守備的な戦術。「ハッキリとカウンター。嫌ではない」、長谷部は前向き

 豪州に敵地で1-1、勝ち点1を確保した日本代表。数字を見ればアジア王者相手ということもあり、この結果は一定の評価ができる。ただ、この日のスタイルに困惑する選手がおり、反省点があったことも事実。ハリル流を推し進める上では危険性もともなう。(取材・文:元川悦子【メルボルン】)

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「確かに何人かはまだ日本が一番強いと思っていますけど、そうではないですよね。アジアチャンピオンのチームとやるわけですから、強い気持ちを持って大きな仕事を成し遂げるつもりでやらないといけないと思います」

 11日の2018年ロシアW杯アジア最終予選第4戦・オーストラリア戦(メルボルン)を控えた前日会見で、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は相手へのリスペクト発言を何度も繰り返したが、それは本番の戦い方の伏線だった。

 指揮官は勝ち点1以上を死守するために守備的な戦術を選択。相手にボールを持たせてカウンターを狙うという、いわば「W杯仕様」のサッカーでB組トップのチームに挑んだのだ。

 その戦い方は、前半はある程度機能した。開始5分に原口元気(ヘルタ)のボール奪取から長谷部誠(フランクフルト)、本田圭佑ミラン)とつながり、最終的にはスルーパスに抜け出した原口がGKと1対1を制して左足を一閃。待望の先制ゴールを手に入れた。

 その後も高い位置からボール奪取を試みて守から攻への鋭い切り替えを駆使し、原口や本田が決定機を迎えるなど、前半はボール支配率が67対33ということも気にならないほど、日本が優位に立っていた印象だった。

 ところが、後半開始早々、相手左サイドバック、ブラッド・スミス(ボーンマス)の突破からのクロスに日本守備陣が反応しきれず、戻ってきた原口がトミ・ジュリッチ(ルツェルン)を後方から倒す形になった。

 これでPKを取られた日本はミル・ジェディナク(アストン・ヴィラ)に同点弾を決められ、そこからはラインがズルズルと下がり始める。その結果、相手に圧倒的に支配され、防戦一方の展開を余儀なくされてしまった。

「今日は相手に回させてからのカウンターをかなりハッキリとやった。そんなにボールを回されても危ないシーンは作られてなかったし、嫌だなという感覚はなかった」と長谷部は前向きにコメントした。

本田ら反省「『支配された』に変わった」。アジアで主導権握られる危険性

 ところが、彼とボランチを組んだ山口蛍(C大阪)は「結構、簡単にクリアを蹴ったりしていた。繋いでもいいのかなと思うところでもクリアしていた。相手が前から来るから危ないと思ったらクリアでもいいと言われていたから、戦い方としては仕方なかったと思いますけど」と、指揮官の意図に理解は示しつつも要所要所でボール保持できなかった反省を口にしていた。

 前線で起点になりきれずに体力を奪われ、途中交代した1トップ・本田も「前半は『支配させる』って感覚でいたけど、後半は『支配される』に変わった。支配させるゲームプランのまま2点目を狙いにいけたんであればもう少し評価できたけど、後半は反省の方が多かった」とズバリ問題点を指摘。不完全燃焼感を抱えた選手がおり、反省点が多かったことは事実だ。

 ハリルホジッチ監督にしてみれば、B組最強チームから敵地で勝ち点1を得られれば御の字だった。終盤に原口に代えて丸山祐市(FC東京)を投入した采配には、その意向が色濃く表れていたし、選手たちも指揮官の考えを理解していた。

 ただ、相手がW杯で対峙する強豪国ならともかく、今回の敵は同じアジア勢。そこで70%近くポゼッションされ、主導権を握られれば、「日本は決して強くない」という印象をアジア中に与える結果となり、日本へのリスペクトが薄れてしまいかねない。

 実際、6日にホームで戦ったイラクも堂々と立ち向かってきた。この試合後、本田が「僕らを必要以上にリスペクトしていないっていうのは腹立たしいことで、本当はこっち側がうざいぐらいに回して、向こうがうざいって思うぐらいに回さないといけない」と語気を強めたのも、アジア勢からより一層、軽視されるという強い危惧があるからだ。

困惑する香川。スタイルの使い分け、選手とのズレを解消すべき

 オーストラリア戦後半は「強くない日本」を印象づける顕著な例だったかもしれない。日本の決定機らしい決定機は29分の小林悠(川崎)のゴール前でのヘッド、40分の原口の抜け出しに浅野拓磨(シュツットガルト)が飛び込んだ得点機くらい。その全てがカウンターだった。9月のタイ戦(バンコク)以来のトップ下で先発しながら得点に絡めなかった香川真司(ドルトムント)は、この厳しい現実に困惑を隠せなかった。

「圭佑君だけを前に残しながらも、中盤からディフェンスラインの選手たちが最終ラインくらいまで下がっちゃった。それは分かっていたけど、そこから押し上げていくには前線との距離もありすぎた。

 攻撃は元気から拓磨であったり、サイドを中心に2〜3本のカウンターしかチャンスがなかったし、そこで起点を作る以外に筋道が見えなかった。チームとしてどうやって攻撃していくかという意味では大きな課題が残ったと思います」と前線で孤立したエースナンバー10は苦しい胸の内を吐露するしかなかった。

 2014年ブラジルW杯で惨敗した日本に新たな戦い方が求められているのは事実。アジア最終予選のうちからタテへの意識を強めていかなければ、いざ世界に出た時にそのスタイルを実践できないのも確かだ。

 しかしながら、アジア相手ではもう少しボールを保持し、カウンターとポゼッションの上手い使い分けをしてもいいはず。その比率を今一度、指揮官と選手たちの間でキッチリ詰めていくべき時に来ているのではないか。

 日本がアジアを確実に勝ち抜こうと思うなら、その作業を怠ってはいけない。今回、浮上した疑問をきちんと直視し、いち早く解決の方向へ持って行かなくてはならない。

(取材・文:元川悦子【メルボルン】)