ハリルJに強い反発力はあるのか?

 イラク戦に辛勝した日本。劇的勝利ではあったが、浮かれていいわけではない。高いレベルで試合をコントロールできないことは明らかで、豪州戦はさらに厳しい戦いになる。選手たちも危機感を持っている。(取材・文:ショーン・キャロル)

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 木曜夜のイラク戦に2-1の勝利を収めた日本代表については、「メンタルの強さ」や「勇気」が盛んに取り沙汰されたが、実際のところはそのどちらもピッチ上でさほど見せられていたわけではない。

 確かにヴァイッド・ハリルホジッチのチームは、終了間際のドラマチックな決勝点で勝ち点3をもぎ取った。だが、土壇場での劇的ゴールというものは必ず2つのことを示している。1つはチームに諦めない姿勢があること。もう1つは逆に、より効果的な形で試合を決めてしまう力がないということだ。

 サムライブルーが前回のホームゲームでUAEに敗れたこと、高いレベルで試合をコントロールできないことが慢性的な問題となりつつあることを考えれば、今のチームに特に強い反発力があるという見方は楽観的に過ぎるものだと思えてしまう。

「『ナイーブ』という言葉がよく使われるが、選手たちは非常に強い勇気を見せてくれたと思う。彼らがピッチ上で叫んでいたのはおそらく今回が初めてだった。最後の最後にそれが報われた」とハリルホジッチ監督は試合後に話していた。

「今日の試合が良い勝利だったとは思わないが、勇気を示した勝利だったと思う。世界で最も強いチームであっても、いつも美しく勝てるわけではない」

 それが事実であることは間違いないが、世界最高のチームであれば試合を支配し、状況に応じてリズムを調整することができる。それもまた、メンタルの強さと勇気を見せる方法のひとつだ。日本はUAEからもイラクからも先制点を奪ったが、どちらの試合でもそのリードを保つことができず、相手に反撃を許してしまった。

 火曜日のオーストラリア戦では、失敗を犯す余裕など全くない。メルボルンでの試合でホームチームに試合のペースを握られてしまえば、何も得ることなく帰国を強いられ、グループBの首位チームにさらなる遅れを取ることになってしまうだろう。

「アウェイにはアウェイの戦い方がある」(本田)

 本田圭佑はその事実を見逃してはいない。木曜日の試合を辛勝で終えたあと、いつも通り率直な言葉を発していた。

「監督が僕らに要求していることを理解はしていますが、サッカーは監督の言うことをやるだけではありません。それ以外に様々な状況が生まれてくるので、選手たちは自分の感覚を持って、そういうことに対処できる必要があります」と話した本田は、続いてオーストラリア戦に意識を向けて次のように語った。

「アウェイではアウェイの戦い方があります。もっと賢くなることが必要です。ボールを2、3秒キープするための体の使い方であったり、ボールをクリアする場所であったり、そういうものが状況を変える。ごく細かいことです。ピッチ上の全員が、難しい状況が続く中では個人の判断が大事になってくると理解しています」

「僕ら全員がたぶん20年間はサッカーをやってきて、何をすべきかは分かっています。だから自分たちの築いてきたものを信じる以外にありません。フィジカル面とメンタル面の調和が取れなければ、オーストラリアにアウェイで勝つことは不可能です」

 現在のチームについて特に不安な部分のひとつは、セットプレーに対処できていないことだ。

「オーストラリアはそこをさらに突いてくると思います。あまりフリーキックを与えないようにして、与えてしまった時には今日よりもしっかりマークするようにしなければいけません」と吉田麻也はイラク戦の勝利後に話していた。

“パワープレー”は日本に向いている? 向いてない?

 時間が経過するにつれてロングボールに頼りがちになる傾向も、ポゼッションを基礎としたテクニカルなサッカーを志向するチームにとって理想的なものではない。空中戦の対応に熟練しているオーストラリアの選手たちが相手であればなおさらのことだ。

「今日は直接的にゴールに向かうやり方でうまくいきましたが、オーストラリア戦ではより難しくなると思います」と吉田も認めている。だが、イラク戦の決勝点に繋がったアプローチが日本のスタイルには向いていないのではないかという見方にはやや納得できない様子だ。

「今日はそれでチャンスを作れていましたよね?」と吉田は、山口蛍の劇的弾に繋がった終盤のパワープレーについて述べつつ、ロングボール戦術はチームが練習の中で取り組んできたものではないことは認めた。

「練習はしていませんでした。時間がなかったですからね。でも、やり方は全員分かっていると思います。そんなに難しいことではありません。いずれにしても、『パワープレー』が日本に合うかどうかというのは皆さんの書き方次第です」

 監督や選手たちが認めるかどうかに関わらず、今のチーム内に緊張状態があることは間違いない。6大会連続のW杯本大会出場が果たせるのかどうか、不確かさは強まる一方だと感じられる。

 もちろん、サッカーではチームの調子などほんの一瞬で変わってしまう。日本代表が最終予選で出遅れたからと言って、終盤にかけてその歩みを調整できないとは限らない。オーストラリアにアウェイでの初勝利を挙げることができたとすれば、今後の立て直しに向けた強固な基礎を生み出すことができるのは間違いないだろう。

 岡崎慎司は、それが決して不可能なことだとは考えていない。

「豪州はそれほど自信満々ではない」(岡崎)

「僕らはジンクスを破ることができると信じています」と、この1年間で番狂わせの起こし方を経験してきたレスター・シティ所属のFWは木曜日に語っていた。

「実際のところ、今のオーストラリアには以前ほどヨーロッパで活躍できている選手がいるわけではありません。もちろん、日本にもクラブで控えの選手は多いですが、オーストラリアがそれほど自信満々というわけでもないと思います。

 本当に接戦になるでしょうね。どちらにもプライドがありますが、今のオーストラリアがそれほど自信を持っているわけではないと思いますので、そこを有利に活かせるようにするべきだと思います」

「そういう意味では、五分五分じゃないですかね。こういう大きな相手を倒せるようにしなければいけないですし、その点でイラク戦の勝利はすごく大きかったと思います」

 常套句ではあるが、サッカーでは次の試合こそが最も重要な試合だ。日本が“サッカールーズ”との試合で結果を出せなかったとすれば、ロシアへの道のりを軌道修正するためにはさらに大きな勇気が必要となってくるのは間違いない。

(取材・文:ショーン・キャロル)