26日に行われた今年の米大統領選初の討論会で、ハフィントン・ポストはドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが進行役のレスター・ホルトの質問に対しうそで答えた回数を集計した。最終結果はなんと、トランプが16回、クリントンが0回だった。

メディア各社はクリントンの「信用問題」をこぞって問題視してきたが、トランプは今回の討論会に限らず、日常的にうそを並べ続けている。その内容は多岐にわたるが、特に自身に不都合な事実についての虚言が目立つ。

今討論会はこうしたトランプの虚言癖により、全メディアが両候補の主張に対する事実確認の徹底を約束するという前代未聞の状況となった。事実確認を行うファクトチェッカーたちにこれほど多くの仕事が舞い込んだことは、かつてなかっただろう。今討論会での本当の勝者は彼らファクトチェッカーだったのかもしれない。

トロント・スター紙のダニエル・デール記者は、ツイッターなどを通じてトランプの演説やコメントに含まれるうそについて発信し続けている。そこに列挙されている虚言の数々は目を見張るものばかりだ。断固とした態度で反射的とも思われるうそをつき続けるトランプ氏の姿勢は、通常の選挙戦だったらトップニュースとなること間違いなしで、今年の選挙戦はまさに異常だ。

真っ赤なうそを並べ、真実を突き付けられても主張を決して曲げない人に出会った時、多くの人は相手の心理が全く理解できないだろう。自身の虚言が周囲から問題視されているのにもかかわらず、恥じることもなく自身の主張を貫けるのはなぜなのか。

以下に、こうした心理を解説する専門家の意見をいくつか紹介する。これがトランプに当てはまるかどうかは、読者の判断にゆだねたい。

ウェブサイト「エブリデー・ヘルス」は専門家の見解として、強迫観念に駆られた病的虚言者の心理ははっきりと解明されていないとした上で、「強迫観念や、他者の歓心を買いたいという欲求が、こうした習慣につながっている可能性がある」と説明している。

一方、米誌サイコロジー・トゥデーは、「病的虚言」は正式な病名ではなく、反社会性人格障害や境界性人格障害、自己愛性人格障害などのさまざまな病気と関連付けられた症状だと説明。アラバマ大学バーミンガム校のチャールズ・フォード教授の話として、こうした人々にとって、虚言は無意識的に発せられるもので、ある事柄が「起きたかもしれない」という不確定情報はすぐさま「起きた」という確定情報にすり替わると解説している。

ニュースサイト「Vox」は、トランプには自分の都合に合わせて次々と虚言を繰り出す傾向があると指摘し、その理由を理解するのは不可能だと結論している。ウェブサイト「ライブ・サイエンス」もエール大学のチャールズ・ダイク教授の話を引用し、「病的虚言者には、自身の利益につながらないような虚言行為を頻繁に繰り返す傾向がある」と、Voxの結論と共鳴する解説を行っている。

だがサイコロジー・トゥデーの記事には、トランプの心理の一端を説明できるかもしれない記述もある。同誌は心理学者のロバート・ライシュ博士の話として、「職を得るといった目的を達成するための虚言は理解しやすいが、『第1次疾病利得』のための虚言、つまり、直近の利益をもたらすことなく異なる自意識を作り出す虚言は、見抜くことがはるかに難しい」と説明。これには自尊心が関与しており、「今の自分に満足していなく、別人になりたいと思う」欲求が背景にあると解説している。

討論会でトランプは、ヒラリー・クリントンから自尊心を傷つけられるような発言を投げ掛けられるたびに、ことごとく食って掛かっていた。だが一方で、トランプは米大統領の職を欲しているようにも思える。

今回の討論会では、両候補のうち大統領職にふさわしくない人物は1人だけであることが裏付けられた。その人物とは、自身の気性や虚言癖を抑えられないことを繰り返し実証したトランプであり、彼の国家指導者としての資質には大きな疑問が投げかけられている。

Emily Willingham