複雑な守備組織を完璧にこなす

 10月11日、日本代表は2018ロシアW杯アジア最終予選のオーストラリア戦に臨んだ。ここまで内容の芳しくない試合を続けてきた日本だったが、アジアカップ王者を相手に守備組織をしっかりと構築し、アウェイの戦いで勝点1をもぎ取った。(取材・文:西部謙司【メルボルン】)

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 ここまでの4試合では最高の出来だった。複雑な守備のオーガナイズを完遂し、オーストラリアにほとんどチャンスを作らせなかった。攻撃が物足りないのは確かだが、守備を作り上げるので精一杯だったので今回は仕方がない。

 オーストラリアは中盤をダイヤモンド型に組む。対する日本は守備時に4-4-2と4-3-3(4-5-1)を変化させながら対応していた。動き方が複雑なので要点を絞ると、日本の左サイドに展開されたときには香川が引いてMFのムーイをマークする。右サイドは山口と長谷部がマークを受け渡す形でルオンゴ、ロジッチに対処した。ほかにもCBへの守備、ジェディナクをフリーにしないなど対応は複雑だったが、ほとんど誰もポジションを間違えなかった。とくに香川のポジショニングセンスの良さは際立っていた。

 日本の守備組織が上手く機能したのは、オーストラリア側の問題もある。

 2トップが日本のディフェンスラインの裏に位置(オフサイド・ポジション)していて、「深さ」を作ろうとしていたのだが、中央のFWで深さは作りにくい。サイドが高い位置を張るならば、日本のCBは上がれなくなるが、中央の2人なら放置しておけばいいだけ。日本のラインは全く下げる必要がなくコンパクトな状態をキープできた。コンパクトになっているので、FWが下がって受けようとしてもスペースがなく、攻撃の起点を作れなかった。

 前半で唯一危険だったのは、左SBスミスの攻撃。日本の左サイドから右サイドへ振られたときのMF対応が待ち受けなので、どうしても日本の右奥を使われてしまうからだ。しかし、それも大きなピンチにはならず。前半の守備はほぼパーフェクトといっていい。

危機をしのぎきるも、得点への布石は希薄

 ビルドアップ時にボールサイドのMF(ムーイまたはルオンゴ)が引き、SBが上がって、3枚回し+ジェディナク(アンカー)になる形に対して、日本は陣形を変化させながら抑え込んだ。2トップも無力化され、もともとヒラメキの乏しいオーストラリアは攻めあぐんでいた。誰か不規則に動く選手でもいれば違っていたかもしれないが、オーストラリアはあまりにも彼らの定石どおり。ハリルホジッチ監督に読み切られていた。

 日本の守備が危なくなったのは、後半25分を過ぎたあたりからだ。さすがに疲労が出てきてプレスが遅くなり、全体が下がってしまった。ラインが下がった日本に対して、オーストラリアは得意のハイクロスを仕掛ける。FK、CKも脅威になった。しかし、ロスタイムにはDFの丸山を左MFで起用するなど、何とかしのぎ切った。

 この点は、監督本人も試合後に言っていたとおり、フレッシュな選手を早めに入れたほうが良かったかもしれない。

 日本の攻め込みは少なかった。5分で先制できたので、相手にボールを持たせながらの戦いになっていた。複雑な守備組織を作るのに時間をとられて攻撃に手が回らなかった感もある。ただ、得点以外に2回の決定機を作れていて、カウンターはそれなりに鋭さがあった。浅野が登場してから、斜めのランで相手の裏を突破しかけた場面もあり、今後の武器になりそうだ。

 しかし、攻撃面は確かに物足りない。守備から攻撃の移行をスムーズに行う必要がある。そもそも守備の開始地点が常にハーフウェイラインからで、前からはめ込む守備がほとんどなく、これでは攻撃回数は多くならない。先制できたから良かったものの、そうでなかったら展開は違ったものになっていたかもしれない。

(取材・文:西部謙司【メルボルン】)