3、2、1……モノクロ映像には子どもが二人。大きな門が開くと吸い込まれるように中へと入っていく。どこまで続くのかわからない森。木の下には赤いバラとベネチアンマスクが置かれていてちょっと不気味な雰囲気が漂う。
木の上から子どもたちを見下ろすのは、マントを羽織ったタキシード仮面風の男性。ベネチアンマスクをつけていてもわかる、SMAPだ。


赤いチェック柄のスーツに黒ブチめがねをかけた5人


2008年9月24日からスタートした「SMAP 2008 super.modern.artistic.performance.tour」。DVD発売は2008年12月17日(2014年3月ブルーレイ盤発売)
2年ぶりとなるツアーのコンセプトは、モダンでアーティスティックなパフォーマンス…頭文字を並べるとSMAPになる。
森の中を進むと小さなステージが現れ、5人は操り人形のように歌いだす。
映像からステージへと切り替わってもなかなか顔を見せてくれないSMAP。黒いマントを頭までかぶってメインステージに登場。男女のダンサーに囲まれている。オープニング映像からホラー調の演出が続いたせいか、不安そうに見つめる小さな女の子の顔が見える。
5人は真上にフライング。したはずが……映像と連動して、想像もしない場所から登場した。顔が見えるまで6分。SMAPを待ちわびる気持ちが高まる絶妙な時間だ。
赤いチェック柄のスーツに黒ブチめがねをかけた5人。ワイヤーで吊られて上からゆっくりと降りてくる。無表情な姿は操り人形そのもの。メインステージに設置された大きなスロープの急斜面を、歩くようにしてゆっくりとステージに降りた。
マイクを受け取ってからめがねを外し、特効、イントロを経て、歌声が聞けるまで8分!焦らす焦らす。
最新作から順番に観てきているけれど、どのオープニングも新鮮で、毎回予想を超えた演出をよく考えるなぁと改めて思う。

一曲目は2007年12月リリースの『弾丸ファイター』。
シングルリリース時のインタビューで木村は、
「久々に踊る曲。でもキーが高い。ウチらは歌がうまくないからツラい(笑)」
(ザテレビジョン2008年2月号)

当時としては1年ぶりの新曲で、野球の五輪予選の応援歌として流れていた。爽やかで力強い曲を皮切りに、勢いのある楽曲が続く。
3曲目『BANG!BANG!バカンス』。歌詞のとおりに、木村を指差して歌う香取に向かって突進する木村。顔が近い。いつもステージ上でいちゃいちゃする二人。草なぎはすでに汗だく。花道を歩きながら歌い、曲の合間にはバク転をして見せた。

映像を挟んだら空気が一転。タキシードに着替えてダンスステージへ。
リミックスした『$10』、『青いイナズマ』と激しい曲もあれば、『らいおんハート』ではステッキを使い、ソロパートを交えながらじっくりと踊っていく。バラードの印象が強い曲もダンスナンバーに変える、マジックのようなステージ。一糸乱れぬダンスだけが上手さじゃない、5人の個性や息の合わせ方、雰囲気が重なって生まれる魅力。バラエティで活躍する姿しか知らない人にこそ観て欲しい。

「バカヤロー!拓哉、拓哉……拓哉……」
『White Message』の間奏で、中居と木村のツートップがじゃれている。中居を後ろから羽交い締めにする木村。止めろと、もがく中居。ステージ上に運ばれて来た銀色の大きな宝箱に押し込まれる中居。リーダー、ステージから姿を消す。「正広、おまえは貝になれ!」ここぞとばかりに箱を蹴ろうとする悪そうな慎吾ちゃん。「お前は貝にしてやる」草なぎも参戦。ぞんざいな扱いを受けるリーダー。中居が入った宝箱をなかなかのスピードで押しながら花道へ。稲垣は口数も少なく静かに箱を押している。曲の合間に突如始まったイリュージョン。SMAPのステージはぼんやりしてられない。

ライブは約8年前と、少し前の映像にも関わらず演出に古さを感じないところがすごい。全く同じライブをいま行っても十分楽しめるんじゃないかな。
メンバーの容姿もさほど変化がないところにもプロ意識を感じる。ただ、この時の中居は今よりもほっそりしている。2008年11月公開の映画『私は貝になりたい』で、役作りのために60kgから51kgまで絞ったそう。役柄上、坊主にしたこともあってか、深くかぶった帽子でいつもより顔が小さく見える。

