元代表はホームの母国オーストラリア勝利を予想

 日本代表にとってロシアW杯最終予選で最も重要なアウェイゲームが11日のオーストラリア戦だ。長年ライバル関係を築いてきた両国。ホームのオーストラリア側はこの試合をどう見ているのだろうか。現代表選手、元代表、メディアの3つの視点から大一番を展望する。(取材:植松久隆・舩木渉、文:舩木渉【メルボルン】)

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 まさに「大一番」と言って差し支えないだろう。日本代表は11日、アウェイでロシアW杯アジア最終予選のオーストラリア戦に臨む。どちらにとっても勝たなければならない試合だ。

 会場となるメルボルンでも徐々に試合へ向けて緊張感が高まってきている。8日に行われたAリーグ開幕戦のシドニー・ダービー(ウェスタンシドニー・ワンダラーズ対シドニーFC)が記録した6万1880人という記録には及ばないが、約5万4000人収容のドックランズ・スタジアムには4万数千人の観客が集まると見られている。

 現在のオーストラリア代表の大半は海外組が占め、国内組はティム・ケーヒルしかいない。そのためAリーグでは元代表や代表クラスの選手たちが多くプレーしている。彼らに話しを聞いた。

 シドニーFCに所属するアレックス・ウィルキンソンはオーストラリア代表として2014年11月の日本戦(2-1で日本が勝利)に出場し、韓国や中国でプレーした経験もあるなどアジアを知り尽くしたベテランDFだ。

 今年5月以降代表からは遠ざかっているものの、ウィルキンソンは「オーストラリアが勝つと思う」とホームチームの勝利を予想する。

「日本とはいつもいい試合をするし、ずっとライバル関係にある。ここ数年オーストラリアは勝っていない」とリスペクトを示しながらも、「今回はホームだから僕らが勝って3ポイントを獲得できると思う」とホームアドバンテージが両チームの間に差を生むと分析した。

「ホタルのゴールはラッキー」。元J戦士も豪州勝利を望む

 ウェスタンシドニー・ワンダラーズのミッチ・ニコルスは、セレッソ大阪在籍経験があり、最近も日本代表の試合をチェックしているという。イラク戦も見たようで、「ホタル(山口蛍)のゴールはラッキーだったね(笑)」と元チームメイトの活躍に笑顔を見せた。

 11日の日本戦はC大阪時代からの仲で、今季から再びチームメイトになった楠神順平の自宅で「一緒に夕食を摂りながら見る予定」と教えてくれた。2人は遠征でも同じ部屋をシェアし、良い関係を築いている。

 ニコルスにとって、オーストラリア代表として最後に出場したのが2014年11月の日本戦だった。この試合も合わせて、過去に2度同カードでプレーしている。そして「たくさんの選手が海外でプレーしているし、素晴らしいチーム」と賛辞を送った。

 だが、やはり「オーストラリアが勝つ」と結果を予想する。ここ2年ほど代表から遠ざかっているものの、アンジ・ポステコグルー監督のチーム作りには好印象を抱いているという。

「今回はホームゲームだ。これまでオーストラリアと日本は様々な大会でライバル関係にあった。だからホームではオーストラリアが勝つと信じている」

 ウィルキンソンと同じく、ニコルスもホームアドバンテージの大きさを指摘した。自国民の声援を背にプレーできる誇りと喜びがオーストラリアの選手たちのエネルギーをいつも以上に引き出すということだろうか。

二分された記者の見解。不安定な気候も影響?

 チーム事情や現代表選手たちのことを直接知る元代表選手ではなく、メディアはこの大一番をどう見ているのだろうか。地元メディアの記者たちに話しを聞くと、「引き分けの可能性も…」という声が挙がった。

 有力誌『Four Four Two』オーストラリア版のクレメント・ティト記者は「いつも油断ならない相手」と日本代表の印象を語る。

「ここ数年は毎回ドローでもおかしくないくらい拮抗した良いゲームになる。オーストラリアの前線への放り込みは危険だ。それに我々は勝利を必要としている。だけど、またギリギリの試合をしてドローになるんじゃないかとも思っている」

 ティト氏は最近の戦績を踏まえ、ホームかアウェイかに関係なく1点が勝負を分ける試合になると分析した。一方で、「日本はUAEに負けたよね。あの試合が重要だったのは明らかだ」と未だ無敗のオーストラリアに若干のアドバンテージがあることも付け加えている。

 若手記者の目線とは違った見解を述べたのは、高級紙『オーストラリアン』でサッカー部門のチーフを務めるレイ・ガット記者だ。

 長年の経験を持つベテランは「(日本は)いつも強い。W杯にも何度も出場しているし、非常に優れたチーム」としながら、「難しいゲームになると思う。勝った方がこの予選を突破する、というくらい重要」と11日の試合が持つ意味を語った。

