米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプは、「強さ」に取り付かれている。しかも大半の場合において、相手が誰であれ自分の方が優位であることを前提として、強さについて考えている。そしてトランプは隅から隅まであちこちを見回して、自分がまだ侮辱していない相手を探し回っているようだ。

トランプはバージニア州で10月3日、退役軍人の会合に出席。心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した帰還兵たちについて、「戦場で見たことに対応できない人たちも大勢いる」と述べ、彼らを「弱い」と考えていることを暗に示した。強くない人たち、少なくともトランプの世界では弱い人たちが、対応できずにPTSDを発症しているというのだ。

トランプの侮辱は「3タイプ」

トランプの人に対する侮辱の仕方には、「嫌悪感に基づくもの」「1930年代に子どもたちが遊び場でぶつけ合っていたののしり」「弱さに対する非難」という3つのカテゴリーがある。

トランプがこの3種類の中のいずれかにあたる侮辱の言葉を持ち出し、相手を攻撃するのは、自分が不利だと感じたときのようにみえる。例えば、女性たちやオバマ大統領夫妻、民主党の大統領候補ヒラリー・クリントンと夫のビル・クリントン、ジョン・マケイン上院議員(共和党)などがそうした相手だ。マケインについては、ベトナム戦争中に戦争捕虜になったことで「負け犬」呼ばわりしていた。

そして、新たにそうした相手に挙げられたのが、退役軍人たちだ。彼らと比べられると、見くびられていると感じるのだろう。「弱さへの非難」を持ち出した。

PTSD発症者は増加の一途

米国では毎年、イラク・アフガニスタン戦争と湾岸戦争、ベトナム戦争の帰還兵らのうちそれぞれ11〜20%、12%、15%にあたる人たちがPTSDを発症している。トランプはこの人たちを侮辱した。米国にはさらに、かつて第二次世界大戦と朝鮮戦争に従軍した後、「砲弾神経症(シェルショック)」と診断された人たちもいる。


退役軍人の自殺率は一般の国民の2倍に上り、非常に深刻な問題となっている。大半を退役軍人やその家族・友人が占めるPTSDを発症した人の数は非常に多く、米政府は専門の施設を開設している。だが、退役軍人省だけでは、支援を必要とする帰還兵たちに対応しきれていない状況だ。

こうした中で、何らかの形でこの状況にかかわっている人たちが最も望まないことは、自分自身の本能的な衝動の源に勝つどころか、それと戦うことさえできないような人物からの侮辱と、その人から汚名を着せられることだ。

トランプは従軍せず

戦うということに関するトランプの経験は、ベトナム戦争中に5回、徴兵を免除されたことだけだ。一度はかかとの骨に「骨棘(こつきょく)」という突起ができたことを理由に徴兵を猶予されたが、いくつかのスポーツを楽しむには問題がない程度の症状だったようだ。結局のところ、退役軍人に対する批判は、そのような人物の口から発せられたものなのだ。

当然ながら、本当の弱虫はトランプだ。口を閉じていることができないほど弱く、自分が間違っているかもしれない、うそをついたかもしれないということがそれとなく示されただけで、不作法な振る舞いをし、自己防衛過剰になるほど弱虫だ。さらに、自分自身の「内なる子ども」を制御することも、他人のちょっとした冷たい態度を感じ取っただけで毎回かんしゃく起こし、暴言を吐くのを抑制することもできないほど弱い。

トランプは、超大国を率いるのに必要な精神的、知的な規律を身に付けることができなかったほどの弱虫だ。

Emily Willingham