アトキンスダイエットやパレオ・ダイエットなど、タンパク質の摂取量を増やした食事による減量・体重維持の効果について、さまざまな議論が繰り広げられている。

高タンパク質の食事は、短期的にはかなりの減量効果があるようだ。だが、代謝系に対してどのような効果があるかという点については、いまだ疑いの目が向けられている。米科学誌「セル・リポーツ(Cell Reports)」に先ごろ発表された研究結果によると、高タンパク質の食餌療法によって減量した女性たちにみられた代謝系における変化の一つは、必ずしも研究者らが予期したものではなかったという。

女性たちの体重は確かに減少した。しかし、通常は体重の減少に伴って高まるインスリン感受性に、変化がみられなかったのだ。ミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学医学部の研究チームは、50〜65歳までのBMI30以上(肥満に該当)の女性たち34人を対象に、6か月間にわたる調査を実施。1日3食とも、低カロリーのメニューを取ってもらい、体重と代謝マーカーの数値の変化を追跡した。

高タンパク質の食事を取るグループには、3食のメニューの他に乳清タンパク分離物も提供し、1日のタンパク質摂取量が体重1 kg当たり1.2 gになるようにした。一方、通常の低カロリーメニューを取るグループには、食事の他には糖質と脂質の少ないスナックを提供。タンパク質の摂取量は、推奨されている体重1 kg当たり0.8gを維持するようにした。

調査期間の終了後、どちらのグループにも約10%の体重減少がみられた。さらに、タンパク質の摂取量を増やしていないグループに限って、インスリン感受性が25〜30%高まったことが確認された。

研究結果をまとめた論文の主著者は、「これは重要な意味を持つ結果だ。多くの肥満や過体重の人たちの多くは、インスリンが効果的に血糖値をコントロールできないことが原因で、2型糖尿病を発症するからだ」と指摘した。これらの関連性については、まだ根本的な部分は完全には明らかにされていない。

さらに、「われわれのデータによれば、酸化ストレスが関連している可能性が考えらえる。ただし、まだメカニズムを完全に解明するまでには至っていない」と説明した。

高タンパク質の食事が健康に良いものではないとする研究結果が示されたのは、今回が初めてではない。南カリフォルニア大学のチームが行い、数年前に結果が公表された研究では、糖尿病とがん発症リスクの上昇、死亡率の上昇が指摘されている。

ただ、この研究結果は同時に、摂取するタンパク質が肉と乳製品に偏った場合にのみ、こうした危険性が高まるとみられることも分かっている。植物性タンパク質の場合には、多く摂取してもそうした結果は得られなかった。摂取するタンパク質の種類が糖尿病のリスクに影響を及ぼしているのかどうか、興味深い点だ。

研究を主導した同大学の研究者は、「高タンパク質の食事とインスリン抵抗性の関連性を臨床的に確認することができたという点で、素晴らしい予備的研究になったといえる」と述べている。

また、「過去の疫学研究により、タンパク質の摂取量が増えることで糖尿病の発症率が上昇するとの結果が示されている」ことに加え、「マウスとヒトを使ったそれぞれの遺伝学研究からは、タンパク質を活性化させる成長ホルモン受容体の欠損が、肥満の場合でも糖尿病の発症を抑えているとみられることが分かった」という。

今後のさらなる研究が、タンパク質とその種類が私たちの健康にどのような影響を及ぼすのかを明らかにしてくれるだろう。現時点での最善のアドバイスは、「推奨される量以上のタンパク質は摂取しないこと」に尽きると言えそうだ。さらに、これまでの研究結果からみれば、摂取するのは植物性タンパク質にしておくべきだと言えるのかもしれない。

Alice G. Walton