医療関連コストは高騰を続けており、各企業はこれ以上の高騰を阻止すべく、強力なクラウドコンピューティング・ネットワークやネット接続された機器を活用している。

オランダ電機大手のフィリップスと米半導体大手クアルコムは8月末、インターネットを介した健康・医療情報サービスの開発で提携すると発表した。メディケア(米高齢者向け医療保険制度)は毎年、回避可能な再入院に推定170億ドル(約1兆7,300億円)を費やしている。患者が再入院する原因は多くの場合、糖尿病などの複数の慢性疾患の合併症だ。

これまで注目を集めてはいなかったが、クアルコムの医療系子会社クアルコム・ライフは、薬剤の吸入器や生体情報センサー、セルフケア向け血糖測定器を切れ目なくつなげた2Net(ツーネット)プラットフォームを開発。一方のフィリップスは、医療システム、医療サービス提供者と個人向けのオープンなクラウドベース・プラットフォームであるヘルススイート(HealthSuite)を開発した。

この2つを連携させることで、きわめて大規模で拡張性のあるエコシステムが誕生する。また医療サービス提供者が、高額なコストのかかる緊急救命室から患者の自宅へと治療の場を移すことによって、新しいニッチな医療ビジネスも生まれることになる。

監査法人のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)は、インターネット接続型の医療ケア市場について、2020年までに610億ドル(約6兆2,100億円)規模に成長するとの見通しを示している。現在の水準からすると、毎年33%もの成長を遂げる計算だ。

関連するあらゆる部分で成長が予想されており、インターネット接続型の医療機器は2020年までに140億ドル(約1兆4,250億円)規模に、インターネット接続型のサービスは450億ドル(約4億5,800億円)になると見込まれている。現在の水準に照らすと、それぞれ年間成長率は37%と31%になる。

このPwCの予想は控えめなものかもしれない。先進国の多くで医療関連コストが持続不可能なペースで高騰を続けるなか、各国の政策立案者たちは、病気の治療と同様に健康の維持も重要であるという総意に達している。インターネット接続型の医療は、特に慢性疾患を患う患者たちに自己管理を促しながら、コストの削減も実現できる。ウィン・ウィンの方式だ。

フィリップスとクアルコムの提携は、両社にとってベストなタイミングだった。

フィリップスのヘルススイートのデータの保管・集約・分析能力は業界トップだ。クラウドコンピューティングの進歩は、これら全てをさらに大きなスケールで行うことができることを意味する。そしてクアルコムの2Netは医療サービス提供者たちが、患者の所有する医療機器やスマートフォン、あるいはその他のウェアラブル端末を通じて、個人向け治療のカスタムアプリケーションを作れるようにするものだ。

例えば、アップルウォッチを持っている患者が、自分がかかっている病院とリアルタイムで連絡を取るようになる時代が到来するのも想像に難くない。気味が悪いといえば、ある意味そうかもしれない。だがそういう時代はやって来る。そして私たちは、おそらくそれを歓迎するだろう。

フィリップスのジェロエン・タスCEOの言葉が、今後の見通しをよく表している。「患者の自己管理と治療ネットワークへの接続を組み合わせたモデルが台頭しつつある。これは患者と医療サービス提供者にとって、慢性疾患のスケーラブル(拡張可能)な管理を可能にするモデルだ」

Jon Markman