「プレッシャーはある」(清武)

 9月に続き、W杯最終予選が10月も行われる。グループ3位の日本にとって6日の初戦・イラク戦は落とせない重要な一戦だ。負傷者も多く、スタメンが読めない状況ではあるが、清武はトップ下での出場機会を狙っている。セビージャで厳しい立場にある今だからこそ彼には大きなチャンスだ。(取材・文:元川悦子)

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 2018年ロシアW杯アジア最終予選B組は序盤2試合が終わり、オーストラリアとサウジアラビアが勝ち点6、日本とUAEが3、イラクとタイが0となっている。日本が2位以内に浮上するためにも、6日の第3戦の相手・イラク(埼玉)は絶対に負けられない。ここで取りこぼすようなことがあれば致命傷になりかねないだけに、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も選手たちも危機感は強い。

 2日の代表合宿初日から練習に参加した唯一の欧州組・清武弘嗣(セビージャ)も「危機感というか、すごいプレッシャーはありますよ。日本代表は絶対に(W杯に)出ないといけないと周りからも思われてますんで、そういうプレッシャーはつねにあります。初戦に負けてそれがなおさら増したという感じです。

(移動の)飛行機の中でもすごい大事な試合だと、できれば6ポイントほしいと思いながら帰ってきました」と発言。これまでにない重責を感じながらチームに合流し、山口蛍(C大阪)を除く国内組11人とともにランニングや体幹強化、複数種類のボール回しを精力的に行っていた。

 今回招集された欧州組15人(武藤嘉紀=マインツと宇佐美貴史=アウグスブルクは負傷辞退)のうち、所属クラブで定位置を確保できているのはわずか3人。清武も苦境に直面している1人だ。

 8月20日の今季開幕・エスパニョール戦で先発し、初ゴールを挙げるなど、スタート自体は決して悪くなかった。だが、サミル・ナスリが加わった9月以降、出場機会が激減。17日のエイバル戦にフル出場した後は27日のチャンピオンズリーグのオリンピック・リヨン戦を含めて4試合出番なしで、10月1日のアラベス戦ではベンチ外の屈辱を味わっている。

「何を持って試合勘が鈍ると言うのか」。記事への疑問

 2012年夏のニュルンベルク移籍以来、負傷時を除いてコンスタントにピッチに立ち続けていた清武にとって、クラブで試合に出ずに代表戦を戦うのは初めてのこと。本人も「ヨーロッパに来て5年目でこういうのは初めて。4年間うまくいっていた方だなと思います。こういう環境を自分で選んだので、まあ想定内ですけど、いざそうなってみると、やっぱり悔しい」と本音を吐露した。

 それでも試合勘への懸念を問われると「試合勘試合勘っていうけど、別に試合勘はすぐ鈍るものじゃないんで。よく記事でも見ますけど、何を持って試合勘が鈍ると言うのか、僕にはよく分かんないです」と質問を一蹴。今回の代表戦で結果を出し、停滞感を払拭することを、改めて誓っていた。

 その清武だが、UAE戦では4-2-3-1の左サイドで先発したが、ハリルホジッチ監督から「清武にはプレースピード、背後のランニングを要求したが、少し背中を向けてしまった状態でプレーしてしまっていた」と苦言を呈され、後半17分に宇佐美との交代を強いられた。その後のタイ戦で原口元気(ヘルタ)がインパクトを残したことから、左サイド争いは熾烈を極めている。

「左ですか…。左で出るんですかね。全然分かんないんですけど」と清武自身も苦笑していたが、彼自身の中では今回こそ「左ではなくトップ下で勝負したい」という思いが強いのではないか。

 香川真司(ドルトムント)もクラブで出場機会を大きく減らし、代表合流が彼より1日遅いという事情もあるだけに、イラク戦は思い切って清武のトップ下で挑む方がベターだろう。

 実際、彼が真ん中の位置で挑んだ6月のボスニア・ヘルツェゴビナ戦(吹田)も結果的には敗れたものの、自身が先制点を挙げ、司令塔としては効果的な動きを見せていた。ハノーファー時代のいい感触を思い出すうえでも、トップ下で再起を図るというのは、今の彼に必要なことなのかもしれない。

連携面でも一日の長がある清武。イラク戦は大きなチャンス

「イラクとは何回も(試合を)しているので特別な印象はないんですけど、W杯最終予選で当たるってことは、たぶん固い試合になるだろうし、イラクもたぶんそこまで前には来ないのかなと。イラクは負けたらすごい厳しくなると思うし。

 だけど中東のチームは一発があるんで、そこがちょっと怖いかなって思うのはありますね」と清武は自身過去三度対峙したイラクを今一度、冷静に分析していた。その言葉通り、今回のイラクは手堅い守りをベースにカウンターを狙うような戦いをしてくるだろう。

 それだけ攻撃のタクトを振るうトップ下は臨機応変にリズムを変化させ、多彩なアイディアを繰り出しながら相手を揺さぶり、ゴールをこじ開けていく必要がある。そういう役割はむしろアタッカータイプの香川より、お膳立てを得意とする清武の方が合っている。

 攻撃陣がどのような構成になるかは全く見えないところがあるが、コンディションを重視するなら国内組で絶好調の齋藤学(横浜)や欧州組で試合に出ている原口元気(ヘルタ)、浅野拓磨(シュツットガルト)がピッチに立つことも考えられる。清武ならこうした面々との連携は問題ない。活かし活かされる関係を十分に発揮できるはずだ。

 イラク戦で本来の輝きを示すことで、日本を勝利に導き、セビージャでの定位置奪回の布石を打つ。日本代表が安定していない今だからこそ、彼には大きなチャンスだ。これまで本田や香川が中心だったチーム像に新たな姿を見せることができれば、日本代表と清武自身にとって大きな一歩となる。

(取材・文:元川悦子)