数字上は厳しい状況の福岡と湘南

 J1も終盤戦に入り、残留争いも佳境を迎えている。アビスパ福岡湘南ベルマーレは、数字上厳しい状況にある。勝ち点は伸ばせていないが、ピッチ内ではしっかりと戦えている。英国人記者は両クラブの監督が来季も継続的に指揮をとるべきと説く。両指揮官はどのようなビジョンを持っているのか。(取材・文:ショーン・キャロル)

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 アビスパ福岡と湘南ベルマーレの今シーズンの運命は決まってしまったかのようだ。ともに他チームから大きく引き離されて順位表の最下部に沈み、トップリーグ残留にはもはや手遅れの感がある。

 2週間前の直接対決に勝利を収めたことで福岡は勝ち点で湘南と並び、両チームともにわずかな残留への可能性を残す状況となった。だが先週末は両チームとも白星ならず。アビスパはホームでヴィッセル神戸に1-4の敗戦を喫し、ベルマーレはアウェイでジュビロ磐田と0-0のドローだった。

 この結果、残された勝ち点が最大でわずか12ポイントとなったところで、湘南と福岡はそれぞれ残留ラインから8ポイントと7ポイント差。奇跡でも起きない限り、来季はJ2へ逆戻りすることになるだろう。

 興味深いのは、降格が決まった後で両チームの監督がどうなるかだ。福岡の井原正巳監督も湘南のチョウ・キジェ監督も苦しいシーズンを過ごしてはきたが、どちらも才能ある若手監督だ。2人が続投を望んでいるとしても、他クラブからのオファーはあるかもしれない。クラブが彼らに別れを告げることになるとすれば残念なことだ。

 井原監督はこの仕事が初めての監督経験だが、柏レイソルのコーチングスタッフの一員として過ごした5年間で評価を高めていた。ネルシーニョ監督を助け、2010年と2011年にはJ2とJ1での2年連続タイトル獲得に貢献している。アビスパを率い始めてからの約2年間にも、優れたポテンシャルを示してきた。

 J2での最初のシーズンは3連敗でスタートさせた元日本代表キャプテンだが、シーズン終盤にはアビスパを浮上させ、12試合連続の無敗を達成。8連勝でレギュラーシーズンを終えると、セレッソ大阪とのプレーオフでは87分のゴールにより劇的にJ1への昇格を勝ち取った。

粘り強く戦う福岡。井原監督が語る“差”

 トップリーグでは、予想はされていたことだが、そう簡単に事は運ばなかった。シーズンを通して得た白星は、湘南とFC東京を2回ずつ破っての4勝のみ。順位表は、見ていて心地良いものとは言えない。だがピッチ上でのパフォーマンス自体は、数字が示すほど悪いものではなかった。19敗を喫しているとはいえ、そのうち11試合は1点差での惜敗だ。

 先週末はヴィッセルに手厳しくやられたとはいえ、基本的にはアビスパはよく組織されており、そう簡単には倒せないチームだった。一番の問題は、ピッチの両端にトップクオリティが欠けていたということだ。

「もちろん様々な要因がありますが、試合をコントロールできるかどうか、勝つべき試合でどう勝てるようにするかだと思います」と井原監督は湘南との試合後に、降格してしまうチームと降格を回避するチームとの差について論じる中で話していた。

「良い試合をしても勝ち点を落としてしまったことが何度もありました。一瞬の隙を突かれて負けてしまったり、勝ち点を獲れなかったりする試合が続いていました。本当に強いチームというのは、そういうことが起こる可能性を許さず、選手一人ひとりが試合に勝つためには何が必要か、90分間試合をコントロールするには何が必要かをしっかり分かっているものです」

 粘り強い組織と、戦わずして諦めることを認めない姿勢がアビスパの今季を特徴づけているとすれば、一方の湘南は奔放でリスクの大きい戦いを続けてきた。J1復帰1年目の昨年に総合順位8位という立派な成績に繋がった戦い方だ。

スタイルは変えない。チョウ監督が目指すもの

 前向きで攻撃的なアプローチを武器として、今季のベルマーレは川崎フロンターレ戦(4-4)やガンバ大阪戦(3-3)、サンフレッチェ広島戦(2-2)で強豪相手に熱戦を演じドローをもぎ取ってきた。

 それでも、秋元陽太(FC東京へ)、遠藤航(浦和へ)、永木亮太(鹿島へ)という結果をもたらすことのできる3人を開幕前に失っていたチームは、J2への再降格を回避できるほどの白星を重ねることはできなかった。

 だがチョウ・キジェ監督は、結果が付いてこない中でも、チームの順位が彼らのスタイルに影響するべきではないと考えている。福岡に敗れた試合の後、こう語っていた。

「私は監督の仕事を始めてからまだ5年目で、J1に残留できたのも一度だけですので、はっきりとした答えを返せるかどうかは分かりません。ですが、個人的には自分がクラブの哲学だと信じるやり方を追い求めること、それを最後まで貫くことが、前を向いて降格を逃れようとするチームの大事な要素だと思います」

「もちろんシステムを変更することもありますが、自分の持っているものにこだわって、本来のDNAに従うべきです。我々にとっては相手よりも走ること、攻撃的なサッカーをすること、ゴールを目指すことがそれです。

 今日も勝ち点3を獲得することはできませんでしたが、今年だけでなく来年も、3年後も、10年後も、最後まで諦めずに続けられるチームこそが、大きなことを成し遂げられると私は固く信じています。私は結果と成長を要求するタイプで、今のこういう状況の中でもやはりそうしたいと思っています」

 チョウ・キジェ監督と井原監督が、今のチームでもう1年、あるいは3年や10年続けていくチャンスを与えられるのかどうかは分からない。だが今季の仕事ぶりを見ていると、それぞれのプロジェクトを結実へともう少し近づける時間が彼らに与えられてほしいと感じられる。

(取材・文:ショーン・キャロル)