ジャンケン小僧は「トトロ」のメイちゃんこと坂本千夏さん


スタンド能力を引き出す「矢」が選ぶ相手を探し、町を飛び回る写真のおやじ(吉良吉影の父)。直接スタンドバトルをするのは一回だけで、今後は息子を守るための“刺客を”仕送りする「黒幕」のポジションだ。本来は目立たない役回りのはずだが、千葉繁さんのインパクトある声と演技は「地味」とは最も遠いもの。吉良がラスボス、写真おやじが新たな敵を作り出す構図は意外にベタで、第四部もオーラスに向けて動き出した感を強くする。


「矢」が選んだのは、木によじ登って渋柿を盗み食いする子供だった。しかし、敵味方を問わず「成長」するのが第四部。この頭の悪そうな小僧がちょっとの間に成長するのが、今回の見どころの一つ。

駅前でカメラを構える露伴先生に、「漫画家の露伴くん」と親しみを込めて声をかけるジョセフ・ジョースター。「通勤の会社員盗み撮りってやつ、させてもらってるんですよ」と、今なら通報されそうな話をサラッと言う露伴先生、そこにシビれる憧れるゥ! 倫理に囚われない自由人にしか出来ない調査だが、自由人すぎて「子供にグーパンチ」をやらかすんだけど。

盗撮コレクションの中にはバッチリ川尻浩作(吉良吉影)の写真、スタンド使いは引かれ合うってやつだ。「たぶんこの中の家族か身内がすでに奇妙だと思い始めてるはず」も大正解だが、妻・川尻しのぶが「思い始めた」上で惚れ直してるとは想定外だろう。

そんな露伴先生に「ねぇちょっと!お兄さん僕とジャンケンしてくれない?」と絡んできた小僧。その声は坂本千夏さん、『となりのトトロ』のメイちゃんであり、アグモンなどデジモンシリーズの常連! がぜん「バトルもの」のムードが高まるキャスト選びだ。

ガキをジャンケンで負かして喜ぶジャンプ漫画家・岸辺露伴



露伴先生は小僧を追っ払いながら、ほっぺたに開いた穴に気づいてしまった。スタンド使いか?と察するカンの良さに、すぐさま「本」にして正体を調べられるヘブンズ・ドアーの便利さ。荒木先生の分身である以上に「使いやすい」キャラで、スピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』での主役抜てきにもうなずける。

少年の名は大柳賢、11歳。スタンドのことは何も書いてない(スタンド使いじゃないとも書いてない)。ほっぺたの穴も電柱から落ちたとき怪我したらしい。しかし「ジャンケンが好きだ。ものすごくジャンケンがしたい」と不気味なまでにジャンケン好きすぎる……。

初回のジャンケンは、露伴先生がグーで楽勝。「最初にチョキを出そう」という考えを「本」で読んでるからな! さらにタクシーに乗って着いた先は、おしゃれなカフェで、三人組の先客がいた。

「クソッタレ仗助にアホの億泰。それにプッツン由花子だ。全員僕とは話が合わない奴らだ」

本当にメタクソな評価で、康一くん以外は心底どうでもいい露伴先生。が、社交辞令で軽くあいさつをかわしてるすきに、ジャンケン小僧に席を取られてしまった。「やだ〜!ここ僕が座ったんだもん!この席僕んだー!」と言ってるのがメイちゃんと思えば可愛い……やっぱりウザいな!

億泰「露伴先生譲ってやんなよ。相手は子供じゃないっすか」
仗助「泣かすなよ。大人げないっすよ」
由花子「相席にしたら?」

三人に大人げないと宥められてしぶしぶジャンケンに応じる露伴先生。ちなみに、今後も原作通りだとすれば「相席にしたら?」が由花子=能登麻美子さん最後のセリフとなる。この一言のためにスタジオに来られたんだろうか……。

「ざまあみろ!生まれてこの方ジャンケンに勝ってこんなに嬉しいことはないよ〜」と大人気なくはしゃぐ露伴先生。ガキを負かして気分は最高にハイになる社会人はどうかと思うが、漫画家としての評価はストップ高!