 そして「オーストラリアにとってはホームだ。単刀直入に言えば(オーストラリアが)勝つと思う。多くの選手がこの場所でプレーした経験がないんじゃないか? 日本にとっては難しい試合になるだろう」と楽観的な見方を示した。

 現在メルボルンは春で全般的には過ごしやすい気候だが、天候は不安定で予測しづらい。気温が25度近くまで上がる日もあれば、10度前後まで下がる日もある。9日の午後は嵐のような突風が吹き荒れ、夕方は強めの雨に見舞われた。試合当日の夜は気温5度近くまで冷え込むという予想もある。

 気象条件は両チームにとって同じだが、不安定な気候にうまく対応できるか、慣れているかといった部分には個々の差が出てくる。日本にとってはもうひとつの敵と言えそうだ。

「日本をトラブルに陥れたい」

 ここまでチームの外から見る日豪戦について書いてきたが、当の現オーストラリア代表選手たちは日本戦に向けてどんなことを感じているのだろうか。

「強敵だよ。ブンデスリーガで一緒の選手もたくさんいるし、難しい相手。最終予選に入っては苦戦しているようだが、グループが拮抗してきている中でとても重要な試合になる。3ポイントを取れればいい」

 そう語るのはレバークーゼンに在籍するロビー・クルーズだ。ともにブンデスリーガでプレーする日本代表の原口元気と酒井高徳も要警戒選手に挙げたアタッカーは「アジア最強の2チームが同じ大陸の最終予選で戦うのは素晴らしいこと。誰もが注目するし、すごい試合になる。監督が望むスタイルでプレーしてアジア王者としての威厳を示したい」と意気込んだ。

 現体制でエースストライカーとして起用されているトミ・ユリッチは「彼らには一瞬で試合を決定づけられる非常に危険な存在が何人かいる」と日本を警戒しているが、「今までで一番いいチームじゃないだろうか。その一員であることは自分にとっても非常に重要なこと。そして結果を残し、今はアジア王者でもあり、期待もかけられている。少しはプレッシャーもあるのかもしれないが、それすらも我々には良いこととして進化している。できればそれを続けて、火曜日に日本をトラブルに陥れたい」と勝利だけを見据えている。

「アンジはチームの哲学を変えた」。豪州を支配する自信

 ヨーロッパでプレーしている選手が多く、酷暑のサウジアラビアから移動してきたとあって時差ぼけなどに悩まされているのはクルーズとユリッチも認めた。しかし、2人ともアンジ・ポステコグルー監督が作るチームには大きな手応えを感じている。

「ここまでのも予選の試合や、実績のある国との親善試合でも、ボール保持で上回ってゲームを支配することができている。チームとして大きな成長を見せているし、まだまだ伸びると思う。火曜日にそれを日本相手に試してみたい。

 アンジはチームの哲学を変えた。いつも、彼からは何かしら学ぶことがあり、強い信念に培われた彼の哲学が浸透してきて、ただのパワフルなサッカーだと思われていた我々が今は”良い”サッカーをする、ポゼッションを取って、狭い局面でのプレーの精度とか上手くできている。日本と似たようなことをやるんだから、とても面白い試合になることは間違いない」(ロビー・クルーズ)

「サッカーは日々変化している。どのチームだって、勝つために、相手を走らせて疲れさせるためにボールをできるだけ保持するようにプレーする。(ポステコグルー監督は)素晴らしいね。彼は信念を持ったコーチ。それを曲げることなく進んでいる。彼みたいな素晴らしいコーチが後ろから支えてくれるのは心強い」(トミ・ユリッチ)

 クルーズとユリッチが語るように、オーストラリア代表はこれまでのイメージとは全く異なるチームに変貌を遂げている。ポステコグルー監督は世代交代を進めながら、フィジカルの強さと高さを生かした放り込みを中心としたスタイルから、中盤でボールを支配しながら攻めるポゼッション重視のスタイルへとチームを変えていった。

 元々あったフィジカルの強さは失われておらず、途中から出てくるティム・ケーヒルのようなリーダーシップとゴール前での怖さを備えた脅威も健在だ。

 オーストラリアは着実に進化し、チーム内外には自信が満ち溢れている。日本が「今までと同じ」と高を括って新たなスタイルへの対策を怠る、調整に失敗して万全の状態でないなど不安を抱えて試合に臨めば、確実に足元をすくわれてしまうだろう。勝敗を決めるのはディティールの中に潜むごくわずかな差だ。

(取材:植松久隆・舩木渉、文:舩木渉【メルボルン】)