マサチューセッツ州は8月、米国で初めて、雇用主が就職希望者に過去の給与を尋ねることを禁じる法律を成立させた。この新たな同一賃金法は2018年7月から施行される予定だが、筆者は同州に続いて他の各州も、同様の法律を導入するべきだと考える。

その理由は以下のとおりだ。

1.どのポジションも、給与には幅がある。就職希望者に過去の給与を明かさせることは、悪質な雇用主に、募集中のポジションについて実際よりも低い給与を提示したり、経験に関係なく給与幅の下限を提示したりする格好の理由を与えることになる。能力ではなく過去の給与という無関係な要素に基づく、不公平な給与格差が生じることになる。

2.マサチューセッツ州が法改正を行った理由は、女性や少数民族の過去の給与が不当に低い傾向にあるからだ。就職希望者の過去の給与情報が不平等な給与額の提示につながる状況が許され続ければ、こうした給与格差は拡大する一方だ。

3.職場が自宅に近いなどの理由や家庭の事情など、自分の市場価値とは関係のない理由から給与の低い仕事に就いている人もいる。そのため各企業が就職希望者の過去の給与を調べることが許されると、その人物の市場価値を誤って判断することにつながる可能性がある。

4.就職希望者の人種や配偶者の有無、妊娠中か否かなど、職務と明確な関係のない要素を採用決定の材料にすることは、法律で禁じられている。過去の給与額だって、就職希望者が職務を果たす上での資質とは関係がないはずだ。

5.人が転職を考える大きな理由の1つが、現在の仕事の給与が不当に低いと感じていることだ。雇用主がそうした人の過去の給与情報を要求することができてしまったら、彼らはいつまでたっても適正水準の給与を得ることができない。

6.雇用主の中には、当該職務に対する就職希望者の資質をはっきりさせるために過去の給与情報が「必要」だと言う者もいるが、両者の相関関係は当てにならない、あるいは証明されていない。

筆者は長年、人事の仕事をしてきた経験から、過去の給与とその人物の適性には全く関係がないことを知っている。採用(あるいは給与額の)決定を下す上で、過去の給与情報に頼るのは怠惰な採用担当者だけだ。

7.就職希望者の過去の給与が、募集中の職務の給与よりも高い、あるいは「資格要件を満たすはずがない」と思うほど低い場合、面接もしたくないと考える雇用主もいる。これは有能な人材とそれを求める採用担当者をわけもなく引き離す、主観的な判断だ。

8.就職希望者の市場価値を判断し、初任給の希望額を制限する方法として過去の給与情報を使っている人事担当は「前職の賃金を基準に8〜10%増のラインを検討する」などと言うだろう。だが例えば配管工を雇う際、私たちは「前回のクライアントに請求した金額」ではなく「時給がいくらか」を基に判断を下す。仕事の人材募集もそれと同じでいいのでは?

9.アメリカ企業や、アメリカ式のやり方を導入している海外企業はどこも「給与はその人個人に払うのではなく、ポジション(職務)に払うものだ」という標語を掲げている。これが本当ならば、ある人物にどれだけの給与を支払うかを決めるのに、その人物が別の職場でいくら稼いでいたかを知る必要はないはずだ。

10.経歴書や面接を基に就職希望者を評価できないならば、採用担当者の方にそもそもの資質がないということだ。就職希望者と仕事をうまく引き合わせる方法を知っていれば、過去の給与情報のような”補助具”は必要ないのだ。採用担当者は今こそスキルを磨き、不公平な情報に頼らずに、就職希望者の価値を自力で評価する方法を学ぶべきだ。

就職希望者に無理やり過去の給与などの個人情報を明かさせる必要はない。新しい時代を受け入れ、就職希望者には彼らの価値に基づく給与を支払えばいいのだ。優秀な人材担当者は、ずっと前からそれを実践している。

Liz Ryan