中国の国際化がまた一段と進んだ。国際通貨基金(IMF)は9月30日、中国の通貨、人民元を特別引き出し権(SDR)に加えると発表。翌10月1日から、人民元は正式にSDRの構成通貨の一つとなった。

これにより、新興国の中央銀行はいずれも人民元を、自国の外貨準備に取り入れる価値がある通貨とみなすようになるだろう。米ドルの国際貿易における支配的な地位や、世界の準備通貨としての地位が今すぐ人民元によって脅かされることはないとみられる。だが、人民元は今回の変更により、流動性の安全な避難場所の一つとなった。さらに、ユーロや円といったその他の避難場所とは異なり、人民元は実際に利益をもたらしている。

影響と今後に予想される状況

IMFは2015年11月30日、SDRの構成通貨に人民元を含めることを決定。「通貨バスケット」における構成比は10.9%としていた。バスケットに含まれるほぼ全ての通貨を保有している新興国の中央銀行が、即座に人民元を買い始めることはなさそうだが、自国の通貨がSDRに含まれる各国の人民元の需要には、間接的な影響が出てくるだろう。

現在、大半の国の中央銀行が最も多く保有しているのはドルで、次いでユーロの保有額が多い。個別の通貨として人民元は通常、それほど重視されていないが、香港上海銀行(HSBC)のエコノミスト、ポール・マッケルらがまとめ、9月13日に公表した報告書によると、IMFによる人民元の主要通貨への組み入れの決定は、同通貨の「長期的な需要の支持」を意味するものだ。

マッケルは、「人民元がSDRに加えられたことは中国側からみれば、自国の金融市場と世界市場との統合を推進するための改革の後押しになる。また同時に、人民元の国際化をさらに進めることになる」という。

中国人民銀行によると、今年3月から6月までの間だけでも、外国人投資家らによる人民元建て債券の保有高は、約1,000億元(約149億ドル、約1兆5,100億円)増えている。さらに、中央国債登記結算有限責任公司のデータによれば、外国人投資家らは8月に入り、中国債権を買い戻し始めている。

マッケルによれば、「現在の米ドル中心のシステムが直面する課題と問題点はすでによく知られている」「リスクのない資産、短期国債の発行数が構造的に不足している」ということだ。

ユーロ圏では債券の利回りがゼロを下回っており、円は下落傾向にある。そのためアジア各国の中央銀行は、これら以外の通貨の保有したがっている。準備通貨としての人民元によって中国が目指すのは、こうした各国の中央銀行に多様性を提供することだ。

貿易決済でも増す存在感

国際銀行間金融通信協会(SWIFT)によれば、貿易決済通貨としての人民元は向こう数年内に、英ポンドや円に代わる存在になると見込まれている。ドルを上回る存在になることはないだろうが、中国と貿易取引があるアジア各国は今後ますます、人民元建てでの取引を増やしていくだろう。

ドルが事実上の基軸通貨としての役割を果たす現在のシステムに課題がないわけではない。ユーロの誕生により、国際貿易の一部はユーロ決済が取って代わったものの、全体としては今も、取引の大半がドル決済となっている。

中国がブラジルから大豆を輸入する際、中国はその代金をドルで支払っている。サウジアラビアが輸出する石油の代金も、全ての国がドルで支払っている。だが、中国はこうした現状について、人民元が市場に新たな選択肢を提供すべきだと考えている。

そして、新興市場の一部は、今回のIMFの決定を歓迎している。中国には今後一層、一定の市場のルールに従って行動することが求められるためだ。

Kenneth Rapoza