日本代表が最も警戒すべき“イラクのクリスティアーノ・ロナウド”

 日本代表は6日、ロシアワールドカップアジア最終予選でイラク代表と対戦する。最終予選で黒星スタートを切ったハリルジャパンにとってこの試合は勝利が求められる一戦だが、相手の“イラクのクリスティアーノ・ロナウド”には警戒が必要だ。イラク代表最大の要注意人物を、日本代表はどのように対策すべきなのだろうか。(文:河治良幸)

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 イラク戦で勝ち点3を狙う日本にとって、いかに得点を取るかが注目されるところだが、失点しないことも重要だ。日本が警戒すべき相手の武器、その1つは右サイドハーフを担うヤシーンだ。

 スウェーデンのAIKソルナでプレーするヤシーン。UAE代表のオマル・アブドゥラフマンほどではないが、イラクの攻撃の多くは185cmの攻撃的MFを経由し、高い割合でチャンスがもたらされる。行動範囲は右サイドの定位置から前線の右横あたり。1トップの選手が中央の深い位置にポジションを取るため、周囲の選手はヤシーンにボールを預けやすい。

 風貌から“イラクのクリスティアーノ・ロナウド”にも例えられることもあるヤシーン。彼の最大の武器が縦志向の強い高速ドリブルであり、中盤のアブドゥラミールから展開されたボールを受けて前を向けば、相手DFラインの手前から積極的に仕掛けてくる。

 そこから左右の両足でミドルシュートを打つ形を得意なプレーの1つとするが、そのプレーにこだわっているわけではなく、実はそこまで高い決定力があるわけでもない。

 危険なのはむしろ別の選択肢だ。ドリブルの仕掛けをメインの武器として、状況に応じて別のプレーを選択していける引き出しと柔軟な思考を備えるのがヤシンの強み。その1つがスルーパスだ。

 ドリブルを警戒する相手ディフェンスの裏に通す縦のグラウンダーパスはダイアゴナルに飛び出す選手にピタリと通れば、GKとの1対1になる。最高の受け手となるのが1トップに張るアブドゥラヒームで、前線で常にセンターバックを背負う状態から、ヤシーンが起点となることで生じる隙を常に狙っている様だ。

要注意人物をどのように対策すべきか?

 もう1つが一度ワイドな位置でボールを持ったところから、中に素早くリターンして周りの選手にフリーで前を向かせる形だ。

 そこからアブドゥラミールやアブドゥル・ザフラがミドルシュートやラストパスを狙っていく。あるいは中央の選手を飛ばして、逆サイドのアリ・フスニあるいはアリ・アドナンが受けて、相手センターバックと右サイドバックの合間などに生じるスペースを突いていく。

 大型選手でテクニックも高いヤシーンは存在が目立ち、イラクの攻撃陣も頼りにしている。そのため相手ディフェンスの意識も集まりやすいが、その分も周りの選手はフリーになれる可能性が高まる。堅守からの速攻が基本となるイラクにおける主要な起点なのだ。

 日本としてもヤシーンが高い位置でボールを持つ状況をなるべく作らせない様にする必要があるものの、あまりに気を取られて周囲の選手をフリーにさせないようにバランス良くディフェンスしていくべきだ。酒井高徳か長友佑都、あるいは太田宏介。基本的にマッチアップの関係になる左サイドバックの役割が重要になるが、左のボランチも常に関係してきそうだ。

 その一方でヤシーンはイラクの組織的なディフェンスを形成する1人でもある。イラクが守勢になれば攻撃に転じた時のポジションも低くなる。イラクは鋭い速攻を武器とするが、一発のロングカウンターはそこまで得意としておらず、そこに特化した攻撃をしてくることも少ない。相手に押し込まれている時間帯はヤシーンもそれほど脅威な存在にはならないのだ。

 つまり効果的な攻撃を繰り返すことができれば、それだけヤシーンの危険性も減るということ。守備の警戒を緩めるべきではないが、攻撃で主導権を握ることによって、相対的にヤシーンを起点としたイラクの攻撃を制限する効果は期待できる。そうした攻守の関係も勝負のポイントとして注目したいところだ。

(文:河治良幸)