GK:クラウディオ・ブラーボ

 今夏の移籍市場でも主役はプレミアリーグだった。リーグ総額11億6500万ポンド(約1580億円)を費やし、各クラブが戦力の補強を図った。世界最高金額となる移籍金で復帰をした選手、所属したクラブで強烈なインパクトを残してきた選手、イングランド期待の若手DFなど多くの選手がプレミアリーグに参戦。多くの選手の中から移籍総額463億円の11人を紹介する。

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 ブラーボはジョゼップ・グアルディオラ新監督の信頼を失ったジョー・ハートの後釜として、31歳以上の選手としてはガブリエル・バティストゥータに次ぐ1800万ユーロ(約20億円)の移籍金でシティにやってきた。

 レアル・ソシエダで評価を高め、バルセロナではリーグ連覇など数々のタイトル獲得に貢献。チリ代表としてもコパ・アメリカ連覇を成し遂げるなど実績は十分で、GKとしては水準以上の足元の技術を有している。

 デビュー戦となったマンチェスター・ダービーでは不安定なプレーを見せて周囲を慌てさせたが、その後は期待に違わぬ安定したパフォーマンスで新生シティを最後方から支えている。33歳になっても衰えはなく、これまで積み重ねた経験と勝者のメンタリティで早くもチームに不可欠な存在となっている。

DF:ダビド・ルイス(チェルシー

 かつてDFとしての史上最高額でクラブを去った男が、移籍市場締め切り直前にチェルシーへ電撃復帰を果たした。アントニオ・コンテ監督の望んだ補強ではなかったとも言われているが、すでに再デビューも済ませた。

 パリ・サンジェルマン移籍前は軽率なミスを連発し、センターバックとは思えないプレースタイルから批判を浴びることも少なくなかった。一時期ボランチ起用も試されるなど本領を発揮していたとは言い難い。それでもフランスで自らの哲学を曲げることなく成長を遂げた。

 時に警告の対象となるような激しい守備に豪快な攻撃参加、右足から繰り出される多彩なパスや強烈なシュートは錆びついていない。イタリア式の緻密な守備組織を構築するコンテ監督の下でも破天荒なプレーで見るものを驚かせてくれるだろう。

DF:ジョン・ストーンズ(マンチェスター・シティ)

10代の頃からイングランドの将来を背負う逸材として期待されてきたが、近年は伸び悩みが否めない。試合中に集中を切らす場面が散見され、ポテンシャルに見合う成長を阻んできた。それでも伸び代は特大だ。

 長身痩躯でイングランド人らしくないモダンなスタイルはシティのジョゼップ・グアルディオラ監督の戦術にもマッチする。右サイドバックもこなす万能性と、右足のビルドアップ能力は国内屈指であり、新指揮官の下でさらなる進化が望める。

 DFとしては破格の5600万ユーロ(63億円)という移籍金の額に見合った活躍をしなければ、容赦ない批判にさらされるだろう。壁を突き破って不動の存在となれるだろうか。

DF:エリック・バイリー(マンチェスター・ユナイテッド)

まだ恵まれたフィジカルに頼るプレーが散見されるものの、DFとは思えない抜群のスピードと強烈なヘディング、鋭いタックルなどの能力はプレミアリーグでも猛威を振るっている。課題は経験不足からくる状況判断の甘さと、時折見せる集中を欠いた緩慢なプレーだ。

 それでもスペインで飛躍したコートジボワール代表DFのポテンシャルに疑いはない。エスパニョールからビジャレアルへと移籍した際の移籍金は570万ユーロ(約7億円)だったが、その1年半後、ユナイテッドへの移籍金は4000万ユーロ(約48億8000万円)に跳ね上がった。実に7倍だ。バイリーの快進撃はイングランドでも止まらない。

DF:ブルーノ・マルティンス=インディ(ストーク)

ポルトで出場機会を失っていたオランダ代表DFは買い取りオプション付きの1年レンタルでプレミアリーグ挑戦を決断した。センターバックと左サイドバックを高いクオリティでこなし、タイトな守備で最終ラインを引き締める。

 EURO2012直後にオランダ代表デビューを果たした。ルイス・ファン・ハール監督の愛弟子的存在であり、当時の代表チームを象徴する選手でもある。2014年のブラジルW杯ではスペイン代表のジエゴ・コスタと乱闘寸前のバトルを演じ、その怒りの表情から数々のコラージュ画像が作られた。チェルシー戦では因縁の対決が見られるかもしれない。

MF:エンゴロ・カンテ(チェルシー)

昨季レスターの“奇跡の優勝”に大きく貢献したフランス代表MFは、チェルシーからの誘いに応じて移籍を決断した。カーンからレスターに加入した際は無名で、誰もあれほどの活躍を予想しなかったに違いない。

 最大の持ち味は規格外のボール奪取力。小柄だが、抜群のポジショニングと一度捉えたら離さないマムシのごときハードマークでボールを相手の足から絡め取る。運動量も豊富で、中盤の守備的なポジションを1人でカバーして防波堤となる。

 1年でプレミアリーグ屈指のボールハンターとしての評価を確立し、フランス代表としてEUROにも出場した。チェルシーでも中央のエリアで絶大な存在感を発揮し、早くもチームに欠かせないピースになっている。

MF:ポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド)

マンチェスター・ユナイテッドがジョゼ・モウリーニョ監督の就任とともに、世界史上最高額の約1億ポンド(約130億円)で呼び戻されたのがポグバだった。サー・アレックス・ファーガソン監督と衝突してクラブを飛び出した若者は、4年を経てイングランドにワールドクラスの選手となって帰還した。

