大変だ! ウルトラマンオーブが負けちゃった! 『ウルトラマンオーブ』先週放送の第11話「大変!ママが来た!」は、一見、お笑い回のようでいて、実は物語が大きく動くシリーズ全体の鍵になる回だった。油断していた大人のウルトラマンファンが腰を抜かし、オーブを応援していたチビッコたちを絶望の淵に叩き込んだ第11話とは……?

お話が始まってすぐ、銭湯で湯船につかりながらナオミ(松浦雅)がガイ(石黒英雄)に「ねぇ、ガイさん、私の恋人になってよ」といきなり告白! 画面いっぱいを使ってスローモーションでコケるジェッタ(高橋直人)とシン(ねりお弘晃)! さすがの風来坊ヒーロー・ガイさんも驚きのあまり引きつり気味だ。

次のカットでは、もう高級レストランに場面が移っている省略のテンポが素晴らしい。ナオミのお願いとは、ママ(田中美奈子)が上京している間、婚約者の役をガイに演じてもらうというものだった。上京してくる親を安心させるため(あるいはウソを取り繕うため)に知り合いに婚約者を演じてもらうという展開は、昭和のドラマで数限りなく繰り返されてきたパターン。メガネにスーツ姿のガイさんが新鮮だ。

パワフルな田中美奈子……じゃなくてママに振り回されるナオミとガイ。ガイを挑発するためにやってきたジャグラス ジャグラー(青柳尊哉)までママのペースに巻き込まれて、3人一緒に写メとか撮られる始末。先週、惑星侵略連合を壊滅に追い込んだばかりの大悪党なのに! ママが立ち去ると、「なんだっけ……?」と止まっていた深刻そうなBGMも再開するのがおかしい。ガイがジャグラーの襟首を掴んで「決着をつけてやる!」と凄むと、またママが飛び込んできて「けんかをやめて! 私のために争わないで!」と河合奈保子の「けんかをやめて」の歌詞を言って高笑い。完全にママのペースだ。

ちなみにママの名前が圭子なのは、宇多田ヒカルのママ・藤圭子の大ヒット曲「圭子の夢は夜ひらく」から。夢野ナオミという名前はヘドバとダビデの「ナオミの夢」から。ヘドバとダビデと言っても怪獣の名前ではなく、イスラエル人デュオの名前だ。『ウルトラマンオーブ』は意外と昭和歌謡ネタが多い。

ママに引っかき回されながらも、ものすごく大切な説明をするジャグラー。これまでウルトラマンオーブが魔王獣を倒してきたのは、怪獣カードを入手するためにジャグラーが仕組んだことだった! 揃った魔王獣のカードと、メフィラス星人から奪ったウルトラマンベリアルのカードを見せてニヤリとするジャグラー。そんなジャグラーに料理を勧めるママ。そこへ巨大化したタマユラ姫(第6話「入らずの森」に登場した古代の霊能力者)が現れて、ガイに「大きな災いが起きようとしています」と警告する。なんというか、いろいろなことが起こりすぎて画面が大変慌ただしい。

その後、SSPの本部に乗り込んできたママは、ナオミを連れて帰ろうとする。こんな危ないことはやめてほしい、というのだ。ママの言い分には説得力がある。ナオミたちSSPは武器さえ持たず、毎回怪獣のまわりをウロチョロして危険な目に遭いまくっているからだ。しかし、母親の制止を振り切って異変のもとへと向かうナオミ。ナオミにはナオミの使命感がある。子どもがやろうとしていることは、たいてい親の理解できないものだったりするのだ。

ウルトラマンオーブ、完 全 敗 北!


再び対峙するガイとジャグラー。先ほどまでのコントまがいのやりとりとは、うってかわって緊張感を醸し出している。役者や演出の力量もあるのだが、テンションの高い田中美奈子がいないだけで画面が引き締まる。バブル時代を生き抜いた女優の存在感はすごい。

それはともかく、ジャグラーはついに魔王獣カードを使って大魔王獣マガオロチの封印を解く! 最後の封印であるゾフィーのカードをベリアルのカードで砕き、マガオロチ登場! これまでの野良怪獣(9話に登場したテレスドンとか)とは特撮のケレン味がまったく違う。小学生のような感想で申し訳ないが、すさまじく強そうだ。ぐわーっと大きく開いた口は『シン・ゴジラ』を思い起こさせる。一連のマガオロチのシーンは、平成ゴジラシリーズで怪獣のデザインを手がけ、『ウルトラマンギンガ』や『ウルトラマンX』にも参加していた西川伸司が画コンテを担当している。

ガイはウルトラマンオーブ・スペシウムゼペリオンに変身! いつもの決め口上がないところが切迫感を表している。戦いに臨む前、一瞬の静寂の中でビルのガラスにオーブの顔が写る演出は、1984年版の『ゴジラ』でゴジラが有楽町マリオンのガラスに映し出された演出へのオマージュかもしれない。

マガオロチの強さは半端なく、スペリオン光線を直撃させても跳ね返すどころか、そのままこちらに進撃してくるというヤバさ。これまで一撃で怪獣を屠ってきたハリケーンスラッシュのオーブスラッガーランスも効き目なし。最後の切り札、バーンマイトのストビュームダイナマイトを繰り出して黒焦げにしたと思ったら、効いてないよー! と言わんばかりに炭を弾き飛ばして復活する恐ろしさ。ついにウルトラマンオーブは力尽きてしまった! 完全敗北! 

ウルトラマンオーブが敗北した後、サイレンが鳴り響く中、街を容赦なく破壊し続けるマガオロチの禍々しさったらない。前半のほのぼのとしたムードと後半の絶望感の落差はすさまじく、筆者と一緒に見ていた娘(4歳)も突っ伏して号泣してしまった。ツイッターによると日本全国で大量の幼児が泣き出してしまったらしい。街が爆発し、画面が炎で包まれてこの回終わり! 

中盤の山場となる今回の監督は、メイン監督の田口清隆。ツイッターで「今回のウルトラマンは遊び回もメイン回も無いんだ!を体現すべく、本来遊び回だった話とメイン話を合体させてみました」とコメントしている。

シリーズ構成を務める中野貴雄もツイッターで「ギャグとシリアスを分けるという考え方がよくわからない。名作『風と共に去りぬ』だって『カサブランカ』だって、笑えるシーンは一杯あるよ」とコメント。さっきまで笑っていたのに急に悲劇が起こるのは、我々の人生と同じかもしれない。禍福は糾える縄の如し。

さて、この記事が配信されている頃には放送が終わっている第12話は「黒き王の祝福」。 変身する力お失ってしまったガイはどうやってマガオロチを倒すのか? ついにウルトラマンベリアルの力を借りてしまうのか。それはウルトラ闇金ではないのか。見逃してしまったあなたには、円谷プロダクション公式チャンネル「ウルトラチャンネル」で1話まるごと見逃し配信中です。闇を照らして、悪を討つ!
(大山くまお)