SNSが普及して、タイムラインから飛び込んでくる情報だけであふれんばかりの最近。「お気に入りのブログを巡回する」という習慣をもつ人も以前よりは減った気がする。そんななかで、いま読んでおきたいブログやweb連載を紹介したい。今回は、いずれもお笑い芸人の意外な一面が見られたり、素顔が垣間見られるものを選んでみた。


静謐な文章に酔う。柳原可奈子のブログ


冷徹な観察眼で切り取った巷のさまざまな女性たちを演じることに長ける柳原可奈子。柳原のブログ「泳ぐジッポとルードボーイ」はなんと2004年、彼女が18歳のときから淡々と更新され続けている。ネタに登場するような絶妙なあるあるが描写されることもあれば、素の彼女が見えるような散文がアップされることも。どれもしんと静かなトーンで、どんどん読み進めたくなる美しい文章だ。素の思いが綴られたエントリの最後に「うふふ、違うか」と照れ隠しのように付け足してみたりするのもかわいらしい。

圧倒的な立ち喰いそば愛。三拍子高倉のコラム&ブログ


「THE MANZAI2014」ファイナリストとしても知られる漫才師、三拍子の高倉陵。彼は立ち喰いそばに造詣が深く、自身も立ち喰いそば屋でアルバイトをしていたこともあほど。「しらべぇ」に連載中のコラムは都内を中心に、ときには伊豆や水戸の店までが紹介されている。このコラムの充実ぶりもさることながら、ブログ「本づくり」では、おそらくはこの連載のきっかけとなったであろうそばカテゴリの記事がなんと「vol.187」まで更新されている。ちょっとした立ち喰いそば辞典だ。

すぐれたレビュアーがここに。平井"ファラオ"光(馬鹿よ貴方は)のブログ


2016年に新たな発信の場としてTwitterでもinstagramでもなくブログをはじめた馬鹿よ貴方はの平井"ファラオ"光(「日記」)。投稿された記事の大半がなんとCDレビューという異色ぶり。その中身も、ニューエイジ系のオムニバス『旅 古都十景』にはじまり、ローリングストーンズ、レッドツェッペリンからB’z松本孝弘のソロ作品に至るまで、多彩なCDが紹介されている。しかも、その文章がとにかく巧み。たとえば「Hayley Westenra/Hayley Westenra」のエントリでは「クラシカル・クロスオーバー」という音楽のジャンルの説明から入り、ヘイリー・ウェステンラの生い立ちを描き、最後は彼女の声を「聴く宝石」と絶賛。どこかの音楽誌にでも連載をもてば確実に原稿料が発生するであろう筆致。また、時折アップされる美術系のエントリにもうならされてしまう。彼の興味は底知れない。

超実用的コピーライター講座。ザ・フライ今野和人の連載


おぎやはぎ、アンジャッシュらを擁する人力舎の若手トリオ芸人、ザ・フライ。決して有名とは言えない彼らだが、メンバーの一人、今野和人は今年、50年以上の歴史をもつコピーライターの登竜門・宣伝会議賞のグランプリを獲得した。それをきっかけに、宣伝会議のwebメディア、「Adver Times」にコラム「これから『仕事のない芸人』が半年間コピーの勉強をします」を連載している。コピーライター養成講座を受講しレポートするもので、「良いコピーとは何か」「どうしたあらボディコピーがうまく書けるようになるのか」など、がっつり実用に寄った内容。簡潔でわかりやすい文章で、表現に携わる人間にとってためになることが詰まっている。
ちなみに相方のひとり、井村俊哉は株式投資で生計を立てており、若手芸人でありながら月の最高利益が1600万を超えるらしい。

素の芸人の言葉と表情。山脇唯の連載


最後は、芸人の素顔が見える連載を紹介したい。女優・山脇唯が先日スタートさせた対談連載「2 SEE MORE」。初回のゲストは山脇とコントライブ「すいているのに相席」シリーズで親交のあるバッファロー吾郎A。いま、ほとんどのインタビューや対談は告知ありきで、その告知すべき作品に関する話ばかりが提供される状況だ。そんな中で、この対談はほんとうに純粋な雑談に終始していて、なんとも心地よい。そしてこの雑談こそが、はからずもゲストのスタンスを照らし出しているようでもある。また、気鋭の写真家、PANORAMA FAMILYによる写真が味わい深い。ヨーロッパ企画時代から今に至るまで、芸人との共演が少なくない彼女のこと、今後の対談相手にも期待がもてる。

一見、短文でのやり取りが主流になったように思えるいまも、読み応えのある文章はweb上にあふれている。

(釣木文恵)?