将来のためにお金を増やしたい……でも、資産形成って何をすればいいの? 情報過多の現代、悩んでいる人も多いですよね。

そんな現代を生きる私たちにヒントを与えてくれるのが、話題の書籍。FPやキャリアコンサルタントとして活躍中の鈴木さや子氏が、資産形成の考え方やコツを100個紹介しています。

本記事では、その一部を特別に公開。投資や保険、儲かりそうな話に潜む落とし穴を徹底解説します。(全3回)

※本稿は鈴木さや子著『資産形成の超正解100』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。

ワンルーム投資に注意する

ワンルームの不動産投資に要注意

「家賃収入を得て老後に備えよう」などとうたわれた無料セミナーに行ったことをきっかけに始める人もいるワンルームの不動産投資。会社員や単身の人などから、副業として興味を持っているがどう思うかと、私も相談を受けたことがあります。

セミナーですすめられるワンルーム投資では、少しの頭金で投資用ローンを組み、入居者募集も管理も業者に任せることが多いので、誰でも手軽にできそうと感じられるかもしれません。しかし不動産投資はそんなに甘いものではありません。大きなリスクを抱えることを理解せずに安易に契約する人もいるため、注意が必要です。業者から「節税」「老後の年金代わり」などといわれる物件は要注意です。リターンが小さい、つまり割高な物件を買わせるときの決まり文句だからです。

★不動産投資に詳しい中小企業診断士の桑岡伸治氏によると、「投資回収に30年以上もかかるような物件に投資するメリットはない、他にもっといい物件はあるから、根気よく探すことにカを注ぐべき」とのこと。じっくり探したいものですね。

 
 

ワンルーム投資を検討したらするべきこと

会社員が副業として始めても、不動産投資をすることは経営者になることを意味します。もしワンルーム投資を検討するなら、業者任せにせずに自分で必ずするべきことがあります。

・かかる経費、家賃収入の見通しをチェックし、実質的な利回りを自分で計算する
・5年後に売却した場合、どのくらいで売れるか(手元にいくら入るか)調べる
・資金計画書、 キャッシュフロー表を自分で作る
・物件価格の相場を調べる
・キャリア・ライフプランを実現できるか考える
・家族に相談する

最悪の状況をも想定して、キャッシュフローを自分で試算し、自分が今後送りたい人生を実現できるプランかどうか、冷静に見極めることが大切です。

マイホームを買うときも資産価値を考える

不動産投資ではないですが、マイホームも立派な資産。購入検討の際、不動産投資と同様、資産価値がいかに落ちないかという視点が重要です。

住み替えしたくなったとき、高く売る、または貸すことができる物件がいいですよね。資産価値が落ちにくい駅近、利便性が高いエリアが◎。住む間もきれいに保つ意識を。新築物件は、買った瞬間に3割前後価値が落ちるといわれます。頭金なしで住宅ローンを組むのは債務超過※1の原因となりますので、要注意です。

※1 債務超過:借金の金額が資産の額を上回っている状態のこと

 

暗号資産を買うなら失う覚悟で

暗号資産はデータのみでやり取りするお金

暗号資産とは、ビットコインなどの仮想通貨のこと。ビットコインだけでなく、いまや数千種類以上のさまざまな通貨が世界中にあり、昨今、資産形成の手段として暗号資産に興味を持つ人が増えています。

最初の暗号資産であるビットコインが初めて取引されたのは2010年のことでした。このときはピザ2枚を1万BTC※2で交換した(1BTC=0.0025ドル相当)といわれています。2022年11月現在、1BTC=l万 6,600ドルですので、なんと600万倍以上に価値が上がりました。

暗号資産は円やドルなどと違って紙幣などの実体はなく、データのみでやり取りするお金です。電子マネーと似ていますが、あくまで円がデータに形を変えただけの電子マネーとは異なり、暗号資産は、それ自体が「国など特定のどこかにコントロールされないお金」であり、日々の相場も変動しています。

世界中の誰にでも、低コストかつ短時間で送金できる点がメリットです。
取引所や販売所を通せば、別の暗号資産や円など法定通貨と交換でき、対応している店ならば、ビットコインを使ってモノを買うこともできます。ただ、取得時よりも高く売れれば所得税(雑所得)がかかりますし、相続すれば相続税の対象となります。

★ビットコイン以外の暗号資産のことを「アルトコイン」と呼びます。

※2 BTC:ビットコインの通貨単位のこと。

暗号資産での資産形成はNG

暗号資産は、価値の変動が激しく不安定なので、資産形成に向いているとは全く思いません。

たとえば2021年11月に1BTC=6万9000ドルの価値があったビットコインは、たった半年後には2万6000ドル台と半値以下に下落。過去にはたった1日で3割以上下落することもありました。

ちなみに私は、2017年前半に勉強がてら、失う覚悟でビットコインを3万円程度買いました。たまたま10倍以上にふくらんだため、大型家電量販店で、家電を購入しました。レジで並んでいる間もスマホ上のBTC価格が上下するため、ドキドキしたのを覚えています。決済した分は、雑所得として納税もしました。私自身は、価値の上下に耐えられないと感じたので、買い増しなどはしていません。

株式投資にも変動はありますが、変動に上限下限がある株式と異なり、暗号資産には限度がありません。また、その原因が株式よりわかりづらいのが難点です。

企業の活動に伴って成長する株式と違い、投機家の思惑で価値が決まる暗号資産そのものには、成長性はないといえるのです。

もちろん、将来性が全くないとはいいません。スマホが登場してからあっという間に普及したように、もしかしたら暗号資産が法定通貨のように流通する日が来ないとは限りません。そうした日を楽しみにしている人や、 どうしても法定通貨への不安があり、暗号資産を持っておきたい人は、全額失う覚悟を持ち、少額資金で始めるといいでしょう。

SNSなどでは、暗号資産による資産形成を推奨している人も成功している人も多くいますが、ほんの一握りです。

手っ取り早く資産形成できる手段なんてありません。情報に振り回されずに、自分の資産は堅実に自分で守って育てましょう。

 
 

資産形成の超正解100

 

鈴木さや子 著
発行所 朝日新聞出版
定価 1540円(税込)