イタリア、ブッフォンの凡ミスで失点。スペインは監督交代が奏功

 イタリア代表は現地時間6日、ロシアW杯欧州予選でスペイン代表と対戦し、1-1で引き分けた。欧州予選は1位チームのみが本大会出場権を獲得し、2位はプレーオフへと回るレギュレーションとなっており、イタリアとスペインは1位通過を巡ってハイレベルな争いを繰り広げている。ともにEURO終了後に監督交代に踏み切った両チームだが、この試合では成長を見せていた。(文:神尾光臣【ミラノ】)

———————————————-

 後半10分、セルヒオ・ブスケツが縦にスルーパスを放つ。マッティア・デ・シーリオの視野から逃れてビトロが裏のスペースへ走るが、そのコースには百戦錬磨のジャンルイジ・ブッフォンが立ちはだかる。そのままエリアを飛び出してクリア…となるはずが、なんと空振り。労せずしてビトロはボールを無人のゴールへと転がした。

「いろんな考えが頭をよぎった」と、ブッフォンは試合後地元紙に語った。ロシアW杯欧州予選G組、一位通過のライバルと見なされているスペインをホームに迎えた一戦で、イタリアはこのようにしてビハインドを負った。

 堅守は伝統である。相手にポゼッションを譲り、前半のポゼッション率は27%と大きく落ちながらも、ゴールを割られていないのはさすがこの国の代表チーム。実際ブッフォンがギリギリのセーブでしのいだシーンもなく、彼が珍しい凡ミスを犯すまでスペインは点を取れなかった。

 しかし、イタリアがプラン通りに試合を運んでいる印象は受けなかった。相手に主導権をあえて譲るというのは一つの手段だが、イタリアはカウンターで攻め込めていた訳でもなく、むしろスペインにそれを封じられて攻め込まれ続けた。EURO2016の対決を経て監督交代に踏み切った両チームだが、上手く行っているのはスペイン、ものになっていないのはイタリアという印象だった。

 フレン・ロペテギ新監督のもと、スペインは見てはっきりと分かるほどスタイルに改良を加えていた。細かいパスワークという持ち味はそのままに、縦方向を意識してスピードを上げる攻撃と、ボールを奪われた後での素早いプレスを加えている。次々とイタリアにカウンターを許したEURO2016と違い、カウンターに至る前に戦術的に潰すプレーがちゃんとできていた。

イタリア、選手交代で流れが激変。若き新戦力も躍動

 翻って、ジャンピエロ・ベントゥーラ新監督を迎えたイタリアはどうだ。3-5-2というシステムはアントニオ・コンテ前監督時代と同じながら、試合運びの様子はかなり異なる。守備の場面ではただ引いてスペースを固めるだけで、中盤より前ではプレスでもカウンターでも動きに連動性がない。そこにMF陣を中心としたミスが重なり、折角守備でしのいでも相手ゴール前にボールを運べなかった。

 イスラエル戦では思いっきり最終ラインを上げて積極的に後方から組み立てるサッカーを仕掛けていたが、この試合ではスペインをリスペクトしすぎたということなのか。失点から4分後、ベントゥーラ監督はポストプレーの要であるグラツィアーノ・ペッレを下げて、チーロ・インモービレを投入。

 ペッレは不服を露わにし、手を差し伸べるベントゥーラを無視してベンチへと一直線。試合の流れから消えていたため交代は妥当とも言えたが、さりとてパスを繋げないイタリアがターゲットマンを失ってどうしようというのか、アイディアは見えなかった。

 ところが、ここから試合の流れは劇的に変わった。イスラエル戦でも途中交代から点を取り、退場者を出して危ない展開を救ったインモービレは、縦への速い突破で次々とチャンスを作る。するとそれぞれが今ひとつ噛み合っていなかったチーム全体も、カウンターという方向で意思統一される。これまでCKすらろくに確保できなかったイタリアは、次々チャンスを作るようになった。

 そして後半31分、ベントゥーラ監督が強気な手を打つと攻撃に拍車がかかる。インモービレとともにトリノ時代の教え子である、22歳のアンドレア・ベロッティを投入して3-4-3へ変更。爆発的なダッシュ力と得点感覚を武器とするベロッティは35分、エリア内を縦に切り込み中央へ折り返す。

 これに反応したエデルをセルヒオ・ラモスが倒してしまい、イタリアはPKをゲット。これをダニエレ・デ・ロッシが決めて同点としたイタリアはこの後にも惜しいチャンスを作り、逆転してもおかしくないほどにスペインゴールへと迫った。

新監督のもと成長続けるイタリアとスペイン。1位通過を巡って激しい争い

 結局、両者は痛み分けのドロー。2連勝のアルバニアに1位を譲って勝ち点4で並んだ。若い選手が育ち、EURO2016本大会にも進んだアルバニアを軽視してはならない。ただやはり1位通過はイタリアとスペインの間で争われ、イーブンとなった両者が今後どれだけ勝ち点を挙げられるかという勝負になってくる。

 しかし、厳密にいうとイーブンではない。スペインは初戦のリヒテンシュタイン戦で8-0と大勝し、得失点差の勝負となった場合のマージンを築いている。イタリアに同様のことはちょっと望めない。まだチームがベントゥーラ監督のものにはなっていない状況で、スペインより多くの勝ち点を稼がなければならないという条件はやはり厳しいものだと言える。

 それでもこの2戦でイタリアには良い発見もあった。自らの“使い方”を熟知するベントゥーラが代表監督になったことで、インモービレが戦力として急成長。新鋭ベロッティも代表に定着しそうだし、ミランで本田圭佑のチームメイトである21歳のアレッシオ・ロマニョーリはフル代表初先発ながらスペイン相手に堂々とした守備を見せた。EURO2016の時には望めなかった戦力の底上げが始まっており、チームの成長を考える上では好材料だ。

 一方完成度の高さを示したスペインだが、ウィークポイントとなっていたところが手付かずになっていたことも露呈した。裏を狙われて縦に圧力を掛けると、意外なほどに最終ラインは慌て続けた。ジエゴ・コスタやアルバロ・モラタも、代表では絶対的なCFになりきれていない。相手が守備を固めてくる場合、攻めながらゴールで完結できないということは格下であっても不安要素になりうる。

(文:神尾光臣【ミラノ】)