狙っていた相手GKのポロリ。作戦通りの先制点

 UAEを下し、来年のU-17W杯出場権を獲得した日本代表。グループステージは攻撃陣の爆発が注目されたが、この試合は1-0と苦しい展開。相手の厳しい攻撃をはねのけたには守備陣の奮闘があったからこそだった。振り返れば、4試合で日本は無失点。久保ら攻撃陣に注目が集まったチームではなるが、W杯を得た要因は守備陣にもあるのは間違いない。(取材・文:元川悦子【ゴア】)

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「(グループリーグ)3戦とも沢山の得点で勝てたけど、そういう自分たちのイメージを払拭して、(次のUAE戦は)ホントにタフな1点を争うゲームになると。もしかしたら事故で失点するところからスタートするようなゲームになる可能性も十分あると覚悟して、試合にのぞみたいなと思います」

 2大会ぶりのU-17W杯出場権獲得のかかる25日の2016年AFC・U-16選手権(インド・ゴア)準々決勝を前に、森山佳郎監督がこう予想した通り、大一番の日本は非常に苦しい戦いを余儀なくされた。

 試合の入り自体は悪くなかった。開始早々から主導権を握った日本は、久保建英FC東京U-18)が指揮官の指示通りの仕掛けから右サイドでFKを得た前半8分の場面、同じく久保が得意のドリブル突破からシュートに持ち込んだ26分の決定機など、得点につながりそうなシーンをたびたび作った。守備陣も瀬古歩夢(C大阪U-18)中心に組織的かつ泥臭い守りで相手を跳ね返し、UAEの素早いカウンターを出させなかった。

 そして前半30分。久保の右CKを相手GKアルハレスがキャッチし損ね、こぼれ球に鋭く反応した瀬古が右足でゴール。待望の先制点を手に入れた。

「自分は(CKを相手に)取られたかなと思って引き上げようとしたんですけど、歓声が聞こえて、見たらGKがこぼしていた。これチャンスだなと思ったら、瀬古選手がしっかり決めてくれた」と久保が言えば、瀬古も「昨日のミーティングでもGKがこぼすっていうのは話がありました。そこを狙って得点を決めたことはすごくよかったと思います」と満面の笑みを見せる。森山監督の指摘を忠実に実践した結果、彼らは相手のミスから貴重な1点をモノにしたのである。

 だが、ここから先の日本は得点機を再三にわたって逃し、徐々に窮地に追い込まれる。後半突入後はUAEも攻めを加速させ、日本陣内で危険な場面も増えてきた。

瀬古と菅原。戦うセンターバックコンビの闘志で勝ち取った無失点

 そこで、しっかりと率先して体を張り、積極果敢に相手攻撃陣の前に立ちはだかったのが、瀬古と菅原由勢(名古屋ユース)のセンターバックコンビだった。小林友希(神戸U-18)の負傷、監物拓歩(清水ユース)のスピード対応の不安という部分が重なって、2人が大一番のピッチに立つことになったのだが、彼らはあうんの呼吸で最終ラインを統率。4試合連続無失点勝利、2大会ぶりのU-17W杯出場権獲得へとチームを導いたのである。

「中1で初めて出会って3〜4年くらい一緒にやってきたんですけど、オフの面でも2人は気が合いますし、サッカーの面でもお互いやりたいことが分かっている。今回は僕がセンターバックで出るとは正直、思ってなかったけど『俺らだったら絶対できる』と。結果として0点に抑えて勝つことができた。僕らは一生続く仲かなと思っています」

 菅原はベストパートナー・瀬古との良好な関係を前向きに説明していたが、森山監督も彼らに絶大な信頼を寄せていたのは間違いない。「今日はあの2人がホントに素晴らしかった。パーフェクトだったんじゃないかな」と指揮官自身が公の場で大絶賛したことからも、両DFとの強い絆が色濃く伺える。

 実際、菅原と瀬古は「ファイティングスピリッツ」という森山監督の哲学をピッチ上で体現しようとしている選手の筆頭である。槙野智章や柏木陽介(ともに浦和)ら先人たちも薫陶を受けてきた「気持ちには引力がある」という指揮官の名言を常日頃から体全体に刻み込んで、彼らは相手に挑んでいるのだ。

「僕は昨年2月(立ち上げ時)からこの代表に入ったんですけど、戦う姿勢の全部が1から変わりました。それを継続してやるうちに、無意識というか習慣になって、それがチームでも出るようになった。『気持ちには引力がある』というのは、その時からたっぷり注入されていると思います」と菅原はしみじみと言う。

 一方の瀬古も「すごくタフな試合だってけど、最後は気持ちでゼロに抑えた」とメンタル面が最大の勝因だったことを強調した。

タフな環境で鍛えられた選手たち。世界で躍進する可能性も十分に

 こうした戦う姿勢というのは、森山監督が今の若い世代に一番、伝えたいところだったに違いない。彼がまだサンフレッチェ広島ユースを指揮していた2012年秋、教え子の野津田岳人(新潟)が参戦したAFC・U-19選手権(UAE)で日本が準々決勝でイラクにアッサリと破れ、世界切符を逃したことがあった。

 その時も「チーム全体から闘争心が見えてこなかった」という指摘に謙虚に耳を傾けたうえで、「個が自立し、なおかつ団結でき、高いレベルで闘うことができる、そんな選手を育てるため日々頑張っていきます」と強い決意を述べていた。

 立場がクラブのいち指導者から代表監督に変わっても、彼のスタンスは終始一貫していた。その森山イズムを瀬古・菅原筆頭に多くの面々が力強く示し、1-0という結果をもぎ取ってくれたことは、非常に大きな成果に他ならない。

 チーム発足時からインドネシアやウズベキスタン、インドといった日本とはかけ離れた環境へ何度も出向き、タフさを養ってきた選手たちは肝心なところで強かった。W杯出場までの4試合を無失点で終えたことは、特筆すべき点だ。そのたくましさを失わなければ、10年ぶりのアジア制覇、来年の世界大会での躍進も夢ではない。

 そのためにも、守備リーダーの瀬古と菅原には、無失点継続の担い手として、大いに奮闘し続けてほしいものだ。

(取材・文:元川悦子【ゴア】)