消費財大手の米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)はこれまで、エントリーレベルの職種以外ではほとんど、外部からの人材登用を行ってこなかった。徹底した「内部昇進制」を導入してきたのだ。

だが、改革を推進する同社はこのほど、これまでの方針を転換し、食品・飲料大手の米モンデリーズ・インターナショナルでメディア・ディレクターを務めてきたジェリー・ダンジェロを、自社のグローバル・メディア・ディレクターに起用すると発表した。ダンジェロがP&Gで成功のチャンスをつかむには、進化し続けるP&Gの企業文化になじむため、膨大な時間とエネルギーを投じる必要があるだろう。

P&Gの内部昇進制は長年にわたり、同社の柱の一つとなってきた。そしてそれは、同社が強力な企業文化を保つ上での大きな利点にもなってきた。同社内で「正しいことをする」とはどういうことか、全ての社員が理解している。また、社内文書はA4の用紙1枚にまとめなければならないことも皆が知っている。だが、一方で内部昇進制にはマイナス面もあった。主に、新しい発想や考え方に対する抵抗などだ。

ただ、実際のところ同社は、これまでにも多くの人材を外部から採用している。技術と販売の分野では必要に迫られ、例外的に外部からの採用を容認してきた。また、長年にわたって行ってきた一連の企業買収によっても、数多くの新たな人材が流入している。

新CEOの挑戦

昨年からP&Gを率いているデビッド・テイラー社長兼最高経営責任者(CEO)は、これまでの慣習を変えようとしている。同氏は外部からの採用を増やす方針を打ち出しており、P&G幹部が明らかにしたところによると、その対象にはマーケティング部門も含まれていた。

ただ、幹部クラスを対象とした新メンバーと既存メンバーとの統合を図るためのプロセス「オンボーディング・プログラム」の準備がP&Gにすでに整っているかどうかは不明だ。買収によってP&Gに加わった幹部の多くは、拘束期間の終了と共に退任する一方、P&Gが直接採用した幹部クラスの人材は少数にとどまっている。

一般に、新たに就任するリーダーたちの40%は、最初の1年半のうちにオンボーディング・プロセスに伴う3つのリスクのいずれかにつまずき、失敗する。その3つとは、「適合」「実行」「順応」に関するリスクだ。リスク判定によると、ダンジェロはモンデリーズからP&Gへの移籍に伴い、適合の面で大きなリスクに直面する可能性が高い。

そのため、ダンジェロの場合は基本的なオンボーディング・プログラムに、以下のような調整が必要になる。

1. 一歩先んじたスタートを切る

就任した日からではなく、できるだけ早く準備に取り掛かる必要がある。就任前から、同社の企業文化について学ぶための時間を多く取ることができればできるほど良い。

2. メッセージを管理する

全てのことが人に伝わる。ダンジェロの発言も行動も、広く知られることになる。彼は明確でないことについては即座に確認し、すぐに反応するだろう。この方法が有効な人たちは限られ得ている。大半の人たちにとっては、事前によく検討した考えを示す方がより効果的だ。

3. 方向性を定めチームを作る

新任のリーダーが初日から自力でできることは、失敗することだけだ。ダンジェロはすぐにも戦略、運営、組織に関するプロセスを始動させて、就任から100日以内に自分自身のチームを作ることに全力を注ぐ必要がある。

4. 推進力を維持して結果を出す

新任のリーダーが容易に実行することができ、かつ効果的なアプローチの一つは、就任から6か月間の早い段階で成功を収められる何かを特定し、その点に集中的に時間と労力を注ぐことだ。結果が出れば、ダンジェロはそれを広く公表し、祝うことができる。それは彼のチームとダンジェロ自身に、P&Gのリーダーとしての自信をもたらすだろう。

George Bradt