第2次政権で首脳陣とケンカ別れ

 素晴らしい実績を残してきた監督であっても、いつかは別れがやってくる。だが、あまりに唐突に離別の時が訪れることもある。芳しい結果を残せずにクラブから解任を言い渡される監督もいれば、方針の違いなどから自ら辞任を申し出る指揮官もいる。今回は、16/17シーズンに入り、早くも監督の座を退いた5人の名将を紹介する。

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ロベルト・マンチーニ(インテル

 昨季のインテルは最終的に4位でシーズンを終えたものの、一時的に首位に立つなど近年の不振から脱する方向へと進んでいた。ロベルト・マンチーニも今季はCL出場権獲得を、と意気込んでいたはずだったが、開幕前に突然の辞任劇に見舞われた。

 原因は、選手補強やクラブ売却の方針でフロントとマンチーニ監督の意向が決裂したからだと報じられている。

 インテルではリーグ3連覇を達成するなど黄金期を創出し、7シーズンぶりに満を持して監督に復帰したマンチーニ氏だったが、第2次政権は首脳陣とのケンカ別れというバッドエンドで終わってしまった。

 新監督には、現役時代にバルセロナなどで活躍したオランダ人のフランク・デ・ブールが就任。前監督のマンチーニは長友佑都を戦力外から一転して重宝するなどリーグ後半戦に出番を与えているが、デ・ブール体制では出場機会が激減している。

元CL優勝監督

ロベルト・ディ・マッテオ(アストン・ヴィラ

 チェルシー時代にはクラブ史上唯一となるチャンピオンズリーグ優勝をもたらしたが、イタリア人指揮官の先に待っていた指導者キャリアは決して栄光の道ではなかった。

 舞台をドイツに移してシャルケの監督に就任するも、チームを再建させることができず解任。そして今季、プレミアリーグ発足以降初めて2部降格を喫した古豪アストン・ヴィラの監督に満を持して就任するも、その夢は儚く散った。

 チャンピオンシップ(イングランド2部)で残した成績は1勝7分4敗、わずか1度しか勝ち星を挙げることはできず、1年でのプレミア昇格を目指したチームは19に低迷。わずか124日間という短命政権に終わり、元CL優勝監督はあえなく解任となった。

1部昇格&2シーズン連続6位も電撃辞任

マルセリーノ・ガルシア・トラル(ビジャレアル)

 2013/14シーズンに、当時は2部リーグにいた“イエロー・サブマリン”(ビジャレアルの愛称)の監督に就任したマルセリーノ・ガルシア・トラルは、その年でチームを2位に押し上げて1部昇格へと導いた。

 その後は2シーズン連続で6位という好成績を収めるなど、スペイン人指揮官はクラブの功労者であった。

 しかし、選手の補強や起用に関する方針でフロントと仲違いが生じ、3年残っていた契約を解消することを決断した。

 CLプレーオフのモナコ戦を1週間後に控える突然の電撃辞任だったことが影響してなのか、チームはホームとアウェイで連敗を喫し本大会出場権を逃してしまった。

超攻撃的フットボールの信奉者

パコ・ヘメス(グラナダ)

 フランシスコ・ヘメス・マルティン、通称“パコ”・ヘメスは、何と言っても超攻撃的フットボールの信奉者である。

 11/12シーズンに当時セグンダ・ディビシオン(スペイン2部)だったラージョ・バジェカーノの監督に就任し、自ら哲学を植えつけるとスペイン首都にある小規模クラブを4シーズン連続で1部に残留させる。

 しかし、ラージョは昨季で2部に降格。パコ・ヘメスもグラナダの監督に鞍替えするが、最下位から抜け出すことはできず。スペインフットボール界の異端児は解任の憂き目にあった。

就任後わずか2日で辞任の“エル・ロコ”

マルセロ・ビエルサ(ラツィオ)

“エル・ロコ”(スペイン語でクレイジー)の愛称で知られるマルセロ・ビエルサ。文字通りサッカーマニアとして知られるアルゼンチン人指揮官だ。

 これまで監督を務めた場所では常に攻撃的でスペクタクルなフットボールを展開しており、ラツィオの監督就任が決まると、「イタリアの地でもビエルサのサッカーが見られるのか」という期待が高まった。だが就任発表から2日後に、まさかの辞任が発表された。結局、“エル・ロコ”は1試合もラツィオの試合を指揮することはなかった。

 ビエルサが辞任の決断を下した理由は「要求した選手が誰1人獲得されなかった」というもの。実にビエルサらしい理由だ。ビエルサは極めて真面目な人間だ。真面目すぎると言ってもいい。

 ビエルサの真面目過ぎる人柄を物語るエピソードがある。アスレティック・ビルバオ時代、練習場の工事が遅れていたことに腹を立てたビエルサは、工事担当者と取っ組み合いになった。そこで「ビエルサに殴られた」と主張する工事担当者は、裁判所へ訴えを起こそうとするも、クラブが圧力をかけて制止。立場を守られたはずのビエルサだったが、ここから“らしさ”を発揮する。「彼には私を訴える権利がある」と、工事担当者に対するクラブの圧力を非難した。常人離れした真面目さであり、これこそが“エル・ロコ”たる所以である。

 そんなビエルサからすれば、約束を守れないことは許せないのだ。ビエルサを監督として迎え入れるクラブはそれを頭に入れておかなければならない。「出来もしない約束などするな」と。