朝井リョウ原作のアニメ『チア男子!!』。その名のとおり、ワケあり大学生たちが男子だけによるチーム「BREAKES」を結成してチアリーディングに挑戦する物語だ。お話はいよいよ終盤、先週放送された第10話「君に伝えたかったこと」を振り返ってみよう。今回もイイ話だったよ!


いよいよ全国チアリーディング選手権の予選当日。前回で涙を流していたカズ(演:岡本信彦)もすっきり笑顔でハル(演:米内佑希)の家に乗り込んでいる。ハルのお母さんを下の名前で呼び、ちゃっかりお弁当を作ってもらっているあたり、カズの天性の人懐っこさとともに、ハル一家とカズが築いてきた信頼が垣間見える。

登場人物たちの心の壁を少しずつ“BREAK”してきた『チア男子!!』だが、肝心の主人公・ハルが抱える悩みについてはまだ解決していなかった。ハルの悩みとは、仲が良かった姉・晴子(演:藤村歩)とのすれ違いだ。柔道一家に生まれたものの、途中で挫折してチアを始めたハルのことを晴子は良く思っておらず、逆にハルは柔道一筋に打ち込む晴子に後ろめたさを感じていた。それまで連勝街道を歩んでいた晴子がすっかり勝てなくなってしまったこと母から聞いたハルは、予選当日だというのに競技に集中できないでいた。

もう一人、心に壁を作ってしまっているメンバーが翔(演:小野友樹)だ。チアの経験が豊富でBREAKESの練習長も務める翔だが、高校生の頃にチアの演技の失敗で事故を起こし、パートナーのさくら(演:伊藤茉莉也)は車椅子生活を余儀なくされていたのだ。ショックで一時期はチアから離れていたが、ハルたちに勧誘されてBREAKERSに加わったという経緯を持つ。

なんとかチアの予選を突破したBREAKERS。予選の演技は描かれず、なんだかじらされているような気になってくる。作画の手間を避けるためなのだろうが、その分、ストーリーと登場人物たちの演技で勝負しなければいけないのだから、どちらにせよ大変だ。

本選のための手続きを終えた翔とカズと高城コーチ(演:甲斐田裕子)の前に、陽明大学の強豪チアチーム「SPARKS」の堂本(演:安元洋貴)が現れる。堂本はかつて後輩だった翔たちの健闘を讃えつつ、厳しい言葉を浴びせかける。

「俺はお前たちのチアを認めない。BREAKERSのチアはサーカスだ。たしかに形にはなっていたし、技もそれなりにできていた。でも、チアリーディングに一番大事なことがわかっていない」

堂本の言葉を噛み締める翔。翌日からの練習は、完璧な演技を求める翔によって一層厳しいものになった。あまりのスパルタぶりに困惑するBREAKERSの面々。

ハルと一緒に高田牧舎(実際に早稲田大学のすぐ近くにあるカフェ)でバイトをしている最中も様子がおかしい翔。そこへ翔を心配したカズがやってきた。

「俺、気づいたんだよね。何も聞かないことが、いつも正しいとは限らないって。もし翔が一人で抱えていることがあるなら、俺たちにも支えさせてほしい」

カズは前回の経験で人間が一回り大きくなったようだ。何度かここでのレビューでも書いているが、『チア男子!!』の主役たちは全員大学生であり、中学生や高校生のように相手の心に土足で踏み込むようなことはほとんどしないと言っていい。大学生にもなると、相手と適度な距離を保つことができるようになる(世の中にはそれがまったくできない人もいるが『チア男子!!』の登場人物はそれができている)。

相手の心に土足で踏み込まず、かといって距離を取っているだけでもない。相手が弱っているとき、そっと寄り添うことができるようになるのが人間的な成長だと思う。カズはそれができるようになっていたのだ。相手の間合いに入るタイミングが完璧だったせいか(さすが柔道経験者)、翔はすらすらと過去について語りはじめる。

べらんめぇ口調の車椅子ヒロイン・さくら


高校時代、翔は尊敬する先輩である堂本から同じように「サーカス」と言われたことがあった。焦った翔はパートナーのさくらとともに難易度の高い技を完璧に決めることにこだわり、結果として本番中の事故を招いてしまった。

堂本は自分の言葉が事故を招いてしまったと感じており、あらためてさくらの姉である高城コーチに謝罪する。しかし、堂本のチアに対する信念は変わっていない。観ている人を不安にさせるような演技は、だからこそ、同じような言葉を大学生になった翔にかけたのだ。堂本の言葉の意図に、翔より先に気づいたのはカズだった。

「チアにとって一番大事なのは、観ている人を応援して笑顔にすることだろ?」

いくら技術的に高度な技を繰り出しても、観ている人が不安にさせるような演技はサーカスと一緒だということだ。完璧な演技を求め続けてきた翔の考え方が根本から覆った瞬間である。さらにハルから、車椅子生活を送るさくらが今でも翔のことを応援していると聞き、今まで目を背けてきたさくらと正面から向き合う決意をする。

これから何の話が始まるのかわからなくなるぐらい、凄まじくダサい私服姿でさくらの部屋を訪れる翔。さくらは翔を一目見るや、笑いながら「相変わらずダッサい私服!」と斬って捨てた。私服のダサさが極まると相手の心を和ませる効果があるのかもしれない。

「おい、翔! こっち見ろ! アタシさぁ、けっこう頭来てるんだけど。アタシに無断でチアをやめるとか、ありえなくない?」

姐さん口調で翔を叱り飛ばすさくら。コワッ。でも、怖いだけじゃない。さくらは懸命なリハビリで、立ち上げることまで可能になっていた。さくらの部屋にSPARKSのユニフォームが飾ってあることからも、さくらのチアに対する愛情と復活にかける強い気持ちが伝わってくる。

「ずっと見てたよ、翔のこと。チアをやっている翔に、私も励まされてた。絶対に自分の足で応援にいくからね」

一生懸命応援してくれるさくらのために、自分がするべきことは何なのか? 危険な難易度の高い技をこなすことなのか? そうではないだろう。応援に来てくれたさくらを励まして、笑顔にすることがチアの役割なのだ――と、翔は気づいたはずだ。

もう一度「チアとは何か」という定義を問い直し、翔の過去のトラウマも解決したエピソードでした。これで本選に向けてBREAKERSの演技もレベルアップしていくことだろう。さあ、あとは主人公・ハルの心の壁をBREAKするだけだ!

それにしても“顔面蒼白”を目の周りを黒っぽく塗るという作画で表現するのはどうなんだろう? なんとなく『ちびまる子ちゃん』の“目の上に縦線”を思い出すのだが。

今夜放送の第11話「ビタースイート・バレンタイン」では、ハルとめったに現れないヒロインの千裕(演:宇山玲加)の恋の行方にも決着がつく!? ゴー・ファイ・ウィン!
(大山くまお)