今年の夏のドラマで私がチェックしていたなかには、いまひとつピリッとしないものが目立った。それは五輪中継の影響も大きい。民放のあるドラマは放送期間が、五輪に重ならないよう1カ月に短縮され、せっかくの設定が十分に生かし切れていない印象が残った。またNHKのあるドラマは、6月にスタートしたが、五輪を挟んでほぼ1カ月ものあいだ中断を余儀なくされている。おかげで見る気をそがれてしまったことは否めない。どんなに録画やネット配信での視聴が定着しても、毎週決まった時間に放送があるというのはやはり重要なことなのだなと、つくづく思ったものだ。

ミもフタもないことを言ってしまえば、連続ドラマというのは、観ているこちらとドラマのテンションが合致しないことには観続けられないものだと思う。視聴者のほうでいったんテンションが途切れると、たいていのばあい戻って来ることはないだろう。


前置きが長くなったが、この夏のドラマで、私がずっと観続けられたドラマはわずかに一作。それが欅坂46主演の「徳山大五郎を誰が殺したか?」(テレビ東京・土曜ドラマ24の枠で放送)である。

欅坂46のメンバーが「私立欅学園三年C組」のクラスメイトに扮するこのドラマは、ある朝、教室で担任の徳山大五郎(嶋田久作)が背中にナイフを刺されて死んでいるのを生徒が発見したところから始まった。はたしてこの遺体をどうするか、右往左往する生徒たち。そもそも大五郎はなぜ死んだのか。殺されたとすれば、犯人はクラスのなかにいるのではないか。生徒たちはしだいに疑心暗鬼になり、互いを疑い始めるのだった――。

それも今夜で最終回を迎える。7月16日のスタート以来、1週も休みはなし。また、ドラマも私もテンションが途切れなかったおかげで、途中で離脱することなく来られた。30分枠と短いせいもあるものの、毎回、エンドクレジットが流れるたびに「え、もう終わり!?」と思えるドラマはそうそうない。それだけドラマのテンションが高く、観ているこちらも引きこまれていたということだろう。

一体、このドラマが最終回までテンションを持続できたのはなぜだろうか。この記事では理由をいくつかあげながら考えてみたい。

理由その1:シチュエーションが教室に限定されているから


ドラマに出てくるのは教室か、せいぜい教室前の廊下に限定される。途中、大五郎を生徒たちがグラウンドに埋めにいく場面があったが、肝心のその現場は出てこなかった。教室に舞台を絞るからこそ、物語に緊張感が生まれるのだろう。

ロッカーに死体を隠すというのも、いかにも浅はかで、実際に何度もバレそうになり、そのたびに生徒たちがうろたえるのがいちいちおかしい。第1回からさっそく、授業中にロッカーのドアが開いて死体が丸見えになり、それを教師(相島一之)にバレないよう、生徒たちが紙切れやLINEでメッセージを回して、何とかドアが開いていることを知らせ、誰かに閉めさせようとする。その途中で畳み掛けるようにピンチが訪れるのが、シチュエーションコメディっぽくもあり、よくできている。

さらに付け加えるなら、場所だけでなく時間もかなり限定されている。劇中で時間が飛ぶとしてもせいぜい一晩ぐらい。基本的に一回分で経過する時間は、放送時間とほぼ変わらないのではないか。何しろ全12話にして、劇中の時間は1週間しか経っていないのだ。これも緊張感を持続させている要因であることは間違いない。

理由その2:欅坂46のメンバーの演技に見入ってしまうから


これまでテレビ東京で深夜に放送されてきたAKB48主演の「マジすか学園」シリーズでも、乃木坂46主演の「初森ベマーズ」でも、毎回冒頭に「このドラマは、学芸会の延長であり〜」といった断り書きが表示されたはずだが、本作ではそれが最初からなかった。

そもそもそういう言い訳がましいことをしなくても、欅坂のメンバーの演技は安心して見ていられる。主演格の平手友梨奈はもちろん、何より長濱ねるの存在感は圧倒的だ。劇中で彼女が扮するのは、長らく不登校だったのが事件直後に急にクラスに現われるというミステリアスな役どころ。それに持ち前の(?)ふんわりとした雰囲気が加わって、不思議な魅力を感じさせる。

ほかのメンバーも個性豊かだ。これだけ人数がいると埋没してしまうメンバーも出て来そうなものだが、そこをこのドラマでは、クラスのなかに波風を立てながら、それぞれのキャラを引き出しているのが巧い。

理由その3:出てくる大人がことごとく怪しいから


欅坂46の楽曲には、デビューシングル「サイレントマジョリティー」をはじめ大人への反抗を歌ったものが多い。そんな曲の世界観に合わせてか、このドラマでも、出てくる大人の大半が怪しく、ときにはあきらかな敵として生徒たちに攻撃を仕掛けてくる。

演じる俳優からして、徳山大五郎役の嶋田久作をはじめ、副担・神崎役の江口のりこ、参宮橋校長役の岩松了、それから用務員・橋部役の今野浩喜と、いかにもクセモノぞろい。なかでも橋部は、チョイ役かと思いきや、話が進むにつれて物語の重要な鍵を握っているらしいという気配が強まり、ついには学園の副理事長であることが判明する。副理事長が用務員とはどういうことか。昔の大映ドラマみたいなとんでもないラストが待ち受けていそうでドキドキする。

理由その4:謎が謎を呼ぶ展開だから


橋部の正体にしてもそうだが、このドラマには全編にわたって謎が散りばめられていた。なかには、クラスメイトの菅井友香を巻き込んだ裏口入学疑惑や、LINEに死んだはずの大五郎からメッセージがたびたび届くなど、思わせぶりに事件があいつぐのだが、いずれもあとになって大五郎が死んだ件とは無関係ということが判明する。おかげで最後の最後まで気が抜けない。まったく、つくり手の思うツボである。

理由その5:劇伴が妙にクセになるから


劇中でことあるごとに流れる欅坂によるスキャットが耳をついて離れない。この曲を含め劇伴を手がけたのは作曲家のスキャット後藤。テレビ東京のサイトでサウンドトラックCDも発売されていたので、つい注文してしまった。まったく、つくり手の思うツボである。

理由その6:死体役が嶋田久作だから


つくり手の思うツボということなら、やはりこれ以上のものはないだろう。嶋田久作に死体をやらせるなんて本当にずるい、ずるすぎるよ! ちなみに嶋田久作は今回、大五郎の兄で、郷里の淡路島から弟を心配して学園までやって来た大四郎も演じていた。乱暴者だった弟に対し気弱そうな兄と、両者をちゃんと演じ分けてみせたのはさすがである。

それにつけても、気になるのは大五郎の行く末である。ひょっとすると落語「らくだ」みたいにかんかんのうでも踊らせるのでは? とひそかに予想していたのだが、まさか文化祭のお化け屋敷で見世物にしようとは。最後の最後まで死体で遊んでしまおうという発想が最高だ。

最終回の舞台が文化祭とはいかにも学園ドラマっぽいけれども、肝心の犯人はあきらかになるのか否か。いずれにせよ、大五郎が見世物になる姿を想像すると、いまから楽しみでしかたがない。なお、待ちきれない人は、Amazonプライム・ビデオではすでに配信が始まっているので、そちらをどうぞ!
(近藤正高)

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