大きな時計の針が逆方向に回る。白いマントに地球儀をかぶった人がアリーナ席を歩き、ファンに手を振っている。開演前から賑わう東京ドーム。
地球儀には困り顔や眉間にシワを寄せた顔が描かれている。
「We are SMAP! 2010 CONCERT」のはじまりはつかみどころのない雰囲気だった。


メンバーもファンもWe are SMAP!


「We are SMAP! 2010 CONCERT」は、2010年7月31日の札幌ドームを皮切りに、9月19日まで行われた全国5大ドームツアー。全19公演で累計観客動員1000万人を突破と、記録を更新した記念すべきコンサートツアー。
セットリストはアルバム『We are SMAP!』を中心に構成されている。本編とメイキングが収録されたDVDは同年12月の発売。(Blu-rayは2014年3月発売)

「We are SMAP2010コンサートツアー。スタート10秒前」
女性の声でアナウンスが流れると、一斉に歓声があがる。
カウントダウンからはじまる演出も珍しい。客席を練り歩いていた地球儀をかぶったダンサーもステージに集結して、秒針に合わせて手を動かしている。
いよいよ始まる!

時計の針が12時を超えられずに壊れてしまうと会場が暗転。メインステージに映像が流れる。たくさんのコウモリが飛び立つ中で、5羽だけが宇宙空間へ飛び出していく。やがて光となって惑星に降り立つと、ステージには特効と共に上や左右からワイヤーアクションで5人が登場。
ノーマルスーツのような衣装で、顔はまだ見えない。しかも地球儀のダンサーに落とされるようにして再び姿を消してしまう。そう簡単には出てきてくれないSMAP。画面に釘付けになる。
ステージには思わぬ形で消えたはずのSMAPが登場。ここまでで6分、SMAPの演出はすごいぞ!

マントを脱ぐと、ブルー地に惑星がたくさん散りばめられたスーツ姿。中居くんは同じ柄のキャップをかぶっている。
「This is love」からスタート。「SWING」の後半にメンバーからの挨拶が入る。「地デジにしたかー?」と発言したのは草なぎ。2006年から地デジ大使をつとめていて、ライブでもきっちり任務を果たしていた。

「こんにちはー!お世話になってます、SMAPでーす!」
こちらこそお世話様です、ってこれはアイドルの挨拶!?さすが中居くん。オープニングから笑いが絶えない。

セットリストはアルバム『We are SMAP!』がベースになっていて、今回はサカナクションの山口一郎や、相対性理論のやくしまるえつこ(ティカ・α名義)らが楽曲提供をしている。
コンサートは新旧入り交じった構成で、さほどアルバムを聞き込まなくても楽しめるラインナップ。初めて観る人もすんなりと入り込める気遣いがSMAPらしい。
4曲目からは96 年の『SHAKE』。5曲目『がんばりましょう』からは和装で登場。楽曲も和のテイストで、94年発売の曲でも新鮮みがある。97年発売の『ダイナマイト』も、歳を取ったせいか改めて聞くと昔よりも歌詞を理解できるなど、再発見があるのも嬉しい。

『帰ってきたヨッパライ』は草なぎの土下座からはじまり1人で歌い上げた。天使の羽を輪っかをつけたメンバーがバックダンサーをつとめ鶴瓶のセリフも聞こえてきた。
この演出は……なんとも参りました。
『セロリ』からは民族音楽を取り入れたアレンジなどが続き、そうこうしているうちに、ステージにはダンサーにサンバ隊の姿、イリュージョンをしてみせたり客席には大きな地球儀のバルーンが放たれていたり。フィナーレかというほど華やかなステージで、会場にいる小さな子どもたちも楽しめたんじゃないかな。

ソロステージも、それぞれの個性を発揮していて、ネコ耳をつけた女性に囲まれた色気たっぷりの稲垣、「これ、僕のiPad」とコンサートにiPadが登場する香取のステージ。こち亀の両さんも登場して「映画化決定しましたー!映画絶対見てなー!」商売上手な慎吾ちゃん。

一曲踊る中にも色んな振り付けが出てくるように、動く度に表情が変わる木村。男らしさとセクシー、舌を出したかわいい表情もあれば、髪を耳にかけて艶っぽい時、真剣な眼差しもある。表情がどんどん変わっていって「カッコいい」の一言じゃ収まりきらない木村。

中居もソロステージに力を入れていた。
3人の子どもに扮して中居くんについて語ったり、稲垣と東京ドーム周辺でデートを楽しんだりと、おちゃらけた映像が終わると一変。バイオリンの音色が響く『Memory〜June〜』がスタート。中居がN.マッピー名義で作詞をした楽曲で、歌う姿は別人のよう。