 当然すでに主力として起用されているが、イタリアで戦術的な緻密さを身につけた23歳は度々ナーバスになるなど安定感を欠いている。本来の力を発揮できればユナイテッドの中盤にダイナミズムをもたらし、攻守に絶大なプラスをもたらせる。

 また、ポグバはオープンな性格でチームに馴染み、選手達の様子を頻繁にSNS上で発信している。“王様”ズラタン・イブラヒモビッチとも2人でじゃれあうなど良好な関係を築いている。頻繁に変化する奇抜な髪型にも注目だ。

MF:サディオ・マネ(リバプール)

 マネといえば、一昨季のアストン・ヴィラ戦でわずか「3分」という衝撃的なプレミアリーグ最速ハットトリックを樹立したことで知られる。その得点力は年々磨かれており、昨季はリーグ戦で11ゴールを挙げた。

 圧倒的なスピードはユルゲン・クロップ監督が実践するゲーゲンプレッシングからのカウンターという戦術にマッチしており、すでに右サイドで異彩を放っている。またビッグクラブ相手に多くのゴールを決める強靭なメンタルも持ち味で、昨季はマンチェスター・シティ相手にハットトリックを決めるなど格上相手に輝きを放った。

 ザルツブルクが2012年当時、メツからセネガル生まれの無名選手を獲得するために支払った移籍金はたったの400万ユーロ(約4億5000万円)で、サウサンプトン加入時の移籍金は1370万ユーロ(約15億5000万円)だった。そしてリバプールへの移籍金4120万ユーロ(約49億円)と、4年で市場価値は約10倍に跳ね上がった。この急速なステップアップはアフリカ人選手の成功例として後世まで語り継がれるだろう。

MF:ヘンリク・ムヒタリアン(マンチェスター・ユナイテッド)

 アルメニア人として初のプレミアリーガーとなったムヒタリアンがその名を欧州に轟かせたのはシャフタール・ドネツク時代の活躍だった。ウクライナの名門で自由奔放なブラジル人アタッカー達を操っていた司令塔はチャンピオンズリーグで一躍注目を浴びる存在となる。

 そしてドルトムントに引き抜かれると、ユルゲン・クロップとトーマス・トゥヘルという2人の異なるタイプの指導者に様々な形で起用されてプレーの幅を広げ、より洗練された攻撃的MFとして評価を高めた。

 しかし、いまのところプレミアリーグへの適応に手間取っている。ユナイテッドでは中央でウェイン・ルーニーが起用されるため、ムヒタリアンは右サイドでプレーすることが多くなっているが、スピードとドイツ時代との役割の違いに戸惑っている様子だ。テンポの速さと独特のリズムに馴染めさえすれば、ドルトムント時代と変わらぬ輝きを放ってくれるだろう。

MF:ムサ・シソコ

【所属】
ニューカッスル→トットナム

 所属するニューカッスルが2部へ降格したため移籍を希望していたフランス代表MFは、数々の移籍候補先が報道されたものの、なかなか移籍が実現することはなくあえなく売れ残り状態となる。

 そこに手を差し伸べたのはトッテナムだった。最終的にはエバートンとの争奪戦となったが、パワフルなドリブル突破で相手守備陣に風穴を空けるダイナモはイングランド国内でプレーを続ける。

 フランス代表として出場した今夏のEUROでは右サイドを大きなストライドで爆走し、攻守に奮闘してチームのバランスを保つ役割を担った。中盤のあらゆるポジションで力を発揮できる万能性と恵まれたフィジカルを活かし、リーグ制覇を目指すトッテナムにエネルギーを注入する。

FW:ズラタン・イブラヒモビッチ

アヤックス、ユベントス、インテル、バルセロナ、そしてパリ・サンジェルマン。所属したクラブのほとんどで国内リーグタイトルを獲得をし、強烈なインパクトを残してきたズラタン・イブラヒモビッチがついにプレミアリーグにやってきた。

 インテルに所属していたときの監督であったジョゼ・モウリーニョが新監督に就任したマンチェスター・ユナイテッドに加入。シーズン開幕前のレスターとのコミュニティ・シールドから存在感を見せ、決勝ゴールを挙げている。

 長年支えてきたスウェーデン代表からも引退し、クラブでのプレーに専念することになったイブラヒモビッチ。3シーズン、リーグタイトルから遠ざかっている名門を救うことはできるだろうか。

ベストイレブン

【各選手の移籍金】

GK:クラウディオ・ブラーボ(バルセロナ→マンチェスター・シティ):19億5000万円
DF:ダビド・ルイス(パリ・サンジェルマン→チェルシー):42億5000万円
  ジョン・ストーンズ(エバートン→マンチェスター・シティ):64億4000万円
  エリック・バイリー(ビジャレアル→マンチェスター・ユナイテッド):41億6000万円
  ブルーノ・マルティンス=インディ(ポルト→ストーク):期限付き移籍
MF:エヌゴロ・カンテ(レスター→チェルシー):39億円
  ポール・ポグバ(ユベントス→マンチェスター・ユナイテッド):121億8000万円
  サディオ:マネ(サウサンプトン→リバプール):47億7000万円
  ヘンリク・ムヒタリアン(ドルトムント→マンチェスター・ユナイテッド):48億7200万円
  ムサ・シソコ(ニューカッスル→トットナム):38億6000万円
FW:ズラタン・イブラヒモビッチ(パリ・サンジェルマン→マンチェスター・ユナイテッド):フリー

総額463億8000万円(プレミアリーグ移籍金総額の29.3パーセント)