ああ、危ない弁護士が多すぎる!

ファクタ2009年12月30日(水)08:00

カネに困ったセンセイや能力不足のセンセイに用心しないと、ひどい目に遭うご時世。

本誌はこれまで弁護士が増えすぎ「危ないセンセイ」が急増している現状を報じてきた。弁護士の品位を失わせる非行があったなどとして懲戒処分を受け、日本弁護士連合会(日弁連)が2009年2〜11月に公告した弁護士57人の処分理由を見ると、これが弁護士のやることかと呆れるばかりだ。カネに困ったセンセイや能力不足のセンセイに用心しないと、ひどい目に遭うことになる。

懲戒処分は重いほうから除名(弁護士資格喪失)、退会命令(弁護士活動できず)、2年以内の業務停止、戒告の4種類があり、利害関係者にかかわらず、誰でも請求できる。

日弁連などによると、57人の内訳は退会命令4人、業務停止24人、戒告30人(業務停止処分と戒告処分をともに受けた人が1人)。このうち逮捕された者が5人いる。

弁護士の非行に対する処分の軽重は論議のあるところであり、その点をよく、ご覧いただきたい。

過払い金返還請求に群がる

(1)マンション明け渡し交渉で、依頼者に十分な説明をしないまま、家主から立ち退き料4500万円を受け取り、報酬750万円を勝手に差し引いた→業務停止2カ月(東京弁護士会)

(2)建物明け渡しは難しいのに、依頼者には可能であるかのように伝え、費用として80万円を受け取り、虚偽の説明などをした→業務停止2年(金沢弁護士会)

(3)仮差し押さえの保証金300万円を着服したほか、別の保証金5千万円を流用するなどした→業務停止10カ月(東京弁護士会)

(4)44カ月にわたって所属弁護士会や日弁連の会費計約169万円を支払わなかった→退会命令(第二東京弁護士会)

(5)事務職員の女性に時間外賃金約300万円を支払わなかったうえ、頭を叩くなどした→業務停止2カ月(愛知県弁護士会)

(6)不動産登記をめぐる訴訟を受任し、移転登記を受けた不動産を報酬として譲り受け、依頼者に13年近く清算金を払わなかった→沖縄弁護士会が業務停止3カ月にしたが、依頼者が「軽すぎる」と申し立て、日弁連が業務停止1年に処した。

いくつか詳細を説明する。まず(2)は山口民雄元弁護士のケース。同氏は処分後に弁護士を辞めたが、破産管財人を務めていた財団の口座から72万円を着服したとされ、さらに、依頼者に回収するはずのカネが着服されて事件になっているよう装うため、東京地検特捜部の報告書を偽造するなどとして今年10月に逮捕され、業務上横領と有印公文書偽造罪などで起訴された。山口元弁護士はまだ39歳。「生活費や借金の返済に困っていた」と供述しているという。

(3)は佐竹修三元弁護士のケース。同氏は、この処分の後、警視庁の捜索を受けた財団法人に「国会議員や警察庁幹部、検察関係者に金を贈る」と持ちかけ、2200万円を受け取ったとして除名処分を受けた(未公告)。

さらに、武富士元会長(故人)の邸宅を所有する関連会社の代理人を名乗って、三菱地所との間で邸宅の売買契約を結び、手付金として額面約1億5千万円の小切手をだまし取ったとして、11月末には、詐欺容疑などで警視庁に逮捕されている。

(4)の弁護士会費を払わなかった元弁護士について、同じ弁護士会の弁護士は「処分当時34歳で、会費の請求書が届かないように事務所を移転していた。仕事が少なく困っていたのかもしれない」と話す。

1998年に約1万7千人だった弁護士は、一連の司法制度改革で司法試験合格者が大量に増えたことから、08年には約2万7千人になった。民事訴訟の件数が増えず、仕事の奪い合いになる中で、多重債務者の債務整理や消費者金融への過払い金返還請求は容易に報酬が稼げるため、食らいつく弁護士が多く、処分されるケースが相次いでいる。

