Web無料漫画配信サービスジャンプ+にて「ファイアパンチ」第24話が配信されている。過去最もテンションの高い回だったが、一言でいうなら“らしい”回でもあった。


ダイダ戦決着!


ダイダの攻撃に耐え抜き、さらにはベヘムドルグ兵の一斉射撃を受けても決して諦めないアグニ。燃えながら、そして大量に血を流しながら立ちあがる姿は、解放された奴隷達の眼に神様のように。ベヘムドルグ兵からは悪魔のように映っていた。

アグニは悪への怒りが溢れ出し、自分の思いを叫び立ち上がる。アグニの右腕のパワードアームには、一度切りの必殺技が隠されていた。音声認証である言葉を言うと、右腕は消えない炎で燃え上がる仕組みになっていた。自身が決めたその合言葉は「ファイアパンチ」。無敵に思われたダイダのパワードスーツは砕け散り、見事強敵との勝負に決着をつけた。

奴隷とベヘムドルグ兵の対比あり、アグニの珍しい感情の高ぶりあり、そして最大の強敵ダイダを倒し、さらにはタイトル回収の必殺技「ファイアパンチ」まで飛び出した。今話は、過去最高峰の盛り上がりを見せた回となった。

不便過ぎる主人公


例えば、「ワンピース」の主人公ルフィは、遠くの敵を攻撃出来るし、砲弾を跳ね返せる。反動で遠くまで飛んでいく事だって出来る。ゴム人間という能力は、尾田栄一郎先生のアイデア次第で何でも出来る主人公として最高に便利な設定と言えるだろう。

一方、「ファイアパンチ」の主人公アグニが持っている能力は再生能力と朽ちるまで消えない炎。この二つの能力のせいで、仲間と触れ合う事も出来ない。物に触ることも出来ない。敵を殺さずに倒すことも出来ない。漫画史上こんなに不便な能力を持った主人公はかなり稀と言える。作者である藤本タツキ先生は、この不便さを利用してこのストーリーに悲しみを添えている。

神と崇められるまでの大活躍を見せたアグニだったが、今回もその不便さが付き纏ってしまう。やっとの思いで倒したダイダのパワードスーツは、粉砕されて消えない炎を纏いながら、ベヘムドルグ兵と助けたはずの奴隷達に降り注いでしまったのだ。

もちろんその破片を浴びたベヘムドルグ兵は死んでしまうだろう。奴隷達も死んでしまう。その上、現在進行形で街は燃え続け、アグニのせいで人々は死に続けている。クライマックスかと思ってしまうほどに盛り上がった最高にカッコいい回でさえ、悲しみは生まれ続けているのだ。

純粋な気持ちで悪をくじいて善人を助けたいだけなのに、アグニが頑張れば頑張るほど人は死んでしまう。身体が燃えているため、生きているだけで辛い。しかし、最愛の妹との約束は生き続けること。困っている人を助けたいが、頑張ると人を死なせてしまう。

なんだこの主人公、八方塞がり過ぎる。この能力、不便過ぎる。やりたい事、能力、性格、全ての相性が悪過ぎる。ハッピーエンドになりようがない。過去24話ずっと不幸だ。

まだまだストーリーは続いていく「ファイアパンチ」。完璧なハッピーエンドは無理かもしれないが、藤本タツキ先生には、何とかして今よりアグニを幸せにしてあげて欲しい。
(沢野奈津夫)