本田のベンチ外表記は単なるミス

 ミランは現地時間25日、セリエA第6節でフィオレンティーナと対戦。アウェイで0-0のスコアレスドローに終わったが、苦手としていた相手に勝ち点1は悪くない結果と言えるだろう。今季から就任したヴィンチェンツォ・モンテッラ監督は攻守で布陣を入れ替えながら守備の安定化とサイドを中心とした攻撃によるチーム作りを進めており、その基本戦術も固まりつつある。一方で、この試合も出場機会のなかった本田圭佑は忍耐が続きそうだ。(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)

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 アルテミオ・フランキに到着し、Twitterの情報を確認すると、ミランの公式アカウントが出したフィオレンティーナ戦のベンチ入りメンバーに本田圭佑の名前がなかった。

 クラブ広報を捕まえて、本田のベンチ外措置は故障なのか戦術上の選択なのか、ということを聞いた。「面白い質問だな。本田の名前はあるじゃないか」と言って配られたばかりのメンバー表を見せる。でもTwitter上には表記されていないとスマホを見せたところ、「本当だ。これは単純にうちのミスだ」と言い、広報は早速電話をかけて担当者に訂正を求めていた。

 Twitter上の情報が先に伝達してしまい、「本田はついに戦力外か」と日本のネット上で情報が出回っていたとも耳にした。邪推を働かせて情報を流した方が人目は引くし面白いのかもしれないが、今回は単にそれだけの話だったということは念のためお伝えしておきたい。

 もっとも試合では、本田にアップの機会は訪れず出場時間もなかった。忍耐は続く。

 さてそのミランだが、フィオレンティーナとはスコアレスドローで決着。過去2年フランキでは負け続け、年間順位でも上を行かれて力関係は変わっていただけに悪くない結果と言えるだろう。

 もっともこの結果は、ヨシップ・イリチッチのPK失敗やジャンルイジ・ドンナルンマの好セーブに助けられた部分はある。またボール支配率が40%を割ったため、ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督は試合後の監督記者会見やTV中継で「攻撃的サッカーを目指すあなたやミランの哲学には不本意ではないのか」という質問にさらされていた。

 ただ、前方から激しいプレスで追い込んでくるフィオレンティーナ相手にボール保持は難しい。調子自体も良く「開始から60分間は昨季の好調時と似た雰囲気だった」とパウロ・ソウザ監督も語っていた。そんなアグレッシブな彼らを抑えながら、この日のミランはゴール前に引きこもるだけでなくチャンスを作れていた。

モンテッラ監督が構築した基本戦術。攻守で切り替わる布陣

「確かに美しい内容ではなかったかもしれないが、選手たちからは『勝ちたい』という気持ちを見ることができた」とモンテッラ監督は笑顔で語っていた。確かにそれは、戦術上のハードワークという形でプレーにはっきり見てとることができた。

 基本戦術は、大分形になってきている。システムは4-3-3、だが攻守両面でそれぞれ別の並びの表記が必要になるくらいに収縮を繰り返す。守備の時には両ウイングが絞ってさながら4-5-1のコンパクトな守備組織を形成。一方ボールを奪うと、両ウイングは中へと絞り、両脇に空けたスペースへ両サイドバックがいっぺんに上がる。

 普通は被カウンター対策として後方に守備の枚数を残す関係上、ボールサイドと反対側のサイドバックは上がらない場合も多い。しかしモンテッラ監督の場合は、両サイドにFWを追い越させて高い位置を取らせる。

 その代わり三枚の中盤のうち一人は最終ライン近くまで下り、守備上の人数合わせ、後方からの組み立ても担当する。モンテッラ監督はカターニアやフィオレンティーナ時代に3バックを多用して好成績を挙げた。その当時と攻撃のコンセプトは同様だが、守備の際は4バックにすることで安定を図ろうとしているが現在のミランでの取り組みだ。

 そしてフィオレンティーナ戦では、この攻守の切り替えに見せるハードワークが機能した。守備では各選手が最終ラインに寄って細かくスペースを消し、また相手選手にピタリと張り付いて攻撃を限定する。

 かと思えば、ボールを奪うと11人中5人のプレイヤーが攻撃に行けるような体制へと素早く切り替える。これを90分間勤勉にこなしたことで、相手のシュートチャンスを潰しつつ、危険な攻撃のチャンスを作るということができていた。

確実に進むチーム作り。3試合連続の無失点

 さらにミランは、フィオレンティーナ相手に特別な対策も盛り込んでいた。彼らの攻撃で一番怖い戦術の一つは、ボルハ・バレーロらによる中盤から裏への飛び出しである。このためモンテッラ監督は、ユライ・クツカをその警戒役に任じた。

 相手ボールになった時にミランの選手は守備ラインを形成して引くが、その際クツカはボルハ・バレーロを見つつ、スペースを埋めるように最終ラインと同様の位置で守備に入った。

 そして、相手が飛び出してくれば自分が張りついてカバーリングに出る。こうした守備により、試合中数度相手の突破を阻止したシーンもあった。リッカルド・モントリーボも含め、彼ら中盤の選手が最終ラインをよくフォローして粘り強くスペースを埋めたことが、チームの堅守につながっているのである。

 ミランはこれで3試合連続の無失点である。組織の成長があればこその結果だ。モンテッラ監督は「まずはチーム戦術を固めること。それが各選手に浸透すれば、選手たちは自然と個人の力量を発揮するようになる」と語っていたが、その面でのチーム作りは確実に進められている。本田もその流れに乗って出場機会をもっと得られるようになれば、なお良いのだが。

(取材・文:神尾光臣【ミラノ】)