ソン・フンミンも発掘。韓国屈指の育成専門家の死

 韓国で一人の監督が逝去した。日本ではあまり知られていないが、育成の専門家として実績のあるイ・グァンジョン氏だ。ソン・フンミンやキ・ソンヨンなど数多くの名手を育てた名将の死に、現地記者は深い悲しみのなかにいる。(文:キム・ドンヒョン【城南】)

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 今朝、平昌(ピョンチャン)から戻ってくる途中だった。ニュースで慣れた名前が流れ、よく聞いてみると悲報だった。元U-23韓国代表監督のイ・グァンジョン氏が、白血病のため26日に52歳で亡くなられたのだ。

 彼は韓国で知られざる育成専門家の一人であった。中学生だったイ・チョンヨン(クリスタルパレス/イングランド)、キ・ソンヨン(スウォンジー/イングランド)などを発掘したチョ・グァンレ元韓国代表監督(現大邱FC社長)に並ぶほどだと、個人的には思っている。

 今夏、レスター(イングランド)からラブコールも受けたと噂された韓国代表MFイ・ジェソン(全北現代)、トッテナムのエースとして活躍しているソン・フンミンなどは彼が指導した弟子にあたる。

 指導者の出発からユース指導に力を入れた。韓国サッカー協会のユース指導者を歴任すると、段階別に年代別の代表を任された。実績も素晴らしい。2008年、U-16代表のアジア選手権では準優勝を成し遂げ、2009年U-17W杯に出場。この大会でベスト8に進出。ソン・フンミンもこの大会から名声を挙げたのだ。

 そのメンバーがそのまま維持され、2010年U-19大会ではベスト4、2011年U-20W杯でもベスト16に進出している。そしてキャリアのハイライトはアジア大会の金メダル獲得だ。2013年11月にU-23代表監督に就任し、決勝では北朝鮮を撃破、韓国にとって28年ぶりとなる金メダルをもたらした。

 この金メダルでチャン・ヒョンス(広州富力/中国)、パク・チュホ(ドルトムント)などが軍隊免除の特恵を受けた。今年開かれた2016年リオデジャネイロ五輪でも監督を務めることが内定されていたが、昨年2月に白血病と診断され、シン・テヨン監督に指揮を譲っていたのだ。

選手・ファンに親しまれた人間性。最後まで弟子たちの成功を願う

 イ監督は韓国では珍しく、選手とファン、両方から親しまれるほぼ唯一の監督だった。彼が白血病で倒れ、闘病の真っ最中であった7月、その弟子であったリオ五輪メンバーが彼を訪れ、快癒を願ったことがある。

 そこで涙を流した選手がいたのも彼がどれだけ選手たちと距離感が近かったかを示している。ファンたちから人気があったのも、常に成績が良かったところ、28年ぶりに金メダルをもたらしたのもその理由であろうが、その人間性にも理由がある。

 彼は最後まで“弟子”たちの成功を祈った。病状にいながらも「リオ五輪でいい成績を残してほしい」とエールを送ったのが記憶に新しい。明るく、発言もクールだった彼の死が正直まだ信じられない。

 余談だが、筆者は彼との縁がある。サッカージャーナリストを目指していた高校生の頃だった。筆者の親は韓国で懐石料理屋を経営しており、イ監督も常連客の一人だった。しかも徒歩10分距離の、同じ町に住んでいることもあり、頻繁に来ていたことを覚えている。

 何よりジェントルマンだった。当時筆者はサッカーに関しては初心者同然のしがない高校生だったが、サッカーに関する質問、戦術に関する質問などをすればいつも笑いながら答えてくれたのを覚えている。ジャーナリストになってから一度も会えなかったのが惜しくて悲しい。韓国最高の育成専門家の冥福を祈るのみだ。

(文:キム・ドンヒョン【城南】)