ファンの子供をグーで殴るジャンプ漫画家・岸辺露伴


三度目のジャンケン会場は町の本屋さん。マイナーな資料本を見つけて買おうとすると、ジャンケン小僧が横取り。怒りに任せて「グーだ」と殴る露伴先生の気持ちは分かる。分かるが小僧はパー、ついに一勝目!

すると、小僧のほっぺたの穴に吸い込まれていくヘブンズ・ドアー。さっき「本」に能力のことが書いてなかったのは、小僧が「スタンド使いになりつつある」発展途上だったからだ。

「ジャンケンは確率ではない。勝ちたいと願う心の力だ。ジャンケンで勝つってことは露伴の心の力を負かしたってことだ」

小僧の「本」にあったフレーズは、ジョジョのあらゆる「勝負」に共通する掟だ。第三部でもイカサマの能力と技術に長けた達人ダニエル・ダービーは承太郎の鋼のハッタリに敗れ去り、弟のテレンス・ダービー弟も心を読めるスタンドを持ちながら自らの弱さに敗北した。ジョジョの賭け事が「魂」をチップにするのは、荒木先生の勝負哲学を現してるのかもしれない。

そうやって露伴先生が「本」を読んでいると、書き込んだ「岸辺露伴を攻撃できない」という命令が「できる」に改変された。ボーイIIマンの能力は、1回勝つごとに相手のスタンドの1/3を取り込むこと。すでヘブンズ・ドアーの1/3は吸収され、小僧が右腕の力を使って書き換えたのだ。

スタンドを奪うことは、身体の自由を奪うこと。さっそく小僧は、露伴先生の右手でグーパンチして仕返し! 「少年ジャンプ」に描いてるマンガ家のくせに子供殴るなんて、今ならTwitterやインスタグラムに晒されて人生という名の連載終了ですよね。

このジャンケンは5回勝負(すでに3回終了)、3本先取したほうが勝ち。

「いいだろう、ジャンケンしてやるよ」
「グッドッ!」

このやり取り、ダービー兄と同じだッ!

杜王町の空を飛ぶ壮大なジャンケンバトル


ここから先は10分以上、オールすべてジャンケン。連載当時で6週にわたってジャンケンしかしなかった前代未聞のジャンプ漫画が、テレビで再現されるッ!

今のところ小僧は1勝2敗。一回も落とせない崖っぷち。もう容赦はしない、右腕を取り戻した瞬間、再起不能にしてやる!とかます露伴先生。さっきのグーパンチは容赦してたんですか。

「僕はさっきパーで勝ったからなぁ……次にチョキかグーを出したくなるのが人情だけど子供っぽい発想かなって思ったりして」
「でも露伴先生はそんな単純そうな性格に見えないから裏をかいてパーで行くってのもいい考えかもと思ったりして」

ギャンブルの重みはスタンドの重み、高度な心理戦だって交わされる。仕切り直し2回戦はグーVSパーで露伴先生が負け、二勝二敗でお互い崖っぷち。でも、小僧は全然負ける気がしない。

「僕の方は最初2敗してから今2回続けて勝った……露伴先生はその『逆』です……続けて負けている。あんたは今勝負の下り坂にいるンだ!」(“ンだ”は原作マンガの表記から。小池一夫先生の影響?)

出ました「流れ」論。麻雀で肯定されたり否定されたりしてる理論だが、これもプレッシャーのかけ方の一つ。が、ハッタリと割り切れないのが杜王町という場所だ。物理法則を超えたスタンド使いがゴロゴロいるんだから、「流れ」だってあるんだろう。

「さすがこの矢が選んだ小僧じゃ!わしの吉影の力になってくれる」とほくそ笑む写真のおやじは、ますます黒幕っぼい。陰謀に酔いしれる姿は、千葉繁さんが演じた『ビーストウォーズ』のメガトロンなどの悪玉が背後に透けて見えるようだ。

渋柿をかじってた子供がメキメキ成長し、大人と互角に張り合える「敵」になってきた。舐めてかかっていた露伴先生も、真剣に心理戦に訴え始める。

「次の勝負、君は決してパーを出さない」

それを混ぜっ返されると「おいおいおいおいおいおい待てよ。僕は二回連続グーを出して負けた。グーは僕にとって悪運のグーってわけだ」。相手の成長を認めたからこそ、煽り方にも熱が入ってくる。「もしパーを出したら、この僕が下り坂ではないって認めることだ」なんて、見下したガキに言うセリフじゃあない。

