おとなはウソつきではないのです。(何回も)まちがいをするだけなのです


新たに登場したスタンド使い(?)ミキタカの能力名は「アースウィンド&ファイアー」。そして第六部に出てきた「隕石を敵めがけて落下させる」スタンド使いは「アースウィンド&ファイアー」。名前かぶってるよ! そんなわけで単行本では「ブラネットウェイブス」に修正されたのは、ジョジョファンの基礎知識の一つ。


おとなはウソつきではないのです。まちがいをするだけなのです……壮大な構成と緻密な計算のもとに作られている(荒木先生談)作品とはいえ、連載が長きに渡るとひずみやキズができてくるということ。

第一部のウィル・A・ツェペリさんが「結婚もしなかったし、家族も持たなかったが」と言ったのに、第二部で孫に当たるシーザーが登場したことで読者の抗議が殺到し、「おとなは……」の名言が生まれた経緯あり。大人になってから考えると、結婚もせず家族も持たなくても子作りはできるのに、言い訳しなかった荒木先生はスゴい。

そもそも、ツェペリさんの遺言前にも、若き日のスピードワゴンが「生まれてからずっと暗黒街で生きてきた」と言ってまもなく「世界各国を放浪してきた」ときに得たエスキモーの知識で凍った腕を治療していた。どっちだよ!

とまあ壮大な構想とともに、その場のノリあふれるライブ感もジョジョの美味しいところだ。第三部で「鏡の「中」の世界なんてありませんよ」と花京院に完全否定された数年後に、第五部のマン・イン・ザ・ミラーが鏡の世界をガッツリ使ってましたし。

吉良吉影様は(本性を)告りたい/


「新しいスタンド使いは、あの少年を射抜けば6人になる……」

息子・吉良吉影(川尻浩作)を守るスタンド使い作りに飛び回る写真のおやじ。「6人」というセリフが原作のまま、これで全スタンド使いノーカット確定! 漫画では第3部よりも長い第4部が3クール=全39話に収まりきるのか心配されていたが、少なくともキャラは全員が出そうだと安心された瞬間だ。

今回で第27話、いよいよ3クール目に突入。オープニングも一新し、ラスボスの吉良が主人公を差し置いて優遇され、妻しのぶもまるでヒロインのような扱い。主題歌のボーカルの一人はハセガワダイスケさん、『ガンダム Gのレコンギスタ』で「Gの閃光」を歌ってた人だ!

承太郎とスピードワゴン財団のエージェントが吉良の個人情報を受け渡すシーンは、アニメオリジナルの追加分。承太郎は長いコートを着たきりで季節感のないまま、杜王町にはサマーシーズンが到来。この街にはお楽しみがいっぱい、あいつにとってもきっと……。

(人は自分の心の底を他人に隠したまま生活している…しかし永遠に誰にも自分の本性を隠したまま一生を過ごせるものだろうか…)
(くそ…あの女にこの吉良吉影の本性を打ち明けてやりたい…この心の底を聞いてもらいたい…お前のその細い首をこの手で絞め殺してみたいってことをな…)

一人も死なない回なのに、吉良の圧縮された殺意が恐るべき不穏さ。異常に伸びている指の爪は、こんこんと湧き出す殺人衝動のかたち。吉良吉影は愛する平穏とは真逆の、殺さずにはいられない「性」にとらわれているのだ。

必死にホンモノの川尻浩作の筆跡を真似ようと練習する吉良。くそ、東方仗助……空条承太郎めと毒づいているのは、ただの逆恨みだ。平凡な家庭に溶け込もうと努力するラスボスの姿はギャグのようだが、「追う側」にとってはやっかい極まりない。すでに異変に勘づいた家族が手がかりとなるはずだが、妻は気づいた上で「恋」をしていた……。

お茶を運んできて「そろそろ寝ようかしら」とあからさまに誘ってるしのぶ。「この女に心を打ち明けろ。自分の本性を見せてやれ」と背後に立つ吉良は完全に「しのぶ、うしろうしろー」状態だが、危うくブレーキを掛けて服を引きちぎるに留める。「背中のボタンを外そうとしてくれたのね」と恋愛脳で好意的にカン違いするしのぶ、乙女かー!

