「スタートアップのように考えろ」──ここ数年、米小売大手に向けられてきたメッセージだ。成熟企業、あるいはレガシー企業であるこれら各社は、時流に乗り遅れないための努力を続けてきた。小売業に関連のある会議ではほぼ必ず、考え方を変え、自由な発想を取り入れ、若い従業員たちに力を与えること、そして一部のルールを破ることの必要性が強調されてきた。

小売各社は、このメッセージを真剣に受け止めてきたようだ。多くはスタートアップ各社との協力関係を強化するため、イノベーションラボをテクノロジー産業の中心地近くに設立。ウォルマートやターゲット、メイシーズは、シリコンバレーの専門家たちと近い関係を築くために、サンフランシスコにオフィスを構えた。

その中でもターゲットは、一歩進んだ取り組みを実現している。マサチューセッツ工科大学、米ビジネスアクセラレーター「テックスターズ(TechStars)」との提携によって進めているプログラムは、スタートアップへの助言と投資を行い、最終的には新たなテクノロジー企業との提携の実現を目指している。

プログラムへの参加を希望した500以上のスタートアップから、ターゲットは11社を選出。9月下旬には各社によって、3か月にわたるプログラムを通じて開発を続けてきた成果が発表された。

その発表の会場で筆者が特に注目したのは、参加企業「ブループリント・レジストリー」の共同創設者であるリジー・エリンソンの言葉だった。彼女によると、これら11社の間にあったのは競争心というよりも、仲間意識だったという。

大手各社に見え始めた変化

協力し合うという考え方は、スタートアップの世界にも、小売大手各社の間にも、あまりみられないものだ。だが、小売各社が新たな考えを呼び込み、採用したいと本心から考えるのであれば、必要なものだ。

ターゲットはウェブサイトを開設し、自社の開発した技術をターゲットで試してほしいというスタートアップからの応募を受け付けている。それほどに、テックスターズと行ったプログラムは成功を収めたということだろう。

一方、家電量販店のベスト・バイも新たなプログラム「ベスト・バイ・イグナイト」を通じて、スタートアップを募集している(イグナイトは「火を着ける」の意味)。自社の製品やテクノロジーを売り込みたいスタートアップを募集するだけでなく、製品の製作と完成を支援。ベスト・バイの店内に特別コーナーを設け、完成した製品を販売できるようにする。

小売売業界のイベントでは、スタートアップがアイデアなどを売り込む機会を設けることが一般的になりつつある。9月末に米テキサス州ダラスで開催された「リテール・イノベーション・ラウンジ」では、参加したスタートアップ各社が自社製品を展示するだけでなく、イノベーターや小売業者などの企業に向けて、自社と製品についてステージ上で説明、宣伝する機会が提供された。

米国の小売大手は考え方にとどまらず、行動までスタートアップ企業のようになってきている。

Laura Heller