パンチパーマにサングラス、ヒョウ柄の派手な衣装で仁王立ち。ペンとアップルとパイナップルを「ウンッ」と合体する、謎のシンガーソングライターピコ太郎(千葉県出身)

8月25日に公開した「ペンパイナッポーアッポーペン」(以下PPAP)は再生回数4000万回を超え、今も拡散し続けている。この突然の大ヒットを前に、どうしても動向が気になるグループがいる。オリエンタルラジオ率いるRADIO FISHだ。


1ヶ月で爆発したピコ太郎


PPAPは公開後じわじわと人気が伸び、ジャスティン・ビーバーがツイートしたことで爆発的に拡散した。その中毒性の高さはBBCやCNNにも取り上げられたほど。10月7日にはPPAPを含む4曲を世界134カ国で配信し、YouTube Music Global Top 100(9月30日〜10月6日付)では日本人初のトップを獲得。YoutubeやTwitterで「PPAP」を検索すると、様々な言語でPPAPを踊る動画がヒットする。本物のペンやリンゴでPPAPを作る動画まで出ている。

このピコ太郎を「プロデュース」しているのが、ピコ太郎と瓜二つの古坂大魔王だ。かつて結成していたお笑いトリオ(のちにコンビ)である底ぬけAIR-LINEでは「あてぶり漫談」など音を使ったネタを披露していた。ピコ太郎の元になったのも、15年前の『爆笑オンエアバル 第1回チャンピオン大会』で披露した「テクノ体操」だという(ニッポン放送『土田晃之 日曜のへそ』(10月2日放送)より)。

15年前の「テクノ体操」を現代のSNS向けに最適化したのが「PPAP」というわけだ。インパクト重視の見た目、簡単な英単語、1分程度という短さ、真似しやすい振り付け、切り抜きやすい白バック。PPAPはSNSでの拡散を前提に構成されている。キャリアの長さだけでなく、トレンドも押さえたネタ作りができるのが古坂……いや、ピコ太郎の強みだ。

1年かけて積み上げるRADIO FISH


ピコ太郎が登場する前、「2016年に歌がヒットした芸人」といえばRADIO FISHだった。まさか自分たち以外の芸人がリズムネタで世界的にヒットするとは思わなかっただろう。この1ヶ月で急激にヒットしたピコ太郎と対象的に、RADIO FISHは長期間にわたり一歩一歩戦略的に事を進めてきたのだ。

「PERFECT HUMAN」をテレビで初めて披露したのは昨年12月の『爆笑問題の検索ちゃんネタ祭り』。その後、今年2月の『ENGEIグランドスラム』をきっかけに大ブレイクする。当時から「紅白歌合戦を目指す」と言っていたが、ほとんどの人が本気にしていなかった。年頭のブレイクは年末まで持たないとされていたからだ。昨年の「ラッスンゴレライ」(8.6秒バズーカー)を思い出す人も多かったはず。

しかし、RADIO FISHはテレビ出演やライブ、新曲発表を絶やさなかった。といっても闇雲に露出するのではなく、長期戦を前提に出演数を絞っていた。月ごとに主な出来事をまとめるとこうなる。

2月:『ENGEIグランドスラム』で「PERFECT HUMAN」披露
3月:『ミュージックステーション』初出演。『FNSうたの春祭り』「東京ガールズコレクション2016」ゲスト出演
4月:『笑点』出演。公式MV発表
5月:『金曜ロンドンハーツ』『エンタの神様』出演。アルバム「PERFECT HUMAN」発売。LINEスタンプ発売
6月:『うたコン』『ネプローラの爆笑まとめ』出演。10週連続音楽配信開始。
7月:『MUSICDAY』『音楽の日』『うたの夏まつり』出演。新曲「GOLDEN TOWER」をMステで披露
8月:「SUMMER SONIC」出演。赤坂BLITZで単独ライブ。2ndアルバム制作発表
9月:「WONDERLAND」が『カミワザワンダ』主題歌に。『ENGEIグランドスラム』で新曲「ULTRA TIGER」披露
10月:2ndアルバム「WORLD IS MINE」発売

テレビ出演は基本的に1週間に1番組程度にし、同じ「PERFECT HUMAN」でも番組ごとに演出を変えた(中田が神輿に担がれる、肖像画が降りてくるなど)。5月のアルバム発売まで「PERFECT HUMAN」1本で繋いだあとは曲数を増やしていき、夏には音楽番組と夏フェスに精力的に出演。10月には早くも2ndアルバムを発表した。

話題を途切れさせず、1年を通して人々の記憶から「RADIO FISH」の名が消えないようにする。緻密な戦略を立て、スケジュールを引き、ようやく秋までやってきた。紅白歌合戦も見えてきた。そこにピコ太郎が急上昇。筆者がオリラジだったら「そりゃ無いっすよ先輩」とボヤくと思う。

紅白歌合戦での共演も見たい


こうなると気になるのが今後の動向だ。RADIO FISHは2ndアルバム発売後の計画を年末まで立てているだろうし、ピコ太郎は自身のYouTubeチャンネルで早くも次の動画をアップしている。ピコ太郎がRADIO FISHを「上書き」してしまう可能性もある。

ただ、「PERFECT HUMAN」や「ULTRA TIGER」などの派手なパフォーマンスは、ピコ太郎よりも紅白の大舞台に映えるだろう。RADIO FISHがパフォーマンスに磨きをかけているのは理由がある。そもそもオリエンタルラジオが歌を始めたきっかけはゴールデンボンバーなのだ。

ゴールデンボンバーは音楽番組にお笑いを持ち込んで成功した、ならばお笑い番組に音楽を持ち込もう、という発想でRADIO FISHは始動している(「ORIENTAL RADIO SPECIAL LIVE」2016年2月27日より)。RADIO FISHがSNSのバズに頼らず、ステージを主戦場にしているのもゴールデンボンバーを手本としているからだ。『女々しくて』だけで4年連続紅白歌合戦に出場しているゴールデンボンバーの存在は、RADIO FISHに大きな勇気を与えているはず。

ここから先は想像だ。

白組初出場のRADIO FISH。いよいよ次の出番だが、中田だけいない。そこに白組司会の古舘伊知郎が「この人が応援に駆けつけてくれました!」とピコ太郎を呼び込む。みんなでPPAPをやろうという流れになり、全員で「I have a pen〜 I have a apple〜」と始めるが、突然舞台上の巨大モニターにサングラス姿の中田が現れ、決めの「ペンパイナッポーアッポーペン」を言ってしまう。悔しがるピコ太郎をよそに「PERFECT HUMAN」のイントロが流れ……。

PERFECT HUMAN中田敦彦は、ピコ太郎の登場すらも取り込んでしまいそうな気がするのだ。

(井上マサキ)