2017年1月11日になってようやく、トランプ次期大統領が選後初めとなる記者会見を開いた。

歴代大統領が選挙後に初の記者会見を開催するまでの日数は下記の通りとなる。

2012年: バラク・オバマ 11月14日: 選挙8日後
2008年: バラク・オバマ 11月7日:選挙3日後
2004年: ジョージ・W・ブッシュ 11月4日:選挙2日後
2000年: ジョージ・W・ブッシュ 12月15日:連邦最高裁の判決の3日後
(この判決で次期大統領が決定)
1996年: ビル・クリントン 11月 8日:選挙3日後
1992年: ビル・クリントン 11月12日:選挙9日後
1988年: ジョージ・H・W・ブッシュ 11月 9日:選挙1日後
1984年: ロナルド・レーガン 11月7日:選挙1日後
1980年: ロナルド・レーガン 11月6日:選挙2日後
1976年: ジミー・カーター 11月4日:選挙2日後

実際の大統領選後ではなく、連邦最高裁判所の判決を待って決定とされた2000年のブッシュ大統領の日数の数え方は微妙なところだが、判決後の3日として、過去10回の選挙戦、つまり1970年代まで遡ると、歴代大統領の初記者会見は平均3.4日後となる。昨年11月8日から数えて64日後に開催したトランプ氏は異例だ。

余談ではあるが、ジミー・カーター選出の大統領選挙の時には米国におり、通っていた小学校ではその日1日通常授業はせずに、大統領選の投票の推移を見守りつつ(当時、テレビが教室に設置されていたわけではないので、担任が職員室から最新の開票情報を聞いてはクラスに伝えるという方法を採用)、クラス全員で終日候補者の人となりや政策について終日話し合いをした。

いずれの候補者か自分の気持ちが固まり次第、クラスの中で投票もした。40年前の話ではあるが、選挙リテラシーや議論の仕方のようなものを自然な形で学ぶ授業は初めての経験だっただけに面食らった記憶がある。最初は何の話をしているのかすら定かではなかったのだが、その日の最後にはクラス内の投票に自発的に参加したのだから、授業の成果と言えよう。

公人の記者会見は、それに臨む人自身がコントロールがしづらい環境で質問に答えなければならないため、より国民に対しての説明責任が求められるところにその必要性がある。

当初トランプ氏は記者会見を12月15日とし、実業家が大統領に就任することで懸念される”利益相反”の問題を説明する意向を示していたのだが、直前になってキャンセルをした。そして、その「利益相反」の説明をするかについては定かでないまま、ツイッターという一方的な発信で会見延期を発表した経緯も異例だ。

記者会見の場では、ビジネスは2人の息子に全て引き継ぐとしただけで、もっとも手っ取り早く、かつ確実に”利益相反”を示せる「自身の保有株全てを第三者へ売却する」などの実質的な解決方法については触れないままとなった。

全体的には、会見直前にリーク情報としてメディアに流れた選挙期間中の「不名誉な情報」に終始し、そちらの話題で大荒れとなった。それでも質問が”利益相反”に及ぶと米国の貿易赤字を取り上げ、批判の矛先を国外に向けるよう何とかして焦点をずらそうとする意図も見受けられた。内政が行き詰った時は外政へとすり替えるのは為政者の常套手段でもあり、ある意味わかりやすい。

「不名誉な情報」のリーク元とされたCNNの記者に対してケンカ腰であったことが会見のハイライトとして伝わってくるが、トランプ氏にとっては、聴衆や国民の本来の関心を煙にまき、核心に触れずに済んだということで、実は渡りに舟となった部分もあったといえよう。

今後そうした誤魔化しが聞くかどうかは別としても、記者会見の延期と実際の会見を通じて”利益相反”の説明責任が問われない状況に自ら仕向けたとも言える。

往々にしてトランプ氏のツイートは「幼稚」で「行き当りばったり」で「感情的」と切り捨てられるが、実は綿密な計算の上での用意周到な発信や発言なのではなかろうかと感じさせる初会見でもあった。それだけに厄介であるのも間違いない。

記者会見の本来の目的であるはずの”利益相反”をいかに追求するのか、米メディアの真骨頂を期待したい。

岩本 沙弓