米宇宙開発ベンチャー、スペースXのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は、人の火星への移住を支援するための野心的な計画を発表した。遠くない将来に、移住を実現させたい考えだという。

メキシコ西部グアダラハラで9月27日に行われた国際宇宙会議(IAC)でマスクは、この構想について明らかにすると共に、火星に到着する人たちを乗せた宇宙船を紹介する動画を公開した。しかし、マスクの説明には、命にかかわる重要な点に関する情報が含まれていなかった。

火星にいる間、人間は何を食べることになるのだろうか?

マット・デイモン主演の映画「オデッセイ」が公開された後、自然科学・テクノロジー関連の話題を中心に伝えるニュースサイト、ライブサイエンス(Live Science)は、火星で地球と同じように農作物を育てることの難しさについて報じた。映画の中でデイモンは、火星で自分自身の排泄物を使ってジャガイモを育てる宇宙飛行士を演じた。

この映画の中で明らかになるのは、たった一つのジャガイモを育てることさえ、火星では非常に難しいということだ。さらに難しいのは、人間に提供する十分な食料を育てるためには、火星をより地球に近い惑星に変えるための多大な努力(活動)が必要だということだ(どのような活動かは不明だが)。

ライブサイエンスはこの記事の中で、「火星をテラフォーミング(地球化)することが受け入れ可能だと人間が”民族として”判断したとしても、希薄な火星の大気が酸素を多く含む生命のゆりかごになるまでには何百年もの時間がかかるだろう」と指摘している。

まずは「着陸」が重要

最も重要なことは、まず火星に到着することだとマスクは主張する。食料、あるいは木星や土星に行く方法など、その他の問題の解決方法は、後から探せばいいとの考えだ。

IACでの講演でマスクは、火星への移住計画を米西海岸地域が踏み込むこともできないほどの荒野だった当時のカリフォルニア州への開拓と定住になぞらえた。「スペースXの目標は交通システムの構築」であり、それは、「ユニオン・パシフィック鉄道の建設のようなものだ」という。

だが、この例え話の問題点は、カリフォルニアは火星ではなく、私たちが必要とする食物を栽培するのに適した地球上にあるということだ。火星には液体水が存在するとみられる一方で、ろ過して取り除く必要がある過塩素酸塩やその他の不純物も存在する。大気が希薄だということだけでも、火星は農業の成功に適していないといえる。

「火星の人」は何を食べる?

今後10〜20年の間に火星への”定住”を実現しようと計画するのであれば、新たに生み出される「火星の人たち」は、何を食料にするのだろうか?恐らく当初は、ワイル・ラボラトリーズ(Wyle Laboratories)などをはじめ、宇宙食を生産する企業に数多くの事業を委託することになるのだろう。

同社は昨年、米テキサス州ヒューストンにある米航空宇宙局(NASA)のジョンソン宇宙センターが進める全ての有人宇宙飛行計画に、向こう5年間にわたって食料と医療サービスを提供することで契約を結んでいる。

火星の人たちが作物を育てるための巧みな方法を確立するまで、必要な食料を火星まで輸送することは技術的に可能なのだろうか?

この質問に対し、マスクは答えを明らかにしていない。ただ、楽観的ではあるようだ。講演会では、火星に「初のピザ店を作りたいという人はいるか?」と尋ねていた。

Katherine Gustafson