総務省は、選挙で投票したくても、在宅介護を受けているために投票所に行けない人が投票できる制度を拡充する検討を始めた。 投票という政治参加の一場面の議論だけでなく、有権者の加齢や心身の状態、地域の過疎化や災害による避難などの実情に応じて、誰もが選挙や政治に接しやすい仕組みを工夫する必要がある。 介護にかかる時間が介護保険の区分で最も長い「要介護5」の人、歩行や外出が困難な障害のある人、戦傷病者は郵便を使った自宅などでの不在者投票ができる。県によると、県内の要介護5の人は約1万1600人(平成28年9月末)、郵便投票を利用できる身体障害者は約3万人(27年3月末)いる。28年夏の参院選本県選挙区では347人が制度に沿って投票した。 また、県選管委が指定した病院、老人ホームなどの412施設に入院、入所中に不在者投票を行った人は7956人だった。県内の12市町村選管委は高齢者らを乗せるバスなどを手配し、投票所への行き来を支援した。 総務省は郵便投票ができる人の範囲の拡大を含む投票機会の確保策を探っている。同省は以前から政見放送の字幕や手話通訳、点字や音声による選挙情報の提供、投票所の物理的な障壁をなくすバリアフリーを進めてきた。しかし、選挙によっては、政見放送の手話通訳や字幕が認められなかったり、点字や音声での情報提供の内容や方法が不十分だったりしている。 昨年4月施行の障害者差別解消法は、社会的なバリアーを除去するための具体的な取り組みである「合理的配慮」を掲げる。政党や政治家、選挙や福祉に関わる機関や団体には、法施行後に行われた参院選や県内の市町村選挙に、法の趣旨がどう生かされたのかを検証し、一人でも多くの人が投票できる環境づくりに役立てる努力が求められる。 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の避難が続く被災地では、各種選挙の投票率が震災前に比べて低い傾向が出ている。避難者は政治や選挙への関心が薄れたり、避難先での投票方法に不便を感じたりしている。 県内では今年、15市町村の首長、6町村の議会議員が任期満了を迎える。来年早々の任期満了に伴う選挙が年内に行われる可能性もある。任期4年の折り返しを過ぎた衆議院の解散、総選挙をにらんだ動きも出始めた。選挙の公正さを大切にしながら、有権者と選挙を近づける改善を目指すべきだ。(安田信二)