音楽認識アプリ「Shazam」は9月後半に10億DLを達成し、史上最も人気の高いアプリの一つとなった。周囲で流れている音楽をスマホのマイクで認識すると、たちまちその曲名を教えてくれるShazam は10年近い歴史を持ち、競合ひしめく音楽アプリの中で抜きん出た存在感を誇ってきた。

Shazam同社は長年目指してきた事業の黒字化も達成し、経営陣はさらなる成長に向けて士気を高めている。フォーブスはShazamのリッチ・ライリーCEOにインタビューを行い、同社が黒字に転じた背景や今後の取組について話を聞いた。

──10億DL達成おめでとうございます。今はどのような気分ですか。

リッチ・ライリー(以下、ライリー):非上場企業でこれほどの実績を達成できた唯一の会社であることをとても誇りに思います。我々のアプリは、iPhoneが初めて発売された頃から現在に至るまで高い人気を維持しきました。これは栄枯盛衰の激しいアプリ業界にあって特筆すべき点だと考えています。今後もユーザー数をさらに増やしていきたいと思います。

──人々はどうしてShazamのアプリを使い続けるのだと思いますか。

ライリー:我々は他のアプリのように広告にコストを掛けず、ほぼ全てのユーザーを口コミ経由で獲得しています。一度ダウンロードしたユーザーが我々のアプリを気に入ってくれたからこそ、使い続けてくれるのです。

スマホユーザーが1ヶ月に利用するアプリの数は20個にも満たないのが実情です。ユーザーはアプリ疲れをしており、端末上にダウンロードしてもらうことは至難の業です。使い続けてもらうためには本当に優れた機能を提供することが重要で、我々は「魔法」を提供することを目標にしています。ユーザーがShazamアプリを本当に魔法のようだと思ってくれていることを幸運に思いますし、今後もよりスピーディーで豊かなユーザー体験を提供できるよう努力を続けていきたいと思っています。

──Shazamのサービスは音楽認識からスタートしましたが、今では画像やQRコードの認識まで拡大し、様々なものが「Shazamable(Shazamすることができる)」となっています。新規サービスを開始するときはどのように決めているのですか。

ライリー:我々にとっては音楽認識が最も重要なサービスであり、スピードや精度の向上をはじめ、騒音の中での認識性能など、常に機能改善に取り組んでいます。これまでの取組みを通じて、ブランドのように多くのコンテンツを保有しているパートナーと組み、ユーザーがそれらのコンテンツや商品をShazamを使って認識すると、何かしらのメリットが得られるといった取組みがとても有効であることがわかりました。

例えば、昨季のカレッジフットボールではコカ・コーラと組んで「コカ・コーラ ゼロ」のキャンペーンを実施しました。我々はスポットCMをShazamで認識するとコカ・コーラ ゼロの無料クーポンがもらえるという仕掛けを行いました。このキャンペーンは大成功を収めました。現在はオーストラリアのキットカットや、アンハイザー・ブッシュ等のブランドと類似したキャンペーンを実施し、ユーザーに新たな価値を提供しています。

──事業が黒字に転じましたね。

ライリー:長年会社を経営してきましたが、初めてのことです。これまで我々は、レイトステージのスタートアップと同じように将来収益を生むビジネス機会に先行投資を行ってきました。このため、利益を出すことができていませんでした。

ここ数年は、MP3のダウンロードから広告へ収益源を転換し、売上高が大きく増えたことで利益も拡大しました。それと同時に、コスト管理も徹底しました。我々はShazamの成長性に自信を持っています。今のように資金調達の環境が悪い中で投資家に出資をしてもらっても、不利な条件を飲まされてしまいます。我々は、自分たちの社運は自分たちで決められるよう、外部資本には頼らずに事業から利益を生み出せる体制作りに励んできました。このことが成果につながり、大きな達成感を得ることができました。

──企業の広告キャンペーンに活用できる新サービス「Shazam For Brands」は会社の成長にどのように貢献しましたか。

ライリー:今ではShazam For Brandsが我々の成長を牽引していると言っても過言ではありません。世界中のブランドと提携し、モバイル向けディスプレイ広告から印刷物、テレビ、ラジオ、小売店、包装された商品まで、あらゆるものを対象に広告キャンペーンを行っています。ブランド各社は大きな成果をあげており、リピート率はとても高くなっています。全事業の中で最も成長スピードが速く、我々が一番注力しているサービスです。

──20億DLを目指す上での取り組みを教えて下さい。

ライリー:これまで通りオーガーニックな成長を追求しながら、新たに2つのことにチャレンジする予定です。まずは新興市場への進出です。これまでに達成した10億DLの大半は、西ヨーロッパや北アメリカなど、先進国での実績です。新興市場は携帯電話の性能やネットワーク環境が大きく異なり、Shazamのアプリはほとんどダウンロードされていません。ここに大きな可能性があると考えています。

もう1つは、他のアプリとの機能連携です。メッセージングアプリやソーシャルアプリ、動画アプリなどを使いながら、同じアプリの中でShazamの機能を使うことができるようにしたいと考えています。今後数か月でいくつかの提携を実現できる予定です。

──アメリカ市場での新しい計画はありますか。

ライリー:ユーザーがShazamを数回使用すると、我々はそのユーザーが好きな音楽を理解することができます。データ分析に基づいたユーザー体験をより豊かにするサービスの数々を今後1、2か月で提供していきます。

もう1つは、大物プロデューサーのマーク・バーネットと組んだFOXテレビの番組、「Beat Shazam」の放映です。この番組がアメリカで人気が出て、Shazamの認知度をさらに高めてくれることを期待しています。

Hugh McIntyre