「僕からしたら別にこんなのプレッシャーでも何でもない」

 6日にイラク戦を控える日本代表。4日、本田圭佑が口を開き、熱弁を奮った。ミランでは出場機会がほとんどない厳しい状況だが、本田からはネガティブさが感じられない。自信の根源は一体どこからくるのか。(取材・文:元川悦子)

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 すでにUAEに手痛い敗戦を喫している日本にとって、6日の2018年ロシアW杯アジア最終予選第3戦・イラク戦(埼玉)は絶対に落とせない大一番。勝ち星を得られなければ、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の進退問題に発展しかねない状況だ。

 緊張感が漂う中、本番2日前の4日に合流した攻撃の絶対的大黒柱・本田圭佑(ミラン)は「ネガティブなこと言えば当然そういうことまで考えないといけないんでしょうけど、それはジャッジするのは我々ではないですし、我々としては勝ち点を取りに行くわけですから。そんなことを考えたことがなかったっていう感覚ですけどね」と涼しい顔で発言。

「毎度言っているんですけど、僕からしたら別にこんなのプレッシャーでも何でもない」と言い切り、日本人とイタリア人のブーイング観の相違について3分近く熱弁を振るう余裕を見せるなど、周囲のネガティブムードを思い切り一蹴してみせた。

 その本田はこの日、長友佑都インテル)と同便で帰国。前夜のうちに日本に到着していた岡崎慎司(レスター)、吉田麻也(サウサンプトン)、酒井宏樹(マルセイユ)とともに最後の最後に練習に加わる形となった。4日の代表は冒頭15分以外はメディアを締め出して戦術確認を行ったが、本田と長友はランニングのみで、全体練習には参加しなかった模様だ。

 今季ACミランでの出場実績を見ると、彼はリーグ7試合のうち9月11日のウディネーゼ戦、20日のラツィオ戦の2試合に出ただけ。ピッチに立った時間は通算わずか19分という厳しい現実に直面している。

 右サイドを争うライバル・スソからは大きく水を空けられ、左サイドにコンバートされるという話さえ浮上している。そんな現状を踏まえると、イラク戦で本田が先発から外れることも十分に考えられる。

「心配の声を消せるくらいしっかり結果を出したい」

 しかしながら、本人は「自分の中でむしろ久しぶりに試合するってことで楽しみ。すごくポジティブな意味でイラク戦、オーストラリア戦でサッカーを楽しみながら結果を出したいなと。久しぶりに試合に出るって感覚があって、ある意味ワクワクしていますけどね」と試合に出る気満々だった。

 試合勘の不足を懸念されるのは理解したうえで、「それでもいかに結果に結びつけるかを求められていると思うんで、心配の声を消せるくらいしっかり結果を出したいなと。自分はゴールに絡むプレーを必ず求められているんで、そこしかイメージしてないですし、できると思います」と並々ならぬ自信をのぞかせた。

 確かに、本田圭佑という男は、どんな苦境も跳ね除けるだけの凄まじい勝負強さを持ち合わせている。2010年南アフリカW杯での2得点、2014年ブラジルW杯での1得点はもちろんのこと、右ひざや左太もも負傷で1年近く長期離脱した直後のブラジル大会最終予選序盤2連戦(2012年6月のオマーン&ヨルダン戦)での通算4発、ACミランで先発落ちを強いられた昨年後半のロシア大会アジア2次予選での6試合連続ゴールなど、彼が日本を数々の窮地から救い続けてきたのは紛れもない事実だ。

 9月のUAE戦も、最終的にチームは逆転負けしたものの、本田自身はキッチリと先制点を奪っている。こうした傑出した実績と経験があるからこそ、今も泰然自若の構えでいられるのだろう。

不安を見せた香川。本田はあくまで強気

「自信のベースはそこ(実績と経験)ですよね。でも、大事なのはやっぱり日々のトレーニング。トレーニングが絶対的に自信を与えてくれるんで。僕はミランに行ってから、監督が代わるたびにちょこちょこ出られない時期があった。そのたびに代表にも合流していたし、対応の仕方はうまくなっているのはあるんで、それも全然不安になってない1つの要因かな」と本田は淡々と言う。

 心身両面のスイッチの切り替えのうまさは、香川との大きな違いかもしれない。香川自身は「僕もこんなに試合をやってないのは初めてなんで。そういう意味では何とも言えないですけど、だからしっかりといいトレーニングして、試合でやるだけだと思っているんで、あんまりそこは考えないようにしています」と不安を垣間見せていたが、本田は戦いの場に合わせてスムーズに自分を変えられる柔軟性と適応力がある。それが代表での好結果に表れている。

 こうした前向きな部分に加え、ケタ外れのメンタルの強さを備えた選手だけに、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が彼の抜擢に踏み切る可能性はゼロではない。実際、他の右サイドアタッカー候補者は小林悠(川崎)、齋藤学(横浜)といずれもジョーカータイプ。

 原口元気(ヘルタ)を右に回すことも可能だが、9月のタイ戦(バンコク)の流れを踏襲するなら、彼は左から動かせない。ザック時代の定番である岡崎の右サイド起用は現体制ではほぼやったことがない。となると、日本の命運を大きく左右する右サイドを託されるのは、やはり本田圭佑ではないか。

「イラク戦に向けては細かいことは言えないけど、しっかり相手を分析しながら自分たちのよさを出す、そのイメージはいくつか形として頭の中にはある。それをしっかり出して、とにかく勝ちたいですね」と最終予選ホーム初勝利を誓った本田。今こそ背番号4をつける男の底力が問われる。

(取材・文:元川悦子)