革新的ながん研究の支援を目的とする慈善プログラム「The Stand Up to Cancer(SU2C、スタンド・アップ・トゥ・カンサー)」は8年前の立ち上げからこれまでに、3億7,000万ドル(約376億5,140万円)を複数のがん研究プロジェクトに提供してきた。がん研究がこうした団体による資金援助から恩恵を受けていることは間違いない。

また、SU2Cが支援した研究者は、米国食品医薬品局(FDA)が先ごろ承認したファイザーの乳がん治療薬「イブランス」(一般名:パルボシクリブ)や、セルジーンの膵臓(すいぞう)がん治療薬「アブラキサン」(一般名:パクリタキセル)などの研究にも関わってきた。

直面する新たな問題

ただし、こうした努力によりがんを克服した患者「がんサバイバー」が増えているということは、コインの裏表とも言うべき別の課題を浮き彫りにしている。米国立がん研究所(NCI)は、この点に関する精査の必要性を訴えている。

NCIによれば、米国のがん経験者は2040年には現在の1,550万人から2,610万人に増加すると予測される。米がん学会(AACR)の学会誌「Cancer Epidemiology, Biomarkers and Prevention(がんの疫学・生体指標・予防)」に掲載された論文によると、その主な理由は団塊世代の高齢化と、より効果的な新たな治療法の増加だ。

NCIは、そうした中で新たに課題となるのは、がん経験者に占める65歳以上の割合が現在の62%から、2040年には73%に増えると推測される点だと指摘する。高齢の患者はがんと同時に、加齢に伴う別の病気にかかる可能性が高い。そうなれば、長期にわたるがん治療の副作用の影響をより強く受けることになる。

がん予防を専門とするNCIの研究員で論文の主著者であるシャーリー・ブルースマンは、「米国でがん経験者が増加する理由は、他にもある」「早期発見につながる検査方法や治療法の改善などだ」と説明している。

高齢のがんサバイバーと併存症

また、ブルースマンによるとNCIはがん経験者に関する1975〜2011年のデータと米国勢調査局のデータを基に前述のような予測を立てたが、その際には別の意外な発見もしていた。


それは、例えば70〜74歳のがん経験者の半数には、がんとの診断を受ける前に別の病気、「併存症」が確認されていたということだ。さらに、深刻な併存症を起こすがん経験者の割合は60〜69歳で26%、85歳以上で47%など、年齢によるばらつきが見られた。また、がんサバイバーのうち併存症を起こす人が最も多いのは、肺がんの経験者だった。

NCIの研究結果によると、高齢のがん経験者の間に最も多い併存症は、慢性心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、糖尿病となっている。これは、がんを経験していない人たちの間でも同様によくある病気だ。だが、NCIはこれらに関連して、いくつかの注目すべき傾向を確認した。

例えば、大腸がんの経験者はその他のがんの経験者に比べ、心不全を起こす割合が高い。一方、年齢やがんの種類に関係なく、全てのがん経験者に最も一般的な併存症は、糖尿病であることが分かった。

がん撲滅に向けた取り組みの成果が出始めている中で、米国の医療制度には高齢の患者の急増に向け、十分な準備をしておくことが望まれる。高齢のがん患者を対象としたより多くの臨床試験を実施するだけでなく、治療を終えたがん経験者のための支援体制を整えておくことなどが必要だ。

ブルースマンは、「増加する高齢のがん経験者たちの増加に対応するため、医師や看護師、介護者などが連携して治療やケアにあたる体制作りについて、真剣に考える必要がある」と指摘している。

Arlene Weintraub