ホラーとコントは紙一重。そのやり取りのすべてを覗いていた隠しカメラ……その「目」の持ち主は、おいおい明らかになる。

「宇宙人」の声は映画『デッドプール』の加瀬康之さん


さて、「吉良を追う側」である仗助&億泰サイド。麦畑がきれいになぎ倒された円形を見かけた億泰、「ひょっとして…これってよぉ…テリー・ファンク」と連載当時でも分かりにくかったボケをかます。違うよ、ドリー・ファンクだぜ!とボケを重ねられるのは、往年のプロレスファンぐらいだ。

そこに倒れていたのは、さっき「矢」に狙われた少年だった。昨日の夕方に気分が悪くなって気を失い、「地球時間」で13時間近く……と言われたことがツボにはまり、仗助たちは大爆笑。腹痛ぇー!と言うと正露丸を出され、さらにドッカンドッカンだ。

「私の星はマゼラン星雲にあります。でも滅亡してしまいました」

そのため地球が住みやすいところか調べに来たという声の主は、加瀬康之さん。『ジョジョの奇妙な冒険』のゲームでは第七部の大統領(どじゃあぁあん)を担当し、映画『デッドプール』で俺ちゃんと言ってた人気声優だ。今回のテンションは抑えめだが、プッツン演技のスペシャリストである。

差し出したティッシュを美味しそうに食われた当たりから、仗助達の見る目は「面白いやつ」から「やばいやつ」に変わっていく。しらけた空気に耐えかねて学校に向かってみれば、月曜朝の唯一の慰めだったアイスクリーム屋が閉まってる。しかし辛いものが苦手でアイスを舐めるのが好きな不良、億泰かわいいな!

すると、さも当たり前のようにカバンの中から取り出される2本のアイス。ひんやりと冷たい……何ものだてめぇ!と仗助達は面白がりモードから警戒態勢にシフト。

「私の名はヌ・ミキタカゾ・ンシと言います。年齢は216歳です。職業は宇宙船のパイロット。趣味は動物を飼うことです」
そんなミキタカを殴る気満々の億泰と、押しとどめる仗助。光線銃とかウルトラハイパー無重力装置とか入ってないの? 持ってますが宇宙船に置いてきました。宇宙人の血は確か緑色だぜ。君たち、疑ってるのですか……冷え冷えしたムードに耐える、これもまた心理戦(かもしれない)。

やたら殴りたがる億泰(おかげで音石明を止められたんだが)が手を出す寸前、鳴り響いてきた消防車のサイレン。「この音は嫌なんだ!アレルギーなんだよ!!」とミキタカがじんま疹まで出してるのは、どう見ても演技じゃない。

「私は何にでもなれる能力を持っている。この音の中では頭が割れそうだ!」

そう絶叫したミキタカはスライムのように変形し、仗助の足をすっぽり包み込んでスニーカーになった。さあ音の聞こえないどこかへジャンプだ。

「君の力と僕の力で速さも跳躍力も2倍になってますからね」

いや、力が2倍になっても人は空を飛べないよ! まぁ先週、ジャンケンで空を飛んでたスタンド使いがいたので可能かもしれませんね。

マンガ家に土下座してチンチロリンをお願いする主人公


「おめー、これが見えないのか」

クレイジーダイヤモンドに拳を突きつけられても、キョトンとしているミキタカ。仗助は本当に見えていないと判断してるが、そこは斜め上の反応しかしない「宇宙人」だ。スタンド使いか否かは、連載当時から10数年後の現在も分かっていない。