『Dear WOMAN』はトロッコにのって会場をまわったり、そのままリフトアップして上階のファンにも手を振ったりと会場にまんべんなくファンサービス。時折マイクを外して手を振る中居くん。うっ歌は?
続く『Mermaid』では、トロッコに乗りながらカメラに向かって「あっちを撮って」と合図を出す香取。その先には、見学に来ていたHey! Say! JUMPの高木雄也、薮宏太、八乙女光、伊野尾慧、岡本圭人、ジャニーズJr.数名の姿があった。さりげなく後輩を思いやる香取。いつでもどこでも誰に対しても愛情を注ぐ慎吾ちゃん。
後輩たちはステージを観てどんなことを思っただろう。目指す先にSMAPがいるなんて、なんとも羨ましい環境だ。

当時としては異例の巨大スロープを設置する豪華なステージに、同じ会場にいるとは思えないほど、楽曲ごとに違う演出。タキシードからデニムのラフな衣装まで、なんでも着こなすメンバー。見どころがたくさんあって、3時間超の中で退屈する暇なんか与えないという意気込みを感じた。

ライブについてのインタビューで木村は、
「今回のライブは事務所やレコード会社が発信源じゃなくて、メンバーからやるべし!って立ち上がった。それがすごい心地よくて、リハーサルもすっごい楽しかった!」
(ザ・テレビジョン/2008年10月10日号)

メイキング映像で、リハーサル中の木村はカメラを向けられるとさらっと語った。
「どんなことに対しても全力じゃないといやだから」

2008年はSMAP結成20周年


2008年はSMAP結成20周年の年ということで、2007年末のインタビューでは、「5人でやりたいこと」を挙げていた。
中居「僕はロケに生きたい。この感じでロケに出たらどうなるのかなって。恥ずかしくて、顔赤くなっちゃうかも(笑)」
稲垣「僕も外に出たい。いつもスタジオで会うのとは違う顔が見えるかなって」
草なぎ「海外に生きたい。たとえば…ポルトガルとか。僕が思うにSMAPはヨーロッパが似合うんです」
香取「僕は5人でショートフィルムを撮りたい。新鋭のクリエーターとSMAPが強力タッグを組む!」
木村「ビジネスの香りがしないのがいいな。5人で漁に出る…はウソ。合コン!仕切りは吾郎でね(笑)」
(ザ・テレビジョン/2007年12月28日、2008年1月4日合併号)
後に番組で5人旅に出かけたり、新鋭のアーティストから楽曲提供を受けたり、相手が男性俳優だったけれど「フィーリングカップル5vs5」も実現した。この時に5人が挙げたことは意外と叶っているのかも。

結成20年「地に足をつけて進んできた」SMAPのリーダーが語る


「基本はMCに徹し、メンバーのいいところを引き出すのが僕の役目」
「僕なんてリーダーの器じゃないしグループをまとめた覚えもなければ、自分がまとめようと考えたこともない」
(ポポロ/2009年6月)

SMAPのリーダーは中居正広。番組では司会を担当しているせいか、言われてみれば場を仕切ることはあっても、表立ってリーダーシップを発揮する姿をあまり見た事がない。
よく語られているとおり、SMAPがデビュー当時は音楽番組の衰退期と厳しい環境にあり、先輩である光GENJIを越えるほどの人気もまだなかった。中居は、CDが売れなくてもライブで空席が目立ってもそれは仕方ないことだと当時を振り返っている。

「光GENJIじゃないんだからしかたないべ(苦笑)。それでも光GENJIと同じことをしていてはダメだとう思いは密かにありました」
先輩の背中を見つつ、先輩とは別の方向を探り、努力を続けた結果いまに至る。しかし、メンバーが集まってグループが目指す方向性について話し合った事は一度もないという。
「膝をつき合わせて話し合う柄じゃないし、僕らはそんないちゃいちゃしたグループじゃないから。面と向かって言わなくてもメンバーの考えてることはわかります」

番組でSMAPの過去映像を見る機会があった中居。
「不思議と昔の自分への恥ずかしさはなく、むしろコントなんかは基本的に今とやっていることに変わりはないから、がんばっているなぁという思いで見てました。きっと、地に足をつけて進んできたSMAPの活動だからこそ、当時の映像も堂々と見ていられるのでしょうね」
時期は違うけれど、木村がさらっと口にした「全力」と重なる部分がある。

「ポポロ」(2008年4月号)で『ナカイの人生の格言』を語った。
『女性とは、一生わからない存在である』
女性観はこの頃も健在。ブレないなぁ。
『運命とは天に任せるものである』
努力の人ならではの達観した言葉もあった。
最後はSMAPについて。
『SMAPとは、切っても切れない縁で結ばれた関係である』

(柚月裕実)

【SMAPライブDVDレビュー企画】(毎週金曜更新)
SMAPの解散が報じられ、ジャニーズファンのライターとして何かできることはないかと、SMAPライブDVD全作レビューに挑戦することにしました。
これまでSMAPが見せてくれたステージを、改めて振り返ってみたいと思います。