岡崎と香川の決意。出場へ強い意欲

 イラク戦のパフォーマンスにより、世代交代の到来と言われた日本代表。だが、当然のことながらまだ“世代間抗争”に決着がついたわけではない。岡崎慎司香川真司の2人は再び闘志を燃やしている。最終予選の大一番・豪州戦は、彼らの存在価値を示す絶好の機会なのである。(取材・文:元川悦子【メルボルン】)

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 2018年ロシアW杯アジア最終予選B組暫定4位という現状から、本大会切符を手にできる2位以内にいち早く浮上したい日本代表。11日の第4戦・オーストラリア戦(メルボルン)に勝てば日本の勝ち点は9となり、グループ最強と言われる相手を上回ることができる。同日にサウジアラビアとUAEが直接対決することを考えても、日本は理想を言えば勝利、最悪でもドローという結果を残す必要がある。

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はドッグランズスタジアムでの前日会見で「何人かの人はまだ日本が一番強いと思っているが、そうではない」と弱気とも取れる発言をしていたが、相手がいくら2015年アジアカップ(オーストラリア)王者であっても、この試合だけは絶対に落とせないのだ。

 大一番を前に、彼らは10日夕方から試合会場で前日調整を行った。6日のイラク戦(埼玉)で左足首捻挫を負い、3日連続練習を回避した岡崎慎司(レスター)がこの日から合流。メディア非公開時の戦術練習も全てこなした模様だ。

「今日もっといい状態で練習するために昨日はやらなかった。80〜90%はできるし、僕の場合は多少痛くてもできる」と背番号9をつける点取屋は強行出場を志願しており、オーストラリア戦も再び1トップで先発する可能性が高まった。

 一方で、イラク戦で出番なしに終わったエースナンバー10・香川真司(ドルトムント)もスタメン復帰への強い意欲を抱きつつトレーニングに参加した。

「(オーストラリア戦で)うまく行こうか行かなかろうが、僕たちは90分通してやり続けないといけない。明日は厳しい時間帯が沢山あると思っているし、その中でどれだけ耐えられるかがキーになる。みんながそういう姿勢を持ち続けることが何よりも大事。ここ3試合と違う展開にもなりえるんで、それをしっかりと頭に入れながら頑張りたい」と彼は目をぎらつかせ、闘志をむき出しにしながら語っていた。

ハリルのスタイルが活きるか。香川「カウンターがキーに」

 イラク戦は本田圭佑(ミラン)を含め、彼ら北京五輪世代の3本柱が全くと言っていいほど結果を残せなかった。日本の劇的勝利の原動力となったのは、原口元気(ヘルタ)、山口蛍(C大阪)、清武弘嗣(セビージャ)らロンドン五輪世代。

 今回のオーストラリア戦は日本のロシア行きの命運を左右するのと同時に、世代交代の流れが一層加速するか、これまでの看板選手たちが再び君臨するのかという大きな岐路でもある。

 岡崎と香川にしてみれば、自分たちが6〜7年かけて築いてきた実績と地位をそう簡単に手放すわけにはいかない。今回はともに先発するかは未知数だが、ピッチに立つチャンスが訪れるなら、2014年ブラジルW杯最終予選を含めたオーストラリアとの数々の死闘の経験値が活きてくる。

 香川であれば、2012年6月の2014年ブラジルW杯アジア最終予選・アウェイ戦(ブリスベン)、2013年6月の同ホーム戦(埼玉)、2014年11月の親善試合(大阪)とこの4年間で三度も宿敵と対峙している。

「4年前はロングボールで起点を作られて苦しんだ。今のオーストラリアはポゼッションサッカーに切り替えている部分があると思うので、そういう相手に対して今の狙いは1つ活きる。

 カウンター、ショートカウンターを含めて、ボールを取った後がキーになるんじゃないかなと思っています」と、彼は今回の敵がハリルホジッチ監督の目指す戦術が出しやすい相手であることを強調していた。

豪州をどう崩す? 岡崎が語る裏の使い方

 ここまで最終予選3戦の日本は、前々からの持ち味であるボール回しができず、本田や清武らが苛立ちをにじませることもあった。が、今回はそういうフラストレーションを感じることなく、割り切ってタテを狙っていきやすい。

 岡崎も「自分たちは回すサッカーで1回、世界にチャレンジして通用しなかった。今はそこから脱皮し、成長するためにも臨機応変さが必要。ここでオーストラリアを制することができれば、気持ち的に余裕が出てくる」と前向きに語り、スピーディーな攻めを思い切って仕掛けていく覚悟だ。

 とはいえ、ただ単調に裏ばかり狙い続けても、フィジカルに強みを持つ相手には簡単に跳ね返される。そこで求められるのが、相手を揺さぶるようなリズムの変化と工夫だ。その重要性を代表経験豊富な2人はよく分かっている。

「(狙いどころの)1つは裏だと思う。サイドの裏なのか、中央で単純に一発を狙うのかってところがあると思うんですけど、単調なボールで裏を抜けるのは難しい。サイド攻撃しながらたまに中央に入れて、そこからダイレクトで裏を狙うとか、ひと工夫がこの相手には利く。

 サウジ戦も見ましたけど、サイドが深い意味まで切り込んだ時にマイナスが利く。速さのあるプレーが求められてくる」と岡崎は言う。

 香川も「早いタッチで、両サイドをうまく使いながらやることが必要だと思うし、両サイドに走る選手、スピードのある選手がいるので、カウンターになったら迷わずにみんな速いスピードで展開していければ、必ずチャンスはある」と外をうまく使う重要性を指摘した。

自分たちの存在価値を証明するための大一番

 国際Aマッチ103試合出場49得点の岡崎、82試合出場27得点の香川なら同格以上オーストラリア相手でも冷静な対処ができるはず。その老獪さやずる賢さをここでしっかりと示せれば、彼らの評価は再び上がるに違いない。

「どういう時にチームが一番うまくいっているか。やっぱりキヨだったり、真司だったり、トップ下に入る選手がのびのびやれている時。センターFWの自分があいつらといかにうまくリンクしていくか。それがいいサイド攻撃につながったりする。

 距離感にしても、ポジショニングにしても、FWの自分が点を取るためにも、トップ下と活かし活かされていくところが重要テーマ」と岡崎は語る。

 彼が悩める香川を力強くサポートし、お互いのよさを引き出しあえるように仕向けていければ、ロンドン世代の面々が組むのとはまた違った特徴や強みを出せるはずだ。当然、タテ関係に位置する2人が再び輝けば、日本の攻撃陣には新たな厚みが生まれてくる。

 岡崎と香川は突き上げてくるロンドン世代と戦わなくてはならない。その戦いに勝つためにはその存在価値を今一度、実証しなくてはならない。アウェイで一度も勝ったことがない宿敵・オーストラリアとの一戦は、その大きなチャンスなのである。

もちろん、主力の座を狙っているロンドン世代にとっても同様なのだが。

(取材・文:元川悦子【メルボルン】)