ソーシャルメディアの特性を生かした日本コカ・コーラのモバイル施策とは

EnterpriseZine2011年12月16日(金)17:40

マーケティングを「作り手視点」から「消費者視点」に転換

 コカ・コーラでは、自社が提供するパッケージ飲料と、携帯電話やスマートフォンは、似た立ち位置にある、と分析しているという。その理由について江端浩人氏は「何か欲求が生まれた時、それを満たす身近にある製品であり、生理的欲求は飲料、知的欲求は携帯機器が対応するという意味で」と解説した。そこでコカ・コーラは、自らのマーケティングにモバイルを活用すべきだと考えている。

 実際、コカ・コーラのマーケティング戦略は変化し続けている。以前は「作り手視点」で一つの製品イメージ、一つのキャッチフレーズのアウトプット露出を最大化する「360度マーケティング」と呼ぶ手法が主流だった。ところが2000年頃から、特に若者に対してメッセージが到達しない傾向が見られるようになってきた。その要因は長期的なテレビ離れであり、同時にCMの認知率も低下した。

 そこで2005年頃から世界中のコカ・コーラでインターネット関連部署が立ち上がり、マーケティングのコンセプトは「統合的マーケティング・コミュニケーション(IMC)」と呼ばれるものに変わった。消費者に伝えたいコンセプトを「ビッグアイデア」として中心に置き、それぞれの消費者の立ち位置を考えて、リーチする方法を変える。

SNS上ではコンテンツが一人歩きする

 現在のコカ・コーラにおける消費者とのコミュニケーションのキーになるコンセプトは「liquid and linked」と呼ばれている。その背景に非常に大きな要素としてあるのがソーシャルメディアの登場だ。まずYouTubeを含めたソーシャルメディアは、あらゆるところに広がっていくliquid(液体)だ。液体なので、入れ物によって形が変わる。これはメディアによって見え方が変わることを意味している。

 Linkedはコンテンツ同士がリンクし、同時にコカ・コーラのビッグアイデアにリンクさせるという意味だ。たとえばYouTube上でのコカ・コーラ関係の動画の再生回数は全部で1億4600万回。そのうち、コカ・コーラが提供したビデオの再生回数は2600万回。つまり、一般の人が作成したコカ・コーラ関係ビデオが、1億2000万回再生されたことになる。SNS上でコンテンツが一人歩きして様々なところに流れていくとき、元々のビッグアイデアがないがしろにされると、コカ・コーラが伝えたいメッセージが伝わらない。

 Owned media(所有メディア)、 Paid media(購入メディア)、Earned media(獲得メディア)をトリプルメディアと呼ぶ。この中でEarned mediaがソーシャルメディアであり、コントロールできないという大きな特性がある。ここにコカ・コーラは、他社のブランドと一緒に露出するShared media(共有メディア)を加えて消費者とのコミュニケーションを考えている。その理由は、製品が食品スーパーの店頭などで購入されることが多く、そこでのブランディングが重要だと考えるからだ。

自らソーシャルメディアを展開し、既存SNSとも強く連携

 では日本におけるコミュニケーション戦略はどうか。日本コカ・コーラは2006年、「コカ・コーラ パーク」というサイトを開設した。その背景には、多くのブランドサイトを運営していたものの、各サイト間の回遊が少なかったことがある。またPC用、携帯用、自販機用、プロモーション様など数多く存在していたデータベースを一元化する必要も感じていた。さらに他社との提携のプラットフォームにすることも意図された(図4)。登録無料の会員数は2007年に350万人、2011年に1100万人に達している。会員属性は男女比6:4(図5)。サイト内を回遊してもらうため、「総合滞在型リゾート」というコンセプトで、様々なアトラクションを用意している。

 スマートフォンへの対応では、iOSでは表示できないFlashを使用せず、HTML5などを活用。アプリとタイアップし、ユーザーを取り込む施策を行っている。サイト構築の考え方だが、ユーザー体験を統一するため、表示に制限が多い携帯を設計してからスマホ、PCに落とすという方針が採られている。ただ、位置情報と連動したサイトについては、GPS搭載のモバイル機器だけに対応している。

 コカ・コーラ パークの会員数、アクセス数が増えたことから、2009年から外部広告の配信を開始した。2010年からコミュニティ運営やソーシャル・アプリ、公認ブロガーなどソーシャルな施策を開始し、トリプルメディアがクロスしたものとなっている。さらにサイト上でモバゲーや日産自動車とのコラボレーションを行っており、江端氏は「一社でやるよりも、大きな体験をユーザーに提供出来るのがShared mediaの特長」と語る。

 ソーシャルメディアのコントロールは難しいが、その一方で「マスコミでは不可能な、個人的に必要な情報交換に最適なもの」と評価し、対応に注力している。Facebookのコカ・コーラファンページは、3,600万人以上のファンを獲得しており、ソーシャルメディア活用企業の中ではトップだ。そのほかにもコンテンツ連携、CGM作成、企業情報提供、動画投稿、動画中継など、テーマごとに強いメディアと連携している。

 またコカ・コーラ パークのマイページから、Facebook、Twitter、mixi、Amebaに一括投稿できる機能を装備。さらにコンテンツには「ハッピーボタン」を追加するなど、ソーシャルメディアの要素を取り入れている。

 最後に江端氏は、全国の自動販売機やWebサイトに貼ってあるQRコードから携帯電話、スマホでアクセスしてもらうことで様々な楽しみを提供する「ハピクエ」の取り組みを紹介し、コカ・コーラが行っているインターネットのマーケティング、モバイルの施策を紹介するセッションを終了した。

EnterpriseZine編集部久原 秀夫 [著]
日本コカ・コーラ株式会社 マーケティング&ニュービジネス インターラクティブ・マーケティング バイスプレジデント 江端 浩人 氏
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