のファンをひきつけてやまないのか。グリーングラス監督によれば、3つの魅力があるという。「1つ目は、アクションとキャラクターをうまくブレンドしているというところ。アクションが知的でクオリティがあり、独創性に富み革新的である点にひかれるのではないかな。2つ目は、魂のあるキャラクターが多い点。劇中のアクションシーンは、キャラクターを表す大切な要素でもあるんだ。そこがうまく伝わっていると思う。3つ目が、その時代の社会背景を取り入れているところ。以上の3つの点が気に入られている理由だと思うね」。

 理知的な筋運びで知られるグリーングラス監督らしい分析だが、続けて最新作「ジェイソン・ボーン」でも見られる、アクションシーンにおけるカット数の多さについて言及。「カット数が多いのは、まさに本シリーズのトレードマークだと思っているんだ。街中を走ったり、敵と戦ったり、ボーンが躍動している場面をテンポよく描くためにそうしていて、その部分が人々に気に入ってもらえている理由なのかなと思っているよ」と“4つ目の魅力”とでもいうべきシリーズの特長について解説した。

 グリーングラス監督とデイモンの相性のよさも、シリーズをここまでの地位に押し上げた要因だろう。グリーングラス監督は「初日のロケは、最後にジェイソン・ボーンとしてのマットに会ってから約10年も経っていたんだ。だけど、とても面白いことにまるで先週、前作をクランクアップして、またすぐに今作に取り掛かった感じで、びっくりするぐらいスムーズだった。大いに楽しみながら作れたね」と振り返る。盟友デイモンや気心の知れたスタッフ陣との製作の日々は、グリーングラス監督にとっても大きな財産となったようだ。

 本作では現実に起こったいくつかの事件を下敷きにしたスリリングな展開が待ち受けており、さらには過去作の隙間を埋めるボーンの新たな真実など、製作陣の新たな挑戦が随所に感じ取られる。グリーングラス監督は「前作から9年間、荒野でさまよう人生を送ってきて、過去から逃げようとずっともがいてきたんだ。でも、どうしようもない行き止まりにたどり着いてこれ以上逃げられないときに、ボーンは一体どうするのか? 逃げてきた自分に戻るしかないという状況で、彼はどのような決断をするのか? そこがこれまでのシリーズとは異なる点だし、見てほしい部分だね」と締めくくった。