第69回カンヌ映画祭ある視点部門で審査員賞に輝いた「淵に立つ」が10月8日、全国50館で公開された。主演の浅野忠信をはじめ、共演の筒井真理子、古舘寛治、太賀、篠川桃音、真広佳奈、深田晃司監督は、東京・有楽町スバル座での舞台挨拶に臨んだ。

 「歓待」「ほとりの朔子」などで世界的に注目を集める深田監督がメガホンをとった本作は、夫婦、家族、愛、そして人間とは何かを問いかける人間ドラマ。郊外で小さな工場を営む夫婦と一人娘の家庭に、夫と古い間柄の前科者・八坂(浅野)が現れ、奇妙な共同生活が始まる。やがて八坂は、一家に残酷な爪あとを残して姿を消す。

 本作はカンヌでの快挙やスペシャル・プレゼンテーション部門に特別招待されたトロント国際映画祭のほか、既に25以上の映画祭への出品が決定している。この日はヨーロッパ、アメリカをはじめ20カ国(フランス、カナダ、スイス、イギリス、トルコ、ベルギー、オランダ、ギリシャ、ブラジル、香港など)以上での海外配給が決まったことが発表された。フランスは本年度中、アメリカは17年の公開を予定している。

 深田監督は「映画を作る時は、まず『自分が面白いと思うものはなんだろう』というところからスタートするので、どこの国の方に見てもらおうというのは考えていない。でも、この作品を通じてトロントやカンヌなど、いろんな国に行ったら、日本で生まれて日本で育ってきたという立ち位置のようなものをしっかりと持てている映画が海外にいけるのだと思った。日本人であることを忘れて、国際人のふりをしてやるというよりは、日本人であるという視点をきちんと持てていることが重要」と思いを明かす。そのうえで、「今回の映画をカンヌで上映した後、記者から質問や感想を聞いた時、ちゃんとグローバルな日本映画になれたと感じた」と胸を張った。

 一方、浅野は「この作品で1番有り難いのは深田晃司監督との出会い。どの現場でもいろんなことを学ぶが、やはり監督の力はすごいもんだなと思っていまして。深田晃司監督はこの映画をずっと温め、作品に取り組んでいた。その時に僕の想像以上の、作品に対する考え方、奥行きを感じた。それがあまりにも強かったので、一緒になって作れた」と深田監督に感謝。そして「今日を迎えられて嬉しい」と公開の喜びを噛みしめた。