「ホーム2連勝」という低くないハードル

 10月1日、明治安田生命J1リーグ2ndステージ第14節アルビレックス新潟戦に臨んだジュビロ磐田。J1残留争いのライバルをホーム・ヤマハスタジアムに迎えての一戦だったが、試合終了間際に決勝ゴールを許し、勝点3を献上してしまった。残り3試合、最低限の目標に向け、サックスブルーは正念場を迎えている。(取材・文:青木務)

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 J1残留への扉が少しずつ小さくなる一方、『降格』の二文字目は見えて大きくなっている。ジュビロ磐田は、正念場を迎えた。

「ホーム2試合で2連勝すれば、今シーズンの最低限の目標である残留を達成できる」

 明治安田生命J1リーグ2ndステージ第13節・湘南ベルマーレ戦の前日、名波浩監督の言葉だ。そして、湘南戦がスコアレスドローに終わった後は、昨シーズンの終盤戦を引き合いに出し、選手たちの奮起を期待した。

「J2の時と一緒で、残り2試合で勝ち点4を取ればフィニッシュだから。そういう意味では横浜FC戦で引き分けて、さあ大分に乗り込もうというのと同じだと思う」

 第41節で0-0、迎えた最終節を2-1で勝利し、J1復帰を決めた当時のシチュエーションの再現を狙った。とはいえ、今シーズンの2ndステージで1勝しか挙げられていないサックスブルーにとって、ホーム2連勝は低くないハードルだった。

 アルビレックス新潟戦に向けては「勝ち点を与えないことが最優先だけど、最初からドロー狙いというつもりはもちろんない」と話していた中、試合終盤は引き分けも考えた戦いをするよう選手たちに伝えた。

 ジェイは前半開始早々に脛を痛めていた。セットプレーから同点ゴールを挙げたが、流れの中での怖さが鳴りを潜めたことで、得点の雰囲気は皆無。実際、磐田が放った後半のシュート数はわずかに1本。負けが許されない状況でのドロー狙いは当然の判断だったが、1-1のままクローズすることもできず、新潟の選手、スタッフ、サポーターが喜びを爆発させる姿を見つめるしかなかった。

「自分のミスからゲームを壊してしまった」(櫻内)

 2戦で獲得できたのは1ポイント。年間勝ち点13位で踏みとどまっているが、下位チームとの差は確実に縮まっている。落とした勝ち点5はあまりにも大きな数字だ。

 湘南、新潟戦と磐田は60分まで失点しないことをテーマに戦っていた。この時間帯までの失点数が非常に多かったためだが、湘南戦はカミンスキーのビッグセーブもあってこれを達成。高い位置からプレスをかけ続けるのではなく「なるべくスターティングポジションに戻ってから前向きに守備をしよう」という指揮官の指示を、選手たちもある程度実行できた。

 だが、新潟戦では22分にビハインドを背負った。PKによるもので、カミンスキーを責めることなどできるはずもない。問題はPA内でファウルを犯さざるを得ない状況を、自分たちで作ってしまったことだ。

 相手の縦パスが流れたところを櫻内渚が拾い、ルックアップすると太田吉彰に縦パスを供給する。しかし、狙っていた相手にカットされる。素早く切り替えて一度は櫻内がヘディングで跳ね返すも、それも相手の鋭い出足で奪われると、指宿洋史のキープからボールを受けた加藤大を森下俊が倒してしまい、PKの判定となった。

 試合後、櫻内はあのシーンをこう振り返る。

「シンプルにやれば良かったが、繋げると思ってしまった。その判断のミスというか、そこから(PKを与えることになり)失点してしまい、自分のミスからゲームを壊してしまった。湘南戦と変わらず60分までゼロで、という中で失点してしまったというのは、センターバックとして責任を感じる。試合の時間帯も考えて、もっとシンプルにできる場面では無理して繋ぐことにこだわらなくてもいいのかなと思う」

大事になるボールロスト後の切り替え

 試合を通しては、相手2トップの一角である指宿ともよく渡り合っていた。身長176cmの櫻内に対して指宿は195cm。高さでは勝ち目はなかったが、しつこく食らいつくことはできた。その点への手応えは自身も感じていたが、「でも一つのミスで失点に繋がっているので、そこは評価できない」と肩を落とした。

 ミスがなくなればそれが一番だが、サッカーという競技においてそれはあり得ない。大事なのはボールを失った後にいかに素早く切り替え、相手の選択肢を限定し、周囲がその動きに呼応できるか。新潟の出足の鋭さは試合前からわかっていたことで、名波監督もこう評していた。

「立ち上がり30分は非常にいいサッカーをしている。高い位置からボールを奪いに来る、アグレッシブなサッカーを新潟はしてくるので、そこで面食らわずに。耐える時間はもちろんあるだろうし、帰陣させなければいけない時間もある」

 監督を交代した新潟がどのようなサッカーを展開してくるか読みにくい面があったとはいえ、原点に立ち戻るという意味でアグレッシブに戦ってくることは読めていた。前半のうちに追いつけたとはいえ、だからこそ22分でビハインドを背負ったことがもったいなかった。

「気持ちの勝負」以前にやるべきこと

 また、櫻内のミスがPKに結びついてしまったわけだが、パスを繋ごうとした選択自体は間違いではない。磐田はジェイが早々に痛め、動きが少なくなったことで放り込みが増えることになった。次第に陣形は間延びし、前と後ろが分断した。それもあって「厚みのある攻撃がなかなかできなかった」とキャプテンの上田康太は言う。そして、こう続ける。

「すべてロングボールだとどうしても時間が作れない。自分たちでゆっくりボールを回さなければいけない時間帯も絶対にある。ロングボールだけになっては、いい結果は出せないのかなと」

 名波監督が「ロングボールが戦術になってしまったのは残念だったが、相手はそれを怖がっていた」と話したように、ターゲットのジェイをシンプルに使うのは確かに有効だ。そして、上田の言葉にも頷ける。不用意なボールロストはチーム全体の大きな課題だが、スペースを限定してのパスゲームなど速い判断と精度が求められる練習は普段から繰り返し行っている。

 残り3試合で劇的に戦術が上積みされたり、選手の技術が飛躍的に向上することはないだろう。選手たちはこれまで以上に試合を意識しながら練習に取り組み、監督・コーチ陣は試合で何をすべきか、という点をイレブンに授けなければならない。

 状況に応じた最善のプレーをすべきなのはもちろん、少なくとも想定しうる最悪のプレーを減らしたい。『最後は気持ちの勝負』なのかもしれないが、試合で100%の力を発揮できるよう、名古屋グランパス戦までの約3週間を意義のある期間としなければならない。

(取材・文:青木務)