(7)千件以上の債務整理を受任して処理を事務職員に任せ、世界一周クルーズに出かけた→業務停止1年6カ月(東京弁護士会)

(8)06年以降、弁護士でもない事務長に多重債務の整理を任せ、報酬を分け合うなどした→退会命令(長崎県弁護士会)

債務整理や過払い金をめぐる処分は8人。高齢者が多く、弁護士でない者と組んだ「非弁護士提携」が多い。カネが原因の処分は、この8人を含め25人にのぼる。

次は、弁護士としての能力に問題があるとみられるケース。

(9)賠償請求訴訟を受任し、着手金を受け取ったのに6年間提訴せず、放置したうえ、問い合わせた依頼者に「提訴した」とウソをついた。このほかにも放置した訴訟や終了後に清算しなかった訴訟などがある→退会命令(鹿児島県弁護士会)

(10)民事訴訟の依頼を受けたが提訴せず、依頼者には偽造した相手方の答弁書などを見せた→業務停止2カ月(広島弁護士会)

(11)即時抗告申立書に印紙を貼り忘れ、裁判所から指摘されても補正せず、却下された→戒告(第一東京弁護士会)

(12)上告理由書を提出しなかったため却下され、依頼者に虚偽の説明を続けるなどした→業務停止10カ月(群馬弁護士会)

(13)交通事故の賠償請求を受任しながら、診療費の明細など関係資料を紛失し、約7年半も放置したほか、3億5千万円の土地売買では、権利者の調査を怠り、依頼者に重大な損失を与えた→業務停止2年(東京弁護士会)

訴訟放置など能力に問題があるとみられる処分者は16人にのぼる。なかには、刑事事件で弁護人を務めた際、被告人が起訴事実を争っているのにそれを認めたり、検察側の証拠にすべて同意したりしたケース(京都弁護士会、戒告)もあった。

怖い「やりすぎ弁護士」

一方で、「自分は正しい」と独善に陥る、やりすぎた弁護士もいる。

(14)ストーカー被害の相談内容を無断で自分のブログに掲載し「本当の被害者は男性と言ったほうがよさそう」と相談者を中傷した→業務停止1カ月(東京弁護士会)

(15)セクハラ訴訟の企業側代理人を務めた際、被害者について「美人局による恐喝」などと主張し、被害者やその親族、友人の名誉を棄損する発言を繰り返した→戒告(第二東京弁護士会)

(16)強要事件で起訴された被告人から依頼され、別件の業務上横領のもみ消しや証拠隠滅のための口裏合わせの指示を関係者に伝えた→業務停止3カ月(大阪弁護士会)

(17)企業の内部通報制度の窓口担当を務めた際、通報者に「実名で通報したほうが不正を訴える思いが伝わる」と言い、企業側に実名を通知→戒告(第二東京弁護士会)

こうした「やりすぎ」の処分者は、利害関係者双方の代理人となった(双方代理)3人を含め、13人。

このほか、電車内で下半身を露出し、逮捕された弁護士→業務停止1カ月(横浜弁護士会)や、ゴルフ場で飲酒後、車で人身事故を起こし、逮捕された元日弁連副会長→業務停止4カ月(群馬弁護士会)もいた。

まだ処分されていないが、加藤恭嗣・札幌弁護士会副会長(辞任)は覚醒剤取締法違反(使用など)の疑いで、元大阪府議の小川真澄弁護士は約2億5千万円を脱税したなどとして、それぞれ逮捕、起訴されている。小川弁護士は大阪地検の強制捜査直前に一時海外に逃げた。

ある検事は「ひどい弁護士が多すぎる。懲戒処分だけでなく、刑事事件として立件していく必要がある」と嘆く。弁護士が増えすぎ、そのレベルもモラルもピンからキリになった。このうえ、毎年2千人もの弁護士が誕生する。依頼するときはよく調べないと後悔することになる。

(月刊『FACTA』2010年1月号、12月20日発行)

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