スタンド使い同士が真剣にジャンケンすると、空を飛ぶ!! あれだけカマしたのにパーを出して来る小僧の精神力もすごいが、ジャンケンのスケールも壮大すぎる。「遊び」が高まると空中戦になるのは『ゲームセンターあらし』の月面宙返り以来の伝統かもしれない。

膝の力が入らず(ジャンプしすぎだ)体勢を崩した露伴先生に、小僧は「今までのフォームと違うぞ!」と警戒し、パーをとっさにグーに変えておあいこ。ジャンケンにフォームって何なんだ!?とツッコミが追いつかない面白さ。

そこに通りがかったジョセフ&仗助の父子、ジョセフの腕には透明な赤ちゃん。露伴先生の味方だと察しながら、わざと声をかけて運試しする小僧。仗助は「ありゃ露伴じゃね〜かよ。俺アイツ嫌いなんすよ。愛想笑いしていきましょう」本当に仲悪いな君たち! 頼みのジョセフは小僧を怪しんだが、「彼のファンのようじゃの」と手を振って立ち去る。いや、半分は合ってるけどさ。

「今の僕は全然負ける気がしない!僕は強運で守られている!今の僕ならたとえ6発中5発弾丸の入ってるロシアンルーレットでさえ生き残れますね!」

石で窓を割った「ガラスのシャワー」にかすり傷一つ負わない小僧と、破片が手に刺さる露伴先生、関係ないのに窓を割られた家の人……。小僧の強運恐るべきだが、誰が一番不運なんだろう。さあ、最後の勝負だ!

露伴先生、パーを出したままの構え(ジャンケンに構えって)。なんと予告ジャンケン!

「君は僕を乗り越えると言ったな?君よりも9年も長く生きてるから教えてやろう。他人を負かすってのはそんなに難しいことじゃあないんだ」
「もっとも難しい事は!自分を乗り越える事さ!僕は自分の運を、これから乗り越える!!」

吉良吉影と並んで名言だらけの露伴先生。第四部アニメをまとめるにあたってセリフをはしょらせない、ライター泣かせの名キャラクター!

前回より空高く飛び上がった(だからなぜ飛ぶ)最終戦は、小僧が勝利確定のチョキ……が握り込まれてグーに変化し、パーに敗北。これで露伴先生の3勝2敗、ヘブンズ・ドアーが取り戻された。

強運はジョセフ・ジョースターとともにやってきていた。透明の赤ちゃんに「小僧の指を「グー」にする」と書き込んでいたのだ。「命」を運んでくると書いて「運命!」それは今後、別のキャラが言うセリフだけど。

イカサマに納得の行かない小僧は赤ちゃんを人質に取り、再戦を無理強い。だが、きっかけがイカサマであれ、今の露伴先生は「上り坂」にある。空中に浮かんでるうちに、ストレートに三敗して決着。くそ〜せっかくスタンド使いにしてやったのに負けおって!あばよ!!と捨てゼリフとともに退場する写真のおやじ=千葉さん、さすが「悪の組織のボス」をやらせたら世界一だ。

露伴先生に「一生ジャンケンに勝てない(これはキツイ)」と書き込まれるのを拒否して、トラックの前に身を投げ出す小僧。「いいね!気に入ったぞ小僧!僕はそういうまるで劇画って言うような根性を持ってる奴にグッと来るんだ!」本当に劇画のコマ割りになる演出がブッ飛んでるが、ジャンケンで空を飛ぶ話だから気にならないぞ。

露伴先生は金色の衣ならぬオーラをまとってトラックの前に降り立つと、写真おやじが運転手の視界を遮って急ハンドルを切り、二人とも生還。めざましい成長に免じて許してもらえた小僧は、心から完全敗北を認めるしかない。

「お〜い露伴くん、赤ちゃん見なかったかのう」

すっとぼけてる露伴先生より、一緒に探してくれる小僧のほうがやっぱり善人だ。しかし最後のナレーション「スタンド名ボーイIIマン再起可能」って、「再起不能(リタイア)以外の決着はシリーズ通してこれだけ!!
(多根清史)