久保建英、ベンチスタート予定も先発に繰り上げ

 U-16日本代表は現地時間19日、グループステージ第2戦でキルギスと対戦。ベンチスタート予定から先発した久保建英、さらに棚橋尭士らのゴールラッシュにより8-0の圧勝を収め、決勝トーナメント進出を決めた。この世代では久保が大きな注目を集めているが、この試合でハットトリックを決めた棚橋は久保の存在に大きな刺激を受けているようだ。森山佳郎監督も「棚橋に注目してほしい」と、その才能を高く評価している。(取材・文:元川悦子【ゴア】)

——————————

 16日のAFC・U-16選手権(インド・ゴア)初戦・ベトナム戦を7-0で圧勝し、続く19日の第2戦・キルギス戦も2連勝して一気に8強入りを決めたかった日本。森山佳郎監督も「4〜5人はメンバーを入れ替える」と公言していたが、蓋を開けてみると初戦から入れ替わったのは監物拓歩(清水ユース)、鈴木冬一(C大阪U-18)、棚橋尭士(横浜ユース)の3人だけ。

 ベンチスタートの予定だった久保建英(FC東京U-18)も「前日練習でサブ組に入れた時、久保から『俺、出せよ』っていうのがホントに一番伝わってきた」と指揮官が言うように、強い闘争心を押し出したことで上月壮一郎(京都U-18)に代わって先発に繰り上がった。

 その久保が棚橋と2トップを組み、右MFに鈴木、左MFに中村敬斗(三菱養和)という攻撃陣で挑んだ日本だが、相手のフィジカルと前線からのハイプレスに苦しみ、序盤は全くと言っていいほどチームがかみ合わなかった。逆に高さに勝る相手に空中戦で2〜3回チャンスを作られる状態。まさに忍耐の時間が30分近くも続くことになった。

 そんな最中に左サイドバックに入っていた小林友希(神戸U-18)が負傷。平川怜(FC東京U-18)との交代を余儀なくされる。そこまでボランチに入っていた喜田陽(C大阪U-18)が左サイドに回り、ボランチに平川が陣取る形になったが、この交代が功を奏し、日本はようやく中盤が落ち着く。

 そして直後に相手DFのミスを突いて棚橋が左から切れ込んでゴール。「あの点が非常に大きかった。流れがガラッと変わったんで」と森山監督も安堵を覚えた先制点だった。

 ここから日本の攻撃陣はベトナム戦に続いて大爆発する。

久保、棚橋、中村らのゴールで2試合連続の大量得点。日本は早々に8強入り

 前半40分に久保が相手のクリアミスを拾って一気にドリブルでゴール前へ突っ込んで右足を振り抜き、2点目をゲット。相手を意気消沈させると、前半終了間際にはベトナム戦で無得点に終わっていた中村が3点目をマーク。

 後半も開始早々の7分に久保の絶妙のスルーパスを中村が冷静に流し込んで4点目を奪い、その2分後には棚橋がペナルティエリア左外から思い切ってシュート。5点目を決める。その後、鈴木と棚橋のPKで加点し、後半ロスタイムには久保が最後の最後まで貪欲さを前面に押し出して8点目を叩き出す。

「2点目は平川選手からいいパスが来たんで、落ち着いてコース見て決めるだけでした」と本人もしてやったりの一撃でキルギスを粉砕。終わってみれば、日本は2試合連続大量得点勝利を挙げた。その後の試合でオーストラリアがベトナムに2-3で敗れたことから、日本の8強入りと1位通過が早々と決定した。

 この2試合で久保が4点、棚橋が3点と大会得点王争いをリード。中村も2点、宮代大聖(川崎U-18)と山田寛人(C大阪U-18)も1点ずつと、FW登録の選手たちが軒並みゴールを奪っている。彼らの競争がヒートアップすることはチームにとって非常に大きなプラス要素。森山監督もこのことを前向きに捉えていた。

「久保、棚橋、宮代、中村あたりはこの2年間、1〜2点差の中で得点数を張り合っているんです。彼らはホントに拮抗している。お互いに『何くそ』っていう気持ちは強いし、僕らも競争を煽りながらやって来た部分もある。お互い意識しながらやることで、いい相乗効果が生まれていると思いますね」

森山監督も認める棚橋の才能。久保越えを狙う才能豊かなアタッカー

「サッカー界って『(79年生まれの)黄金世代』とか、いい世代って代ってあるじゃないですか。そういう世代には、お互い高めあうような、競争しあうようなムードがあるんですよね。今回はそういうのを持った世代なのかなと。すごい競争意識高くやってるんで」と指揮官が強調するように、点取屋たちが「絶対自分が一番になってやる」という意識を強く持ってプレーしていることが、序盤2試合の大勝に直結しているのだろう。

 とりわけ、最年少の久保の存在は、他の選手たちに大きな刺激を与えている。それは森山監督も認める部分だ。

「たぶん『久保、久保』って言われているのを、他のやつらも面白くないと思っているだろうし。今日くらいは棚橋が3点入れたから、棚橋に注目してくれやと言いたい。

 棚橋も初戦出さなかったんですけど、練習からギラギラしていたし、『俺が決めてやる』という空気を醸し出していた。だからこのキルギス戦でハットトリックをやってのけたと思います」と指揮官は重要な働きを見せた横浜の点取屋を絶賛したが、こういう選手が次々と出てきてこそ、日本は2大会ぶりの世界切符、そして10年ぶりのアジア王者の座を手にできるのだ。

 最終的にU-16代表FWの大黒柱に君臨するのは果たして誰なのか。久保はもちろん傑出した才能を持つアタッカーだが、この日の棚橋のように彼を超えようとするタレントが出てくることが日本サッカー界にとっての理想のシナリオだ。

 U-16の選手たちはゆくゆくはA代表を担うような存在。近い将来、日本サッカーを背負う選手に成長するために、久保から受けた刺激を自分の成長の糧としなくてはいけない。それはもちろん、今大会に招集されていない選手たちにも当てはまる。

(取材・文:元川悦子【ゴア】)