ウォルト・ディズニーが米動画配信大手ネットフリックスを買収するとのうわさが流れている。だが、ディズニーはこの考えを諦めるべきだ。両社の組み合わせは、成功する企業買収の「要件」を満たしていないからだ。

ディズニーによる買収の観測が出始めてからは4%上昇したものの、ネットフリックスを取り巻く状況はこのところ、それほど思わしくない。株価は年初来、12%下落している。

筆者が考える企業買収の成功のための4つの要件に照らして、両社の相性が良くないと考える理由を説明する。

1. オンライン動画配信サービスは魅力的ではない

オンライン動画配信サービスは、急成長を続ける大きな市場だ。PwCによると、米国市場は2011年の24億ドル(約2,490円)規模から年率17.6%の成長を続け、2020年には103億6,000万ドル規模に拡大すると見込まれている。

ただし、問題はネットフリックスが世界各国でコンテンツの購入や製作、ライセンス契約に膨大な金額を支出しており、利益率がわずか1.9%と非常に低くなっていることだ。実際に同社の今年第2四半期のキャッシュフローは、マイナス2億2,900万ドルに拡大している。

激しい競争と新たなコンテンツを求める高い圧力を考えると、事業継続のコストは高水準にとどまる可能性が高い。一方で、市場シェアの拡大を狙う競合他社の存在は、各種料金の引き上げを難しくするだろう。

2. ディズニーとネットフリックスは相性が悪い

昨年通期の売上高がおよそ70億ドル(約7,264億円)だったネットフリックスを買収すれば、ディズニーの同期の売上高520億ドルは、さらにいくらか引き上げられるだろう。だが、ネットフリックスのこれまでの成功は大きく、オリジナル・コンテンツを製作する能力とそれらの人気によるものだ。そして、その一部は清廉潔白なディズニーのイメージに適したものではない。

また、ディズニー作品が現在よりも好条件で視聴できるようになることで、ネットフリックスの新規加入者が大幅に増加するとも考えづらい。

さらに、ネットフリックスの北米での動画ストリーミングのトラフィック占有率は依然として優勢を維持しているものの、2015年末時点の37.1%から、今年6月末には35.2%に低下している。

確かに、動画ストリーミング市場でのシェアが小さいディズニーは、ネットフリックスのプラットフォームへのアクセスが可能になることで利益を得られるだろう。だが、支配権を得れば、ディズニーはより多くの自社コンテンツをネットフリックスの加入者らに押し付けようとする可能性がある。そうなれば、ネットフリックスでは利用者離れが進むことになるかもしれない。

3. ディズニーにとっては割に合わない

ネットフリックスのキャッシュフローがマイナスであることを考えると、ディズニーが買収後に同社の正味現在価値(NPV)を引き上げるのは難しいと思われる。例えばコントロールプレミアムを25%として買収することになれば、ディズニーが支払う金額は570億ドル(5兆9,230億円)になり、その額はディズニーの時価総額の3分の1を超える金額に相当する。

4. 人材流出につながり、両社とも価値が損なわれる

両社は共に、非常にしっかりとした企業文化を持っている。だが、それらは大きく異なっている。ネットフリックスのリード・ヘイスティングス最高経営責任者(CEO)は、ディズニー傘下に入れは役職を離れるだろう。そして、ディズニーはネットフリックスに自社の文化を持ち込もうとするだろう。

有能な人材が大量に流出したとしても、ネットフリックスは現在の価値を維持できるのかどうか──それは疑問だ。

Peter Cohan