強烈なインパクトを残した清武と原口

 10月6日に行われた2018ロシアW杯アジア最終予選イラク戦、アディショナルタイムの決勝ゴールで貴重な白星を勝ち取った日本代表。終始ベンチを暖めた香川真司、途中交代でベンチに下がった本田圭佑岡崎慎司がピッチにいないなか、終了間際に得点を奪って勝利した。この勝利で、日本代表の世代交代が加速する可能性はあるだろうか。(取材・文:元川悦子)

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「最終予選っていうか、ワールドカップと時代は待ってくれない。どのみち絶対、世代交代はしなきゃいけないので、僕らの世代が自覚と責任を持ってやんなきゃいけないかなと思ってます。そういう思いは(同世代の)みんなが持ってるし、結果出してるってところはすごく尊敬できるなと。自分も負けてられないなっていうのはあります」

 9月1日の2018年ロシアワールドカップアジア最終予選初戦・UAE戦(埼玉)から3試合連続フル出場している酒井高徳(HSV)が語気を強めたように、彼らロンドン五輪世代の日本代表押し上げ機運が、ここへきて一気に加速している。

 6日の第3戦・イラク戦(埼玉)も、劇的勝利を引き寄せる原動力となったのは、ロンドン世代以下の面々だった。

 引き分け以下なら進退問題に発展しかねなかったこの大一番で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はトップ下を香川真司(ドルトムント)から清武弘嗣(セビージャ)へとスイッチ。左サイドも9月のタイ戦(バンコク)に続いて原口元気(ヘルタ)を起用した。

 その2人が前半26分の先制点を見事に演出してみせる。原口の自陣での守備からパスを受けた清武は、思い切ったドリブルで持ち上がって右に開いた本田圭佑(ミラン)に展開。その背後を抜け、リターンパスを折り返したところに、ヒールで合わせたのが原口だったのだ。

「ああいう、出して追い越すって動きはアジアではついてこないし、それは分かってたこと。まあ元気が決めてよかったなと思います」と清武が言えば、原口も「あのボールの取り方は僕、得意なんで。その後、出て行って、キヨ君と圭佑君がいいコンビネーションで崩してくれたんで、少しラッキーな部分はありましたけど、決まってよかったなと思います」と安堵感を吐露する。2人が残したインパクトは非常に大きかった。

「俺らの世代がもっと出てこなくちゃいけない」(山口)

 後半に入ってイラクのリスタートで追いつかれ、1−1の状態で岡崎と本田が下がった終盤も、若い世代が躍動する。37分には右サイドバック・酒井宏樹(マルセイユ)のクロスに途中出場の山口蛍(C大阪)がヘッドで飛び込み、後半45分前後にはパワープレーから浅野拓磨(シュトゥットガルト)が2度の決定機を迎える。そして、後半アディショナルタイム4分台に入ったギリギリの局面で、清武のFKのこぼれ球を山口が目の覚めるような右足ボレーで蹴り込み、絶体絶命の窮地を救った。

「もうとりあえず思いっきりふかさずに振りぬこうと思って。あれ以上浮いてたらたぶん相手に当たってたと思うんで、しっかり抑えられてよかった」と本人は安堵感を吐露した。

 その一方で「やっぱり自分たち(ロンドン世代)もやっていかなくちゃいけないなっていうのをそろそろ自覚しないといけない頃に入ってきている。コンスタントに出ている選手がそこまでいないんで、ますそこからのスタートだと思います」と世代交代への自覚を胸に秘めていたことを明かす。それは山口のみならず、ロンドン世代以下の若手に共通する意識だったに違いない。

 アルベルト・ザッケローニ監督体制以降の日本は、本田、岡崎、香川の3枚看板が日本の攻撃をけん引してきた。2010〜2015年の6年間は彼らの得点比率が7〜8割を占めており、その流れは今年3月の2018年ロシアワールドカップアジア2次予選まで続いた。山口もハノーファーからセレッソ大阪に復帰した今夏、「ホントは俺らの世代がもっと出てこなくちゃいけないとは思うんですけどね、どうしても今の北京世代を崩せてない部分がある」とコメントしていたことがある。

 ところが、頼みの3枚看板が今季欧州シーズン開幕後、揃って所属クラブで定位置を失った。序盤2ヶ月で3人全員がノーゴールというのは過去数年間にはなかったこと。本田は「そんなに心配はしてないんで。心配してないってのをしっかりピッチで出したいなとは思います」と悠然としていたが、この日のパフォーマンスを見る限りではやはり体が重く、キレが足りなかった。

劇的ゴールをベンチで見守った本田、香川、岡崎

 岡崎にしても「ふらふらっと1トップが下がっていったりすると、センターバックがついてきたりする。点を取りたいって気持ちとは裏腹にシュートも打てないかもしれないけど、まず第一にやるのはそういうプレーだと感じた」と自分のやるべき仕事に徹したが、シュートゼロという厳しい現実に直面した。香川至っては最後までお呼びがかからずじまい。彼ら3人は劇的勝ち越し劇をピッチの外から見守ることになった。それは非常に大きな出来事だったと言っていい。

 イラクがリオデジャネイロ五輪世代中心のチームで日本を上回る個の強さを示してきた通り、アジアのライバルは着実に若い世代が伸びている。こうした国々に比べて近年の日本は停滞感が目立っていたが、ようやく世代交代への糸口が見えてきた。

 ロンドン世代を軸に、浅野、大島僚太(川崎)らリオ世代も存在感を高めていけば、本田らベテラン勢にそこまで負担がかからなくて済む。そういう分厚い選手層を構築して初めて、日本はこの苦しい最終予選を突破し、ロシアの地に立つことができるのだ。

「監督の言っていることだけでサッカーは絶対に勝てない。それ以外のシチュエーションが起こるので、監督の指示以外のことがでてきた時の対応を選手各々がピッチの上で感じてやらないといけない」と本田はチーム全体に未熟な部分が多々あること指摘していたが、そういう自主性や判断力を原口や清武、山口らがもっと強く押し出せるようになれば、日本はもう一段階上のステップへ行けるはず。その可能性を5日後のオーストラリア戦(メルボルン)で示してほしい。

(取材・文:元川悦子)