市場に投入されたばかりのテクノロジーが期待外れなことは珍しくない。90年代に登場したPDAや初期のラップトップPCが良い例で、デザインも性能も今ひとつだったが価格は高かった。

バーチャルリアリティ(VR)機器が、今まさに同じような状況にある。多くのメーカーがVRヘッドセットを開発しているが、解像度をはじめ、技術の完成度はまだ不十分だ。ハイスペックな機種は高額で、使用するには高性能PCに接続したり、広いスペースが必要だったりするなど、普及する上でのハードルは高い。

セットアップは10分で完了

数あるVRヘッドセットの中で、最も普及しそうなのはソニーのプレイステーションVR(PS VR)だろう。価格は約400ドル(日本では単品版が44,980円)で「オキュラスリフト」や「HTC Vive」に比べて格段に安く、サムスンの「Gear VR」よりもパワフルだ。PS VRは高性能PCに接続する必要はなく、プレイステーション4とプレイステーションカメラがあれば遊ぶことができる。セットアップも10分程度で完了する。それほど広いスペースがなくてもプレイできる点も大きなメリットだ。

PS VRはゴーグル部分とヘッドバンドと2段階で調節をすることができ、サムスンのGear VRやオキュラスリフト、HTC Viveよりも高い装着感が得られる。特にメガネを着用する人には最適だ。

もう一つPS VRが他のヘッドセットと異なる点は、起動したときの画面が通常のPS4のスタート画面と同じく平面で、ゲームを開始するとVRモードになることだ。操作にはPS4専用コントローラーか、別売のプレイステーションMoveモーションコントローラーを使用する。通常はPS4専用コントローラーで十分だ。

プレイしてみた実感は?

PS VRのアジア地域での発売日は10月13日で、ローンチ時には25以上のゲームタイトルが用意されている。この中から筆者は「バットマン:アーカム VR(Batman Arkham VR)」と「バトルゾーン(Battlezone)」をプレイしてみた。アーカム VRはアクションものが多かったこれまでの「ダークナイト」をモチーフにしたゲームとは一線を画し、犯罪捜査を行うパズルゲームのような内容になっている。

一方、バトルゾーンは他のVRヘッドセットでも提供されている戦車ゲームとあまり変わらないが、初めて遊ぶ人は戦車に乗って戦場を疾走し、戦闘機を打ち落とすリアルな感覚が楽しめる。しばらくすると目が疲れたり、めまいがするかもしれないが、これはPS VRに限った問題ではなく、筆者がGear VRを試した時も同じ症状が出た。


解像度はやや物足りない

PS VRの解像度は1080pと、スマートフォンやテレビには十分なスペックだが、VRでリアルな没入体験を得るには全く物足りない。Gear VRはクアッドHDディスプレイを搭載しているが、画素が荒く画像がぼやけて見えることがある。オキュラスリフトとHTC Viveの解像度は2160×1200だが、それでもVRには不十分だろう。筆者が冒頭に述べた通り、まだテクノロジーが完成していないのだ。

解像度の問題を除けば、PS VRは画像が綺麗でトラッキングもスムーズだ。PS VRはヘッドセットに9つのLEDを搭載してプレーヤーの位置を検知し、表示の遅延を18ms(0.018秒)に抑えている。また、リフレッシュレートも120Hzと高い。PS VRはオーディオ技術も優れている。3Dオーディオ技術を搭載し、イヤホン性能も非常に高い。「バットマン:アーカム VR」をプレイしていると、他のキャラクターが後ろから近づいてくる場合と、前や横から来る場合とで音の違いをはっきりと聞き分けることができる。

しかし、結局のところVRにおいて一番重要なのはソフトウェアの質だ。その点「バットマン:アーカム VR」は楽しいが、短いのが難点だ。他にも多くのゲームが開発中で、レーシングゲーム好きにとっては「Drive Club VR」のリリースが待ち遠しいところだろう。「London Heist」はプレイステーションMoveコントローラーが必要となるが、これも非常に楽しみなタイトルだ。

ソニーは2015年にサメに襲われるリアルなデモ動画を公開したが、技術が整えばこのような息をのむようなVR体験を楽しむことができる。今はまだ発展段階にあるテクノロジーだが、いずれはその域に達するだろう。90年代にアップルが開発した世界初のタッチパネル式PDA「ニュートン」を使っていたユーザーが、iPhoneやギャラクシーを手にして技術の進化に隔世の感を覚えるのと同様に、VRもこれから飛躍的な進化を遂げることになる。

Ben Sin