イラク戦はメンタル重視のメンバー選考か

 運命のイラク戦に向け、岡崎慎司は泰然自若としている。レスターで出場機会が減り、若手選手の台頭もある。だが、岡崎に焦りはなく、「チームのために」を第一にどっしりと構えている。ベテランFWはあくまで冷静、さらなる飛躍を目指している。(取材・文:元川悦子)

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 日本代表の2018年ロシアW杯行きを大きく左右するアジア最終予選10月2連戦の初戦・イラク戦(埼玉)が迫ってきた。

 前日会見にのぞんだヴァイッド・ハリルホジッチ監督に対し、イラク人記者から「我々から見ても今の日本のレベルはそんなに高くないように感じられるが」という厳しい質問が飛ぶほど、9月1日のUAE戦(埼玉)に敗れたマイナスイメージは大きいようだ。

 それだけに、今回のイラクは「自分たちも十分やれる」と自信満々で挑んでくる可能性が高い。選手個々のコンディションが万全ではない日本にとってはかなり厄介だが、そういう時こそ、チーム一丸となって苦難を乗り切らなければならない。

「とにかくメンタルだと。それが違いを見せつけるんだと選手には言いました。明日の昼までしっかり考えて最終的な決断をしようかなと思っています」とボスニア・ヘルツェゴビナ人指揮官は強調した通り、イラク戦のメンバー選考はコンディション以上にメンタルの強さを重視する意向だ。

 となれば、2日前合流の本田圭佑ミラン)、長友佑都インテル)の先発起用はもちろんのこと、代表通算50ゴールに王手をかけながら3試合足踏み状態を強いられている岡崎慎司(レスター)の1トップ復帰も有力視される。

 その岡崎だが、UAE戦でスタメン出場しながら全くと言っていいほどよさを出せず、後半21分に浅野拓磨(シュツットガルト)と交代。敗戦の一因を作ってしまった。続く6日のタイ戦(バンコク)は出番なし。

 その後のレスターでも、プレミアリーグは10日のリバプール戦の後半45分間と10月21日のサウサンプトン戦の後半21以降の24分間プレーしただけ。新戦力のイスラム・スリマニに完全にポジションを奪われた格好になっている。

岡崎が振り返るUAE戦の蹉跌

 約1年前、岡崎は尊敬する先輩・中村俊輔(横浜)から「お前は今、29歳だけど、ここから消えてく。お前みたいなタイプは足が重くなってムリになっていく」と言われたという。皮肉にもその予言通り、30の大台突入後は代表・クラブ両方で想定外の悪循環に陥りつつある。

 それでも、決してネガティブにならないのが岡崎のいいところ。「チームのために自分ができることを全力でやる」という献身的スタンスは全くブレていないのだ。

「UAE戦はその前のボスニア戦(6月=吹田)に負けたのもあって、自信を持ってできなくなっていた。それで、みんながUAE戦で結果を出したい、ゴールを取りたい気持ちが強すぎて『中、中』になったしまった。

『俺だ、俺だ』のサッカーになると中へ入っていってしまうので、僕は点を取りたいけど、チームの流れも見つつ、冷静にやることを心がけたい。レスターでもみんなが点を取りたいのを見ながら自分ができることをやっている。今回もチームが問題を起こすような形にならないようにサッカーができたらいいかなと思います」と彼はベテランらしく、大きく構えて一大決戦に挑むつもりだ。

 代表通算50ゴールの大記録も、達成目前で3試合足踏み状態が続いている。その間、21歳の浅野が急成長し、タイ戦でも得点を奪うなど、自身の立場を脅かしつつある。

 浅野は「岡崎さんみたいないい見本が僕の目の前にいるので、まずはいい部分をしっかり見て、盗みながら自分のものにしていけたらもっと成長していける。いずれはポジションを奪えるような選手にならないといけないなとは思います」と意欲を前面に押し出していたが、そういう若武者が頭角を現してきたことを、岡崎はむしろ大歓迎している。

若手選手からの刺激「新しい選手が出てくるのは当然」

「個人的には早くそういう選手が出てきてほしいと思っていた。夢生(金崎=鹿島)、武藤(嘉紀=マインツ)、大迫(勇也=ケルン)もいい調子になってきているし、駿(長沢=G大阪)みたいに名前があがっている選手もいる。日本代表で新しい選手がどんどん出てくるのは当然のこと。それがあるから自分も頑張れる。

 自分だけがやらなきゃいけないとなると、日本代表も窮屈になる。誰かがダメだった時に誰かがいるっていう安心感は今のチームに必要だし、選手層は厚くならないと。自分が出たらやることやらなきゃいけないし、出ないならチームを盛り上げなきゃいけない。そういう意識を今は持っていますね」(岡崎)

 浅野のスピード、金崎の日本人離れしたメンタリティ、武藤の屈強なフィジカル、長沢の高さ。自分にない特徴を見て刺激を受けることは、日本代表不動の点取屋として足掛け9年間君臨し続けてきた岡崎が、もう一段階飛躍するために必要なことかもしれない。

 イラク戦は岡崎慎司というFWの近未来を大きく左右する大一番になるだろう。彼がフォア・ザ・チーム精神に徹しながら、ゴールという結果を残せれば、泥臭い点取屋はこの壁を乗り越え、必ず新境地を見出すはずだ。

 岡崎は、中村俊輔の愛ある苦言をいい意味で跳ね除けるような“ニュー岡崎”の姿を見せなければならない。日本の命運が懸かったイラク戦は、まさにうってつけの試合である。

(取材・文:元川悦子)