照明が暗転すると、スーツ姿の中居が登場。スポットライトがあたるとスターのオーラを放つ。キレのある動きで右側を指差す。キビキビと体を動かしながらダンスがはじまるとマイケルジャクソンが憑依したかのよう。

画面には「楽曲権利の都合上、商品化できませんでした。ご了承ください。」の文字。残念ながら、映像はここで終了。
これは見たかった! disc:2のメイキングビデオでダンスは見られるものの、別の曲をBGMにしているので、生で見られた人が羨ましい。

17曲目の『グラマラス』からのステージは、カッコいいSMAPが見られる。
赤寄りの濃いピンクを基調にした衣装で、体を動かすたびに足首まで伸びるシフォンが揺れてセクシー。全体的にややテンポを抑えた歌とダンスでアダルトな雰囲気が漂う。『ダイナマイト』のイントロがはじまると中居が笑を浮かべた。ここから一気に加速する選曲のセンスもたまらない。

ちなみに『ダイナマイト』の振り付けは、基本に忠実に踊ることにしたエピソードがこちら。
『現場のマネージャーさんひとりの意見です!ホワイトボードにシングル曲を書き出していたとき、仕事から帰ってきたマネージャーさんを捕まえて、「今こんな感じなんだけど、何か意見がある?」って聞いたんですね』
(オリスタ/2010年12月20日号)
リミックスもいいけれど、そのままの振り付けと音で観たい作品もある、という声を取り入れたのだそう。
ラブソングと衣装、演出がマッチしていて、テレビ番組ではあまり見られないSMAPの色気がたっぷりつまっていた。何度もリピートしたくなるほど見応えがある。

新作のアルバムを引っさげて行われたツアー。新曲に重点を追いてもいいところを、おなじみのキャラが登場したりトークで笑いをとったり。お茶の間で見ているSMAPを散りばめたり、いままでのカッコよさを塗り替えるくらいの魅力で惹き付けたり、客席を置いてきぼりにしない工夫を感じる。
決して現場都合ではなく、楽しんでもらおうという気持ちが伝わるSMAPのステージ。累計1,000万人という動員数は、すごさを表すなによりの証明だと思う。

disc:2はサプライズだらけ



disc:2には、ツアーのメイキングが5人分と、最後に9月16日の東京ドームでのMCが収録されている。

「もう、だいぶ体は温まったでしょうか?」
木村の問いかけに、客席は一斉に「イエーーイ!!」。
「本当かな〜?確認します。スタンド!!」
スタンド席からアリーナ、そして東京ドームと順番に声をかけていくと元気な声が返ってくる。
続いてバンド、そして「一番肝心な、ステージ!」
「お、おおおイエーイ」ワンテンポ遅れて反応するメンバー。
中居くんの言葉は聞き取れなかった。でも、ようやく一息つけた様子。
流れる汗をタオルでぬぐう5人。「ちょっときれいにしていい?」美意識が高いゴローちゃん。

「いやー、昨日ほら、1,000万人突破して、おかげさまで」
草なぎが切り出すと、「おめでとう!」と中居。
「1,000万人突破から次のステージへ進むのの1回目だね、今日のみんなが」
前日の記録樹立に続いて、翌日もスペシャルな日に変えてくれる香取。

「色んな経験をしてきて、実際自分たちを求めてくれる人が1000万人いままでいてくれたってのもそうだし、これからも人数……人数だけじゃなくて気持ちがどんどんどんどん増えてくって考えると、なんかこうステージ上にいて熱くなりますね」
木村の言葉に、会場からは拍手と歓声があがる。
「何かを話したときに人が拍手をしてくれるっていうのは普通の風景に見えるかもしれませんけれど、人が人に拍手をおくるってすごいことですからね。それを自分らは受けられるっていう環境を本当にこれからも…ありがとうございます」
舞台を経験したときに拍手のすごさを知ったと話す木村。拍手があれば十分と謙虚だった。

「木村くんのコメント偉いなー…」草なぎのコメントが物議を醸して、木村が「偉い」を「エロい」に聞き間違え、草なぎが「木村くんはエロい時がある」とかぶせる。おまけに「今日の木村くんエロい」と稲垣も加わって、いい話が予期せぬ方向へ流れる。普段の会話と変わらなさそうで微笑ましい。