ともあれ連れ出してくれたことに感謝して、お礼をしたいというミキタカ。その言葉に「ほんとにしてくれるの? ぜひ!してちょうだい」と乗ってきた仗助は、いかにも「悪だくみしてます」という表情だ。主人公が悪党の顔をする第四部、最高である。

「俺さぁ…宝くじでちょっと小遣い稼いだんだけどさ。お袋に見つかってその口座封鎖されちまってよぉ」

原作では億泰に話してた懐事情をミキタカに打ち明ける仗助。いち高校生が濡れ手に粟の166万円を持ってるのはおかしかったが、サマーシーズンに小遣いがないキツさは分かる。

ミキタカは複雑な機械や自分以上のパワーの出る物以外には変身できる。つまり、サイコロだったら問題はない。この主人公、天下の『週刊少年ジャンプ』でチンチロリンを始めやがったんですよ!

お小遣いをイカサマでむしり取る相手は、互いに嫌い合ってる(前回を参照)岸辺露伴だった。露伴先生、先週もジャンケンで、2週連続でギャンブル回ですよ。前回イカサマで勝ったマンガ家が今度はイカサマを仕掛けられ、因果も巡ってる。

「参ったなぁ…露伴先生に隠し事はできませんや…お願いです!この仗助と「チンチロリン」してやってください!」

マンガ家に土下座してチンチロリンをお願いする仗助。しつこいが、この男は「少年マンガの主人公」である。

仗助の全財産は3万円。高校生のひと夏の小遣いにしちゃ十分とも思えるが、増やすかスッカラカンになるかスリルに賭けてみる。それが青春! いけしゃあしゃあと思ってもしないことをいう悪党(主人公)だ。

「ハッキリ言おう。僕は以前から君の事が嫌いだ。そんな僕がなぜ君とチンチロリンなんかやらなくちゃあいけないんだい?」

露伴ちゃん、ハッキリ言い過ぎ! だから断るかといえば、「ゲームは嫌いじゃないし面白そうだ」と乗ってきた。うん、ゲームが好きなことは先週の空中ジャンケンでよく分かってる。それ以上に、「君から3万円を取り上げるのが面白そうだ」と意地悪な動機が、仗助の「全財産」という撒き餌にまんまと引っかかっている感じだ。

ただし、仗助の持ってきたサイコロは使わない。何か気が進まないってだけさ……と露伴邸にあったサイコロを使うことに。イカサマ終了、どころか仗助の思うツボ。疑り深い露伴先生がそういうのを見越して、すでに変身した「宇宙人」を家の中に忍び込ませていたのだ。本当に悪知恵がよく回るなあ、さすが柱の男達を出し抜いたジョセフの息子だ!

関西のヤクザの間でイカサマをした者を見つけたらそいつの「目玉の中に」サイコロ2個を埋め込んで……といった、原作での露伴先生のうんちく語りはカット。指で弾かれたサイコロ(宇宙人)が痛テッ!というのを仗助が軍歌(行って~来るぞと勇ましく)でごまかすくだりもなくなった。まぁ尺が短いですしね。

チップは1枚千円、3万円=全30枚だ。仗助は手始めに2枚賭けて「123は2倍払うことになるから123は絶対気を付けなくっちゃあね〜。123は出ちゃ駄目なんすよね〜」と(ミキタカに)“確認”してサイコロを振ると、いきなり6のゾロ目、通常オーメン! 仗助は露伴から賭け金5倍(1万円)をもらえる!

第四部キャラの中では頭が切れるツートップの仗助VS露伴先生。2人の頭脳戦になるかと思いきや、程度を知らない「宇宙人」のために、いきなり一触即発の修羅場に……。

来週は「ハイウェイ・スター」回。たしかに原作ではチンチロリンの翌日の話だが、アニメの構成では同じ話の中で繋げてきた!  歴代ジョジョの中でも「ベスト3入りする名言」が出て来る話でもあるので、Twitterの実況をスタンバっておきたいところだ。
(多根清史)