ステージ上では、木村&香取VS草なぎ&稲垣&中居の構図になる。
木村の側にかけよって肩を抱いた香取は、“木村くんは俺が守る”みたいな表情。
「木村くんのアゴとかちょっとエロいよね。アゴから首筋にかけて」
止まらない草なぎに木村が「なんだよエラ呼吸」と応戦。
「なんだよ、月9バカ」。……なんだろうこの展開。どうしてこうなった。

その後、稲垣に飛び火したあとに、中居が「いいよなーみんな」と喋りはじめれば中居に向かって「あ、SMAPじゃない人がいる!」と香取。
あああ、そこらじゅうで口ゲンカがはじまる。

木村&香取VS草なぎ&中居&稲垣になったところで、踊れない稲垣と歌えない草なぎと自分を自虐的に例えた中居が、「木村さん、歌ありがとうございます。香取さん、可愛げありがとうございます」といえば、深々と頭を下げる3人。言い合いになったのも束の間。やっぱり仲がいい5人。

「内輪の話をするのはどうかと思うけど…」木村が切り出すと、中居が「ちょっと拓哉兄さん、しちゃいますかそれ(笑)」
香取は木村の背中にぴたりとくっついてニヤり。
「今日ね、あれなんですよ。森が見にきてくれてるんですよ」
SMAPの元メンバーで現在はオートレーサーの森くんが観にきていたことを明かした。

木村の言葉に会場からは悲鳴があがり、どこだ?と周囲を見回すファン。
森くんのことは言わないと思ってたと驚きを隠せない草なぎに、木村が「別に隠すことでも何でもないじゃん」。
会場から拍手が聞こえてくると、中居と稲垣は急に良いことを並べて香取&木村ペア側に移動。木村の背中にぴたりとくっついて舌を出す中居。子どもか!
結局、草なぎは1人取り残されてしまった。トークというよりはコントだ。

森くんが来ていているのも驚いたし、それもDVD収録の日でそのまま収録されているのは嬉しい。グループを離れてもずっと仲間。
「僕の友達は5人以外にいません」
後の「27時間テレビ」で披露された森の手紙に書かれていた言葉を思い出す。

ビジネス誌も注目するトップアイドル



この頃、「トップアイドル20年の軌跡」と題してSMAPを特集したのは意外にもビジネス誌「プレジデント」だった。

『「1000万人突破ありがとう!」香取慎吾の言葉に東京ドームが揺れた。2010年9月15日。SMAPは初ライブから20年目でコンサート動員数1000万人を突破した。単純計算すれば国民の10人に1人が観たことになる』
(プレジデント/2010年12月13日号)

「商品としたら一五年にわたり売れ行きナンバーワン……その秘密は何なのだろう」
商品に例えるところがプレジデントらしいけど、顧客の心を掴んで離さない秘訣は何なのか。当時で活動歴15年、それが現在も続くのはなぜか。

「変えていいところと変えてはいけないところを間違えない」
老舗経営者に聞いた長期経営の秘訣にSMAPを重ね、前代未聞の長期政権アイドルの極意だと伝えていた。

「We are SMAP! 2010 CONCERT」の公演は4時間に及んだ。まず、本番でステージに立ちパフォーマンスをし続けたSMAPがすごい。
映像でも、次は何をするのかが全く予想がつかず、気がつけば画面にかじりついて観ていた。しかも退屈な時間がほぼないという奇跡の4時間。それもエンドロールまで退屈させないとは、そう来ましたか。

「ライヴの構成の時点ではアルバムの曲は1曲もできてないんです。で、あそこまで持っていかなきゃならないので、もう必死ですよ(笑)」
(オリスタ/2010年12月20日)
このステージも香取が演出を担当している。インタビューで今回の出来栄えを聞かれると、「たぶん20%ぐらい」。準備期間はたったの3ヶ月、ライブ用の曲が完成したのはなんと本番10日前だという。時間をかければいいものができるとは限らない、としつつも演出家・香取の自己評価は厳しい。

演出を考えるにあたり、付き合いの長いファンのことをしっかり考えている香取。
『「これは80%がいいって言いそうだけど、こっちだったら20%しか支持してくれないかな。でも今回は敢えて冒険してみようか」とか、そういう風に考えることもあります』

「愛してます!」といつも言葉で伝えてくれる香取、言葉では言い表せないほどの愛が演出にも注がれている。
(柚月裕実)

【SMAPライブDVDレビュー企画】(毎週金曜更新)
SMAPの解散が報じられ、ジャニーズファンのライターとして何かできることはないかと、SMAPライブDVD全作レビューに挑戦することにしました。
これまでSMAPが見せてくれたステージを、改めて振り返ってみたいと思います。